トピックス
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会議発表・論文・出版2023.03.28
先端学際基幹研究部の才田淳治教授とソウル大学のWook Ha Ryu助教(前、学際科学フロンティア研究所学術研究員)、Eun Soo Park教授らの国際共同研究グループは、種々の条件でのZr基 金属ガラスの塑性変形性とせん断帯(粘性流動変形を起こした痕跡)の導入挙動を調査し、安定的な粘性流動のセレーション状態(鋸歯のように粘性流動変形の移動と停止を繰り返す状態)を創成することに成功し、塑性変形性の改善が期待できることを科学誌Journal of Alloys and Compounds に発表しました。 金属ガラスの変形は、結晶質金属のように転位の移動によるものではなく、原子群が粘性流動変形することによって起こります。そのため加工硬化が起きず、脆性的な破壊に至る問題点がありました。才田教授らの研究グループでは、異なるPoisson比、アスペクト比および接触摩擦をもったZr基金属ガラスの塑性変形におけるせん断帯の導入と発展過程を実験およびシミュレーションによって解析し、その過程を3つのステージに分類できることを明らかにしました。その結果をもとに、適切な変形条件を選定することにより、持続的で安定状態にあるセレーション流動変形を可能にでき、塑性変形性を改善できることを提案しました。 本成果は、文部科学省科学研究費補助金 基盤研究A (18H03829) の支援を受けて行われた研究です。 掲載論文: Wook Ha Ryu, Won-Seok Ko, Haruka Isano, Rui Yamada, Hehsang Ahn, Geun Hee Yoo, Kook Noh Yoon, Eun Soo Park, Junji Saida : Journal of Alloys and Compounds, 946 (2023)169308. Sustainable steady-state serrated flow induced by modulating deformation sequence in bulk metallic glass https://doi.org/10.1016/j.jallcom.2023.169308
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受賞2023.03.28
新領域創成研究部の工藤雄大助教が筆頭・責任著者として出版した論文が、日本農芸化学会英文誌『Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry』に掲載された優秀な論文として、2022年「BBB論文賞」を受賞しました。 BBB論文賞を受賞した論文は、次の通りです。 Yuta Kudo, Keiichi Konoki, Mari Yotsu-Yamashita "Mass spectrometry–guided discovery of new analogs of bicyclic phosphotriester salinipostin and evaluation of their monoacylglycerol lipase inhibitory activity" Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry DOI: 10.1093/bbb/zbac131 https://doi.org/10.1093/bbb/zbac131 日本農芸化学会 BBB論文賞 https://www.jsbba.or.jp/about/awards/about_awards_bbb_journal.html
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お知らせ2023.03.24
新領域創成研究部の田村光平准教授が「数理考古学」についてのコメントを朝日新聞に提供し、記事が2023年3月20日に掲載されました。 田村准教授は、数理モデルを考古学に適用する「数理考古学」が知識や技術の継承にも寄与する、という期待を述べています。 朝日新聞 2023年3月20日 石器も遺跡もデータで解析 「感性の学問」考古学に数学で新風 https://www.asahi.com/articles/ASR3K5TT0R2SULBH005.html
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受賞2023.03.22
