東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

国際共同研究支援プログラム 報告

川⾯ 洋平(新領域創成研究部 助教)

派遣先/ University of Oxford, UK

期間/ 2023.8.2-8.21

この度、若手研究者国際共同研究支援プログラムのご支援を賜り、オックスフォード大学に2週間ほど滞在し、Rudolf Peierls Centre for Theoretical Physicsのプラズマ物理グループと共同研究を行ってきました。私はプラズマ物理の理論研究を専門としており、今回は降着円盤や太陽風のプラズマ乱流に関してAlexander Schekochihin教授をはじめ、ポスドクや大学院生と議論を行いました。具体的には、太陽風で近年注目されるようになった「Helicity Barrier」という現象が人工衛星の観測結果を説明する鍵となっていますが、このHelicity Barrierの理論やシミュレーションは、プラズマの内部エネルギーが磁場のエネルギーに比べて小さい場合に限られていました。そこでAlexander Schekochihin教授と磁場エネルギーとプラズマの内部エネルギーが同程度の場合に関して検討をし、そのような状況では別の興味深い現象が起こりそうだということを掴みました。現在、帰国後に理論計算を進めているところです。
 
Rudolf Peierls Centre for Theoretical Physicsの建物には、いたるところにコモンスペースがあります。私は滞在中デスクを割り当ててもらいましたが、基本的にそのデスクは使わず、コモンスペースで研究を進めていました。そうすると、次々にポスドクや大学院生が来て様々な議論を行いました。中には私の専門とはかなり遠い研究をしている人もいましたが、とても面白い学際的な議論が出来ました。また、オックスフォード大学のプラズマグループは、週に1回セミナーを行っていますが、毎回議論が白熱します。私が以前発表をしたときは、質疑応答を含め4時間超えでした。今回も2週に渡ってセミナーに参加しましたが、やはり毎回数時間に及ぶ白熱した議論になりました。
 
話はそれますが、いつも私が海外の大学に行くと、自分の力不足を感じるのがランチタイムです。ランチタイムは様々な時事問題の話になりますが、若い学生も非常に深い知識を持って会話に参加してきます。今回は、ちょうど海外でOppenheimerの映画が公開された時期で、その内容についての話で盛り上がりました。そのときは日本ではまだOppenheimerは公開されていなかったので私が内容を知らないのは当然ですが、オックスフォードの皆さんは終戦時の日本の状況をとても詳しく知っていて、一方私は日本史には疎く、話についていくことが出来ませんでした。日本人でありながら恥ずかしい限りです。この他にも、AdmissionにおけるAffirmative actionの是非などが話題になりました。自分の専門以外も広く知識を持っているのは見習わなくては、と反省しました。
 
最後になりますが、本プログラムの支援により実現できたこの共同研究で、新しい理論を構築する可能性を掴むことができました。心より感謝申し上げます。
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