トピックス
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会議発表・論文・出版2017.06.07
中嶋 悠一朗 助教(新領域創成研究部) 『Cell Death & Differentiation』に総説論文掲載 掲載日/2017年5月19日 カスパーゼ(caspase)は進化的に保存されたシステインプロテアーゼであり、アポトーシス(プログラム細胞死の一種)の実行因子として機能することが広く知られています。一方、カスパーゼには細胞死以外の「非細胞死機能」もあり、細胞の増殖や分化、運命決定、そして細胞骨格の制御にも関与することが報告されています。カスパーゼの非細胞死機能の研究には、モデル動物であるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を用いた遺伝学的な研究が有効に利用され、細胞内でのカスパーゼ活性の局在や期間、タイミングなどが精緻に制御されていることが示唆されています。また近年、線虫(C. elegans)を用いた研究から、カスパーゼが老化や正常発生といった個体レベルの表現型にも関与していることが報告されています。このようにカスパーゼの非細胞死機能の個体発生における役割は多岐に渡ると考えられ、今後の研究発展が期待される分野です。 今回、新領域創成研究部の中嶋助教は、本学生命科学研究科の倉永英里奈教授とともに、個体発生におけるカスパーゼの非細胞死機能について論じた総説論文を発表しました。 本成果は学術雑誌 Cell Death & Differentiation (5-Year Impact Factor: 8.218)に2017年05月19日付でオンライン先行掲載されました(本論文はオープンアクセスです)。 論文情報: Yu-ichiro Nakajima, Erina Kuranaga, “Caspase-dependent non-apoptotic processes in development”, Cell Death & Differentiation 2017 May 19. doi: 10.1038/cdd.2017.36.
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会議発表・論文・出版2017.05.31
船本 健一 准教授(新領域創成研究部) 『Frontiers in Physiology』に論文掲載 掲載日/2017年5月24日 新領域創成研究部の船本健一准教授は、東北大学大学院医学系研究科の木村芳孝教授と伊藤拓哉助教と共同で、虚血再灌流に起因する胎児脳出血の発生に関して、国際学術雑誌Frontiers in Physiologyに論文発表を行いました。胎児脳出血は、新生児の脳性麻痺を招く重篤な疾患であり、その発症率は周産期医療の進展にも関わらず、この30年間改善が見られません。本論文では、虚血再灌流と母体の栄養状態とを組み合わせることで胎児脳出血のマウスモデルを作成しました。また、マウス胎仔の脳の超音波イメージングと脳組織の顕微鏡観察により、脳出血が発生する場所とタイミングを調べました。母体に低タンパク食を給餌したマウスの胎仔に虚血再灌流を5分間隔で繰り返し負荷した結果、2度目の虚血状態以降において側脳室周辺部で出血を起こし易いことが明らかになりました。この成果は、脳性麻痺の予防に向けた、血管やその調節系に対する低酸素状態・栄養状態に起因する胎児脳出血の発症機序の解明と、正確な状態管理を可能にする胎児のモニタリングシステムの確立に対して有益な情報をもたらすものです。 本研究は、文部科学省 橋渡し研究加速ネットワークプログラム事業および東北大学流体科学研究所 公募共同研究の支援の下、国際共同研究として実施されました。 論文情報: Kenichi Funamoto, Takuya Ito, Kiyoe Funamoto, Clarissa L. Velayo, Yoshitaka Kimura, Ultrasound imaging of mouse fetal intracranial hemorrhage due to ischemia/reperfusion, Frontiers in Physiology, DOI: 10.3389/fphys.2017.00340.(2017年5月24日 Online掲載)
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会議発表・論文・出版2017.05.26