新領域創成研究部の木村成生助教は、2022年度(第34回)⽇本天⽂学会研究奨励賞を受賞しました。 本賞は、優れた研究成果を上げている若手天文学者に対して授与されるものです。 受賞日:令和5年3月15日 受賞対象題目:ブラックホール天体での宇宙線加速と高エネルギー放射の理論的研究 授賞式の様子。 ⽇本天⽂学会研究奨励賞 受賞者 https://www.asj.or.jp/jp/activities/prize/shorei/recipients/ 2022年度日本天文学会研究奨励賞 受賞理由 https://www.asj.or.jp/common/img/contents/activities/prize/shorei/winner/shourei2022_Kimura_reason.pdf
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会議発表・論文・出版2023.03.17
人類が開発してきた合成金属触媒と自然界で進化してきた生体触媒(酵素)の利点を組み合わせることを目的として人工金属酵素の研究が進められています。人工金属酵素は合成金属触媒(金属錯体)をタンパク質の内部空間に導入することで構築されます。今回、東北大学学際科学フロンティア研究所の岡本泰典助教、佐藤伸一助教、馬渕拓哉助教らは、光駆動型人工金属酵素の開発に成功しました。 図:今回開発した光駆動型人工金属酵素のイメージ図。 本研究の人工金属酵素を構成するルテニウム錯体は非発光性ですが、タンパク質の内部空間に導入されることで発光するようになります。研究チームは、このルテニウム錯体の光化学特性の変化から、ルテニウム錯体単独と人工酵素化されたものでは異なる光触媒能を発揮すると予想しました。実験の結果、ルテニウム錯体単独では光駆動型の一電子移動反応を、人工酵素化されたものではエネルギー移動反応を優先的に進行させることを見出しました。さらには、この反応タイプの切り替えをタンパク質のアミノ酸残基の選択的ラベル化に応用しました。本成果は、生命科学や創薬研究で重要な技術である「生体分子の部位特異的なラベル化」に人工金属酵素が貢献できる可能性を示すものです。 本研究をリードした岡本助教は「これまでに私たちは人工金属酵素が細胞内で利用可能であることを示してきており、本研究で示した光駆動型人工金属酵素というコンセプトは、細胞機能の光触媒制御に立脚する生命現象の理解や薬剤開発に繋がることが予想できます。加えて、本成果は、FRIS CoREという協働的研究環境を舞台に生み出されたものであり、その有用性を実証するものであると考えます」と成果の意義と展望、また、そのような研究環境配備の重要性を強調します。 本研究成果は、米国化学会の専門誌『ACS Catalysis』に2023年3月16日(米国時間)付で掲載され、また同誌のSupplementary Coverにも選出されました。 論文情報: Yasunori Okamoto*, Takuya Mabuchi, Keita Nakane, Akiko Ueno, Shinichi Sato (*責任著者) “Switching Type I/Type II Reactions by Turning a Photoredox Catalyst into a Photo-Driven Artificial Metalloenzyme” ACS Catalysis DOI:10.1021/acscatal.2c05946 URL: https://doi.org/10.1021/acscatal.2c05946 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/03/press20230317-01-label.html 科学技術振興機構 https://www.jst.go.jp/pr/announce/20230317/index.html FRIS CoRE: https://www.fris.tohoku.ac.jp/fris_core/
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会議発表・論文・出版2023.03.10
新領域創成研究部の塩見こずえ助教は、東京大学大気海洋研究所およびCNRS(フランス)との国際共同研究を行い、外洋を長距離移動するペンギンの水中および水面における定位能力の高さを示す結果を報告しました。 多くの潜水動物(クジラ、アザラシ、ペンギン、ウミガメなど)が、数百km〜数千kmというスケールで外洋での移動を繰り返しています。そのような長距離移動を確実に成し遂げるためには3次元空間での定位能力が不可欠であると考えられますが、移動中の体の向きの分布や変化パターンを詳細に調べた研究はほとんどありません。 本研究では磁気センサと加速度センサを内蔵した行動記録計を用いて、キングペンギン Aptenodytes patagonicus の水中と水面における体の向きを1秒間隔で最長13日間記録しました。その結果、移動中は昼/夜・水面/水中を問わず、100 m以上の深さで餌を獲った後でさえも、数百km離れた最終目的地の方角に定位し続けていたことが明らかになりました。キングペンギンは、水面と水中、そしてどの時間帯でも機能するコンパスメカニズムに支えられて、水平移動と道中での採餌を両立させながら長距離移動を達成していることが示唆されました。 