会議発表・論文・出版
2020.10.30
見た目の色に関する脳内での情報処理の詳細は未だに多くのことがわかっておらず、脳に入った後で色の情報がどのような形で表現・処理されているかは明らかではありませんでした。新領域創成研究部の金子沙永
研究分野 | 視覚心理学 |
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主な研究テーマ |
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所属学会 | 日本視覚学会、日本基礎心理学会、日本神経科学学会、Vision Sciences Society |
研究概要 | |
私たちは外界に関する多くの情報を、目から視覚情報として得ています。しかし目からは常に多くの情報が入ってくるため、重要な情報だけを効率的に処理する必要があります。ヒトの視覚系は、このような目的に適した、高効率かつ柔軟で選択的な情報処理が可能な優秀な情報処理システムであると言えます。 さて、我々の視知覚は空間的・時間的な文脈に影響を受けることが知られています。例えば、明るさ同時対比と呼ばれる錯視では、灰色の図形が黒い背景上よりも白い背景上でより暗く見えます。このような効果は、他にも色、傾きなど様々な視覚特徴に関して起こることが知られています。この錯視は、ヒト視覚系が視覚情報を効率的に符号化するための手段として文脈を使用しているために生じていると考えられます。このように、エラー、すなわち錯視がどのような状況下で起こるのかを調べることで、ヒト視覚系が普段どのように機能しているかを知ることができると考えています。 私はこれまで心理物理学的手法を用いて、錯視と、それをもたらすヒト視知覚メカニズムに関する研究を行ってきました。これまでの研究では、同時対比の効果が呈示時間によって大きく変わることを発見しました。このことは視覚系が文脈を利用して刺激の特性を動的にすばやく計算していることを示していると考えています。今後の研究では、心理物理学的手法と神経科学的、工学的手法を組み合わせて、これまでの研究をさらに拡大していきたいと考えています。 |