東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

海外研究集会等発表支援 報告

成子 篤(新領域創成研究部 助教)

COSMO 17
派遣先/フランス・パリ

期間/2017.8.27-9.8

若手研究者海外研究集会等発表支援プログラムの支援を受け、2017年8月28日から9月1日にかけて、フランスのパリ第7大学において開催された国際研究会 "COSMO 17" に参加し、申請者の研究成果について口頭発表を行った。

本研究会は、宇宙論、そしてそれに関連した素粒子物理学における世界最大級の研究会の一つであり、世界25カ国以上から200名以上の研究者が一堂に会し、最先端の成果を発表する場である。申請者は本研究会において、アインシュタインの重力理論を超える、拡張型重力理論に関する研究成果の発表を行った。本研究は、2011年にノーベル物理学賞が与えられた暗黒エネルギーに関するものであり、暗黒エネルギーとは現在の宇宙の組成の約68 % (実は、我々や天体などを構成するすべての元素・バリオンをかき集めても、宇宙のほんの4%ほどにしか過ぎない) を占める正体不明の”もの”である。この謎のエネルギーに駆動され、現在の宇宙は加速度的に膨張していることが観測的に明らかになっているが、その正体は現代物理学の最大の謎の一つと考えられている。

発表では、暗黒エネルギーの正体は、我々が知らない未知の”物質”ではなく、アインシュタインの一般相対性理論の破れ、つまり重力の法則がとても大きなスケールで変更されている影響であるとする立場に立ち、新しい拡張型重力理論の提案を行った。発表中はもちろん、発表後にも様々な研究者から質問を受け、本研究の成果を広く世界の研究コミュニティへと周知させることができた (講演題目 " Extended Vector-Tensor theories")。通常、拡張型重力理論の研究においては、その取り扱いが容易であることから、スカラー場が導入されることがほとんどである。しかしながら高エネルギー物理は、スカラー場はもちろん、ベクトル場など多様な場の存在を予言する。そこで申請者は、特にベクトル場に着目し、近年スカラー場の理論で頻繁に議論されている「縮退理論」という概念が、ベクトル場の理論に対しても実際に応用可能であることを世界で初めて示した。この重要でユニークな結果は、本研究会においても大きな関心を集めた。なお今回の発表内容については、既に論文として出版されている (Naruko et al. 2017, JCAP 1701)。

また、自身の研究内容やそれに関連した議論はもちろん、様々な研究者の講演発表を聞き活発に議論を行うことができ、自身の専門分野を超えて多様な知識を吸収し、新たに研究者の輪を広げることにも成功した。特に、申請者は学生時代に海外の大学に短期滞在した経験を持つが、同時期にその大学に在籍していた研究者と偶然再会し、今度セミナー講師として招いてくれるという約束も取り付けることもできた。宇宙論という広いくくりのもと、様々な分野、理論家から観測家に至るまで様々な研究者が集まる本研究会に参加したことで、自身の研究分野とそれを取り囲む幅広い研究分野とのつながりを再認識し、自らの科学的な知見を広げることができた。

最後に、このような貴重な機会を与えて下さった若手研究者海外研究集会等発表支援プログラムに、心から感謝いたします。ありがとうございました。

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