本成果は『Marine Biology』誌にて発表し、2023年3月9日付でオンライン版が掲載されました。 (Illustration / Naoya Hata) 論文情報: Kozue Shiomi*, Katsufumi Sato, Charles-Andre Bost, Yves Handrich * (*corresponding author), "Stay the course: maintenance of consistent orientation by commuting penguins both underwater and at the water surface", Marine Biology, 170:42 (2023) DOI:10.1007/s00227-023-04186-4 https://link.springer.com/article/10.1007/s00227-023-04186-4
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会議発表・論文・出版2023.03.06
我々に最も近い恒星である太陽では、太陽フレアと呼ばれる爆発現象が観測されています。太陽フレアはさまざまな波長の電磁波が突発的に増光する現象です。規模の大きな太陽フレアでは高エネルギーのガンマ線も検出されていますが、その生成機構はよくわかっていません。また、生まれたばかりの恒星である原始星でも突発的にX線で明るく輝く原始星フレアが観測されていますが、その発生機構は未解明です。原始星の周囲は多くの塵を含む物質で取り囲まれており、可視光線やX線は強く減光されてしまいます。そのため、それらの波長帯の観測だけで原始星フレアの全容を解明することは難しいと考えられます。 東北大学学際科学フロンティア研究所の木村助教、大阪大学の高棹助教、東北大学大学院理学研究科の富田准教授は、現在の太陽フレアの標準的な磁気リコネクションシナリオに基づいて、太陽フレアでの宇宙線生成とガンマ線放射過程の理論モデルを構築しました。この理論モデルでは、太陽フレアの際に生成された宇宙線陽子がX線を放射しているプラズマと相互作用してガンマ線が放射されます。予言されたガンマ線放射は、太陽フレアで観測されているガンマ線データと整合的です。 また、その理論モデルを原始星フレアへと適用した結果、原始星フレアで観測されているX線データを再現しつつ、近い将来に完成するガンマ線望遠鏡で原始星からのガンマ線を検出できる可能性を見出しました。さらに、原始星フレアからは現行の観測装置で検出可能な明るいミリ波放射が生じることを予言しました。ガンマ線やミリ波は塵による減光の影響を受けづらいため、原始星の観測に好都合です。近い将来、これらの波長帯で原始星を長期間観測することで、原始星フレアの駆動機構や星形成環境下での宇宙線生成過程が明らかとなることが期待されます。 この研究成果は米国天文学会発行の天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal』誌に2023年2月27日付で掲載されました。 図:今回新たに構築した太陽フレア・原始星フレアにおける非熱的放射理論モデルの模式図。 論文情報: Shigeo S. Kimura, Shinsuke Takasao, & Kengo Tomida “Modeling Hadronic Gamma-Ray Emissions from Solar Flares and Prospects for Detecting Nonthermal Signatures from Protostars” The Astrophysical Journal, 944, 192 DOI:10.3847/1538-4357/acb649 https://doi.org/10.3847/1538-4357/acb649
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研究会等のお知らせ2023.03.06
ハイブリッド開催 FRIS Hub Meetingは、FRISの研究者全員が参加する研究発表セミナーで、月に一度8月を除く毎月第4木曜日に開催しています。これまで参加者はFRIS内の研究者を対象としていましたが、2019年12月より、対象を東北大学の研究者、学生へと広げました。 また、2021年1月からは学際融合東北拠点のTI-FRIS Hub Meetingと合同で開催しています。 言語は日本語と英語を混ぜて使用しています。異分野研究者同士では共通の常識や考え方は望めません。聴衆は発表中にどんどん質問し、討論し、理解を深めるようにしています。積極的にご参加ください。 【TI-FRISは、弘前大学、岩手大学、東北大学、秋田大学、山形大学、福島大学、宮城教育大学、三菱総合研究所によるコンソーシアム事業です。】 