受賞
2024.06.20
新領域創成研究部奥村研究室の倉持円来氏(学際高等研究教育院生、大学院生命科学研究科博士後期課程)が、第24回日本蛋白質科学会年会においてポスター賞を受賞しました。
受賞
研究分野 | 物性物理、スピントロニクス |
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主な研究テーマ |
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所属学会 | 日本物理学会、American Physical Society |
研究概要 | |
1831年、イギリスの物理学者ファラデーは、コイルの近くで棒磁石を動かすと、コイルに電流が流れることを発見しました。これは今日、電磁誘導の法則として知られています。電磁誘導は、発電やモーターの基礎原理として現代文明を支える重要な現象です。物理的には、動いている磁石の運動エネルギーが、電磁気的な相互作用を介して起電力に変換される、と理解することができます。 そして2009年、スピン起電力と呼ばれる、全く新しい起電力の観測が報告されました。スピン起電力では、磁石を動かしません。「動く」のは、磁石の内部に存在するナノ磁気構造です。この時、磁石の持つ磁気的エネルギーが、量子力学と呼ばれるミクロな世界を支配する物理法則に基づいて、起電力に変換されるのです。興味深いことに、量子力学の観点から見ると、スピン起電力と電磁誘導には深い関係があることがわかっています。どちらも、電子の波動関数が獲得するベリー位相の時間変化として理解することができるのです。二つの現象は、ベリー位相の起源が、電子が持つ「電荷」であるか「スピン」であるかによって区別されます。 スピン起電力は新しい現象であると同時に、非常に基礎的かつ磁性体に普遍的な現象です。スピン起電力への理解をさらに深め、そのナノテクノロジーにおける可能性を追求していくことが、私の研究の目標です。 |