東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

国際共同研究支援プログラム 報告

平本 薫(新領域創成研究部 助教)

派遣先/インペリアルカレッジロンドン/イギリス

期間/2022.9.12–10.7

若手研究者国際共同研究支援プログラムのご支援をいただき、インペリアルカレッジロンドン(英国)のJoshua B Edel教授の研究室を訪問しました。私はこれまで微小電極を利用して生体関連物質を測定する電気化学センサに関する研究を行ってきましたが、Edel labはナノサイズの孔(ナノポア)をもつ電極を用いて通過分子を計測・解析する“ナノポアシーケンシング”の研究に長けている研究室です。電極の作製方法や測定装置は非常に似ていますが、生体分子に関して得られる情報は全く異なります。ぜひその技術を身に着け、自分の研究との融合を図りたいとの思いからEdel教授に訪問を打診したところ、快く受け入れてくださいました。これまでに共同研究等の実績のないラボ訪問についても、ご助成くださった本研究支援プログラムに大変感謝いたします。
 
イギリスは、オックスフォード・ナノポア社に代表されるナノポアを利用したDNA・RNAの直接解読に関連する研究が盛んですが、Edel教授もこの分野の牽引役の一人です。ナノポア計測の際の解像度・感度・選択性を上げるような独自のポア形成・修飾技術を有しており、今回その技術的手法および装置構成を学び、日本でも測定環境を整えられるよう準備を行いました。ラボの研究者と実際に測定を行いながら課題を共有し、私のバックグラウンドである電気化学計測手法を取り入れて新しいポアのゲーティング機構ができそうだという足がかりのデータが得られたため、これを基に共同研究を行う方向で話を進めることができました。他に、Edel研究室は医学系研究室との連携が強く、訪問時にはCOVID19やサル痘の患者検体の提供を受けて、ナノポアを用いたスクリーニング技術の開発も行っていました。シーズ技術をタイムリーに社会実装に結びつけるための、研究や意思決定のスピード感と体制を肌で感じることができました。
 
研究の話からはずれますが、私がイギリスを訪問した期間に、歴代最長の在位70年の節目を迎えたエリザベス女王が崩御し、壮大な葬儀が執り行われました。大きな混乱やトラブルには巻き込まれなかったものの、街は人で溢れかえっており、悲しみなのか、一種の興奮なのか、国家全体が特殊な雰囲気に包まれていることを感じました。その一方で、イギリスは移民国家であり、ラボメンバーも非常に国際性豊か(インド・中国・チェコ・イタリア・ベラルーシなど)。個々人と話をすると、女王の葬儀に関しても、今後のイギリスの政治・経済動向に関しても様々な意見を聞くことができました。この時期に居合わせたのは偶然ではありますが、貴重な体験となりました。
 
本支援のおかげで今回新たな共同研究の契機が得られました。心から感謝申し上げるとともに、今後より一層研究に精進していきたいと思います。
 
 
 
Molecular Sciences Research Hub. 研究室は2年前にできた新キャンパスに位置。
 
 
 化学系のラボが集う建物内は1~5階までガラス張り。
 
 
 実験終わりのキャンパス前で。
  •  
PAGE TOP