第41回 FRIS Hub Meeting(TI-FRIS Hub Meetingとの合同開催) 日時:2023年3月23日(木)11:00-12:00 開催方式:ハイブリッド開催(オンライン/Zoom ・学際科学フロンティア研究所セミナー室) ※オンサイト参加は当面はFRIS教員及びTI-FRISフェローに限定させていただきます。 オンライン参加ご希望の方は、事前登録が必要になります。 オンライン参加者 申し込みフォームよりご登録ください。 発表者: 下川 航平 助教 (東北大学 学際科学フロンティア研究所/物質材料・エネルギー) 発表タイトル: 自然に潜む微小電池/Small Batteries Hidden in Nature 要旨: リチウムイオン電池等の蓄電池は様々な電子機器に搭載され、我々の生活を飛躍的に便利にしてきた。電池内部の正極では、遷移金属酸化物の酸化還元反応が充放電の中心的な役割を担っている。一方、自然界においても植物の光合成や微生物によるマンガン循環など、微視的には電池の酸化還元反応に類似した機構でエネルギー・物質変換が生じている。発表者はこの類似性に着目した学際研究を展開している。本発表では、近年ますます大きな関心を寄せている蓄電池研究の基礎から概観するとともに、最近の研究について紹介する。 ◆FRIS Hub Meetingについて
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会議発表・論文・出版2023.03.03
東北大学学際科学フロンティア研究所のNguyen Tuan Hung助教が参加する、東京都立大学、産業技術総合研究所、東北大学、名古屋大学、筑波大学、大阪大学などの研究チームは、直径数〜数十ナノメートル程度の遷移金属モノカルコゲナ(TMC)のナノファイバーの内部に金属原子を効率的に挿入する技術を開発しました。原子分解能電子顕微鏡により、インジウム(In)原子が挿入された結晶構造を直接観察しました。 このような金属原子の挿入技術の確立は、金属原子とTMCナノファイバーの多彩な組み合わせによる新材料・新機能の実現や超伝導特性の発現につながることが期待されます。今後、新たな三元系TMCの実現や合成技術の高度化により、柔軟な構造を有する超伝導ファイバーをはじめ、微細な配線・透明電極・導電性複合材料などの応用開発も期待されます。 本研究成果は、2023年2月24日付でアメリカ化学会が発行する英文誌『ACS Nano』にて発表されました。 図:(a)三元系TMCナノファイバーの断面を撮影した電子顕微鏡写真と構造モデル。(b)シリコン基板上に合成した三元系TMCナノファイバーの電子顕微鏡写真。 論文情報: Ryusuke Natsui, Hiroshi Shimizu, Yusuke Nakanishi*, Zheng Liu, Akito Shimamura, Nguyen Tuan Hung, Yung-Chang Lin, Takahiko Endo, Jiang Pu, Iori Kikuchi, Taishi Takenobu, Susumu Okada, Kazu Suenaga, Riichiro Saito*, and Yasumitsu Miyata* (*corresponding author) “Vapor-Phase Indium Intercalation in van der Waals Nanofibers of Atomically Thin W6Te6 Wires” ACS Nano DOI: 10.1021/acsnano.2c10997 https://doi.org/10.1021/acsnano.2c10997 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/03/press20230303-02-nano.html 東北大学理学研究科 https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20230303-12521.html
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会議発表・論文・出版2023.03.01
新領域創成研究部の田村光平准教授が、書籍「つながりの人類史 集団脳と感染症」をPHP研究所より出版しました。 技術の発展と感染症の蔓延は、どちらもヒトが集まり、つながることによって駆動されます。本書は、人類史における双方の事例を紹介しつつ、両者のトレードオフについて論じています。同時に、人類史研究の不確かさや、人口減少などの社会変化により日本の人類史研究が受ける影響についても議論しています。 書名:つながりの人類史 集団脳と感染症 出版社:PHP研究所 発行日:2023年02月20日 ISBN: 978-4-569-85402-1 出版社サイト:https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-85402-1