大学 保一 助教(新領域創成研究部) 『PLOS Genetics』に論文掲載、および報道発表 プレスリリース/2017年5月4日 生体の遺伝情報を記述された、ゲノムDNAは、細胞の増殖の際に正確かつ素早くコピーされる必要があり、あらゆる生物が精巧なDNA複製の仕組みを持ちます。DNA複製の際には、様々な酵素が機能する必要があり、「複製クランプ」は、多くの酵素のDNA上での足場となり、酵素の効率的な働きに必要不可欠なものです。複製クランプは、ドーナッツ状の構造をとり、DNA上を糸に通した輪の様に移動可能でありますが、複製クランプともに、DNAを合成する酵素(DNAポリメラーゼ)がスライドし、スムーズなDNA合成が起きます。 本研究所新領域創成研究部の大学保一助教は、サセックス大学(英国)のAntony Carr教授のグループ、名古屋大学の荻朋男教授、長崎大学の中沢由華助教らと共同で、複製クランプの分子修飾の新たな役割を明らかにしました。本研究は分裂酵母を使用し、小さなタンパク質(ユビキチン)による複製クランプの修飾がDNA複製を滞りなく実施するために重要な現象であることを示し、同時に、その要因となる細胞の仕組みを明らかにしました。複製クランプのユビキチンによる修飾が、クランプ分子自体のDNA上で安定性を高め、それゆえに、複製クランプとDNAポリメラーゼとの結合も強められることを発見しました。これらの仕組みはヒトを含めた動物にも保存されていると考えられ、がん細胞、幹細胞などの活発に増殖するおける細胞でのDNA複製機構を理解、制御する上で重要な知見です。 本研究の成果は、平成29年5月8日(米国時間)付けで、PLOS Genetics誌に掲載されました。 論文情報: Yasukazu Daigaku, Thomas J. Etheridge, Yuka Nakazawa, Mayumi Nakayama, Adam T. Watson, Izumi Miyabe, Tomoo Ogi, Mark A. Osborne, Antony M. Carr*, "PCNA ubiquitylation ensures timely completion of unperturbed DNA replication in fission yeast.", PLOS Genetics DOI: 10.1371/journal.pgen.1006789 プレスリリース: 東北大学
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会議発表・論文・出版2017.05.26
佐藤 正明 所長 書籍出版のお知らせ 『細胞のマルチスケールメカノバイオロジー』 森北出版 発売日/2017年5月31日 【内容紹介】 本書は、工学から生物学・生命科学・医学への展開しつつあるメカノバイオロジーを、本邦の研究の第一人者が細胞レベルのナノからマクロな領域までを一気に解説したものです。 読者対象としては、大学院博士課程の学生から若手研究者を想定し、細胞レベルのメカノバイオロジーの入門書あるいは大学院の教科書として活用いただける内容となっています。 ■書籍情報 佐藤 正明(編著) 『細胞のマルチスケールメカノバイオロジー』 森北出版 菊判/160ページ 定価3,456円(税込)(2017年5月31日発売) ISBN 978-4-627-69141-4 ※ 書籍の詳細(森北出版)
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研究会等のお知らせ2017.05.24
平成29年度前期 全領域合同研究交流会(第1回)のご案内(PDF) 発表者:川村 広和 助教(先端基礎科学)ほか 場所:学際科学フロンティア研究所1階 大セミナー室 ■全領域合同研究交流会について(29年度前期開催日程掲載)
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会議発表・論文・出版2017.05.15
早瀬 元 助教(新領域創成研究部) 化学の高校用教科書に研究紹介の掲載 新領域創成研究部の早瀬 元 助教のベーマイトナノファイバーエアロゲルに関する研究の紹介が、東京書籍(株)の平成31年度からの高校用教科書『化学』および『新編化学』に掲載されることになりました。『新編化学』には、研究者紹介も合わせて掲載されます。 直径25mmのベーマイトナノファイバーエアロゲルの外観
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会議発表・論文・出版2017.05.15
船本 健一 准教授(新領域創成研究部) 『Integrative Biology』に論文掲載 掲載日/2017年5月10日 新領域創成研究部の船本健一准教授は、低酸素負荷に対する血管内皮細胞の単層の初期応答について、国際学術雑誌Integrative Biologyに論文発表を行いました。血管の内腔を覆う血管内皮細胞の単層は、血液と生体組織間の物質交換の制御に寄与し、その破綻は様々な疾患(出血,動脈硬化,がんの転移など)の発症や進展を招きます。本研究では、生体内の低酸素環境が血管内皮細胞の単層の物質透過性に与える影響と、その変化の機序を解明することを目的に、細胞周囲の酸素濃度を制御できる独自のマイクロ流体デバイスを用いた細胞実験を行いました。その結果、血管内皮細胞の単層に低酸素負荷を与えると、細胞間の接着をつかさどるタンパク質であるVE‐カドヘリンの内在化が生じて細胞間の結合性が緩み、細胞層の物質透過性が亢進することが明らかになりました。この成果は、血管新生の制御やがんの転移の抑制、虚血再還流による出血の予防の実現に対して有益な情報をもたらすものです。 