東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

海外研究集会等発表支援 報告

齋藤 望(新領域創成研究部 助教)

2015環太平洋国際化学会議(PACIFICHEM 2015)
開催地/アメリカ・ハワイ

期間/2015.12.15-21

この度、学際科学フロンティア研究所の海外共同研究および発表支援プログラムに採択して頂き、アメリカ合衆国ホノルルにて2015年12月15日~20日に開催された国際会議“The International Chemical Congress of Pacific Basin Societies 2015”に参加し、最近の研究成果について発表しました。当該会議は5年に一度開催され、アジア・北アメリカ・オセアニアなど環太平洋地域をはじめ世界各国から参加者が集まる活発な会議であり、今年は1万8千人近い参加者が集まりました。有機化学・無機化学・高分子化学・物理化学・生化学・材料科学・分析化学など11に分類された領域から構成され、各領域において様々なセッションが展開されました。

今回私は、有機化学に分類される“Supramolecular Chemistry at the Interface of Materials, Biology, and Medicine”というセッションにおいて、“Synthesis, liquid crystal formation, and double helix-random coil transition in bulk of ethynylhelicene oligomers possessing dendric mesogenic moieties” という題目でポスター発表を行いました。二重ラセン‐ランダムコイル間で構造変化する分子を用いて筋肉のような運動機能性物質を開発する研究に取り組んでおり、この重要な土台となる結果についてまとめたものです。二重ラセン‐ランダムコイル構造変化に伴う分子レベルの長さ変化を目に見えるレベルの運動に結び付けることを目的としており、このためには、分子が異方的に、すなわち同一方向を向いて並んだ筋肉のようなシステムを構築して変化を増幅する必要があると考えました。このようなシステムを、生体のように中程度の均一な分子量をもつ分子の自己組織化を利用して構築するという点で、極めて挑戦的な課題です。そのために、液晶性を利用することを考案し、棒状液晶構造を末端に有する二重ラセン分子を合成しました。この分子について、有機溶媒中において二重ラセンを形成すること、液晶状態を発現すること、および液晶状態において二重ラセン-ランダムコイル構造変化が起こることなどの知見を現在までに得ており、これらの結果について発表しました。

本研究では、マクロな運動を実現するために様々な技術や画期的な発想を必要とするため,有機化学だけではなく他分野の研究者との交流や意見交換が極めて重要になります。そこで今回,有機合成化学だけでなく超分子化学・材料科学・生化学など様々な領域の研究者が集まるセッションで発表することを選択し、各国の研究者と積極的に議論を交わしました。また、ポスター会場においても、高分子や無機化学などを含む様々な領域の研究に関して情報収集および議論を行い、多様な視点を持つ研究者と交流しました.大変有意義な時間を過ごし、今後の研究にとって役立つ貴重な経験となりました。

最後になりますが、このような素晴らしい機会を与えて下さいました、海外共同研究および発表支援プログラムに心より感謝申し上げます。

  • 左:ポスター発表の様子。

  • 右:講演会場のひとつであるHilton Hawaiian Villageにて。

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