東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

海外研究集会等発表支援 報告

野田 博文(新領域創成研究部 助教)

The X-ray Universe 2017
派遣先/イタリア・ローマ

期間/2017.6.4-6.11

私は、学際科学フロンティア研究所の若手研究者海外研究集会等発表支援プログラムに採択され、2017年6月5日から6月9日にかけて、イタリア・ローマにて行われた国際研究会「The X-ray Universe 2017」に参加してきました。The X-ray Universe は3年に一度、世界中からX線天文学の研究者が集まり、人工衛星を使ったブラックホール、超新星残骸、銀河団などの高エネルギー天体の研究成果について発表する国際研究会です。私は、2016年2月に日本が打ち上げたX線天文衛星「ひとみ」搭載のX線マイクロカロリメータを用いて、活動銀河核からのX線の精密分光に世界で初めて成功した結果について口頭発表してきました。活動銀河核は、巨大ブラックホールに吸い込まれる物質が強い放射を生み出すことで、銀河中の星の総和を凌駕するほど銀河の中心部が明るく輝く現象です。強いX線も放射され、そのX線が巨大ブラックホールの周辺の物質を照射すると、それらの物質の構造や状態を反映した広がりや強度を持つ鉄のKα蛍光輝線が生じます。「ひとみ」の高いX線分光性能のおかげで、この鉄Kα蛍光輝線の広がりと強度をこれまでに無い精度で定量化でき、巨大ブラックホールの周囲の物質の構造が詳細に明らかになりました。今回の発表では、日本のプロジェクトである「ひとみ」の成果を世界中の研究者に伝えることができたとともに、ブラックホール研究におけるX線精密分光の重要性を共有することができました。今後、日本やヨーロッパで予定されているX線マイクロカロリメータを搭載する次世代X線衛星XARMやAthenaの開発を進めていく上で、重要なステップになったと感じています。さらに、世界の著名な研究者との議論を通じて国際的な繋がりも深められたとともに、様々な天文現象の最先端の研究に肌で触れられたことで私自身の知見も大きく広がりました。このような貴重な経験をさせていただいた若手研究者海外研究集会等発表支援プログラムに心より感謝申し上げます。

The X-ray Universe 2017の集合写真。ローマ・ラ・サピエンツァ大学の講堂前にて。

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