本研究は、日本学術振興会 頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム、文部科学省 研究費補助金、東北大学流体科学研究所 公募共同研究、学際科学フロンティア研究所 領域創成研究プログラムなどの支援の下、東北大学学際科学フロンティア研究所(船本健一准教授,中山勝文准教授,吉野大輔助教)と学内の他部局、マサチューセッツ工科大学との国際共同研究として実施されました。 論文情報: Kenichi Funamoto, Daisuke Yoshino, Kento Matsubara, Ioannis K. Zervantonakis, Kiyoe Funamoto, Masafumi Nakayama, Jun Masamune, Yoshitaka Kimura, Roger D. Kamm, Endothelial monolayer permeability under controlled oxygen tension, Integrative Biology, DOI: 10.1039/c7ib00068e.(2017年5月10日 Online掲載)
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お知らせ2017.05.10
津村 耕司 助教(新領域創成研究部) NHK仙台放送局ラジオ第1『ゴジだっちゃ!』への出演 放送日/2017年4月3日 新領域創成研究部の津村耕司助教は、NHK仙台放送局のラジオ第1の番組『ゴジだっちゃ!』(4月3日放送)に出演し、自身の研究や著書について紹介し、またリスナーからの質問へ回答するなど、話題を提供しました。 ■ゴジだっちゃ!番組ページ 6月14日にも同番組に再び出演する予定です。
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会議発表・論文・出版2017.05.09
奥村 正樹 助教(新領域創成研究部) 『Structure』に論文掲載、および報道発表 プレスリリース/2017年5月4日 新領域創成研究部の奥村正樹助教は、東北大学多元物質科学研究所、熊本大学、および京都産業大学の研究者との共同研究において、X線結晶構造解析により、ジスルフィド結合開裂酵素ERdj5のクラスターの配向が異なる2つの結晶構造を解明しました。 細胞内には、正常なたんぱく質の高次構造形成反応を促進する仕組みがある一方で、構造異常のたんぱく質を速やかに分解・除去するための巧妙な品質管理システムも存在します。Protein Disufide Iso merase (PDI) ファミリーたんぱく質の1つであるERdj5は、哺乳動物細胞の小胞体中で誤って形成されたジスルフィド結合を還元し、小胞体関連分解と呼ばれる分解機構を促進させる役割を担っています。ERdj5の全体構造はそれぞれが複数のドメインから構成されている2つのクラスター(N末端側クラスターとC末端側クラスター)に分けることができます。両クラスターは、フレキシブルなリンカー領域で連結されていることから、動きに富むことが示唆されていました。しかし、この動きがERdj5の機能発現にどう関わるか不明だったため、詳細な分子機構の解明が求められていました。 さらに高速原子間力顕微鏡により、ERdj5のC末端側クラスターがダイナミックに動いている様子を一分子レベルで観察することに世界で初めて成功しました。さらに細胞を用いた実験により、ERdj5のC末端側クラスターの動きが、構造異常たんぱく質中のジスルフィド結合の還元および分解促進に重要な役割をもつことが強く示唆されました。 本研究の成果は、2017年5月4日(米国東部時間)に「Structure」のオンライン速報版で公開されました。 論文情報:Ken-ichi Maegawa, Satoshi Watanabe, Kentaro Noi, Masaki Okumura, Yuta Amagai, Michio Inoue, Ryo Ushioda, Kazuhiro Nagata, Teru Ogura, and Kenji Inaba, " The highly dynamic nature of ERdj5 is key to efficient elimination of aberrant protein oligomers through ER-associated degradation ", Structure, Available online 4 May 2017, DOI: 10.1016/j.str.2017.04.001 プレスリリース: 東北大学 多元物質科学研究所
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会議発表・論文・出版2017.05.02
田中 幹人 助教(新領域創成研究部) 東日本放送『スーパーJチャンネルみやぎ』への出演 放送予定日/2017年5月9日 新領域創成研究部の田中幹人助教が、天文学のアウトリーチ活動として取り組んでいるカードゲーム「アンドロメダファイト」についてテレビ局からの取材を受けました。「アンドロメダファイト」の紹介、および制作に関する経緯や、主に小学生を対象とした活動の意図などについて、記者の質問に答えました。5月9日(火)18:15から放送予定の東日本放送『スーパーJチャンネルみやぎ』の中で、仙台市天文台および本学での天文へのアウトリーチ活動として紹介される予定です。