トピックス
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研究会等のお知らせ2023.10.26
第29回学際研セミナーを開催します。 日時 : 2023年11月17日(金) 15:30~16:30 会場 : 学際科学フロンティア研究所(青葉山キャンパス) セミナー室(1F) 題目 : Artificial Metalloenzymes for in vivo Catalysis: Challenges and Opportunities 演者 : Thomas R. Ward教授 (University of Basel, Switzerland) 演者紹介 : Thomas R. Ward先生は有機金属錯体をタンパク質の内部に導入することで高い反応選択性を示す人工金属酵素の研究で世界をリードしています。これまでに移動型水素添加反応、鈴木カップリング、オレフィンメタセシス、C-H結合活性化など非天然の触媒能を有する人工金属酵素を開発してきました。また、近年では大腸菌内部での人工金属酵素の構築、それに続くその分子進化手法の開発も行っております。 代表論文 : Nature 2016, 537, 661., Nat. Catal. 2021, 4, 643., JACS 2022, 144, 11676., JACS 2023, 30, 16621.
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会議発表・論文・出版2023.10.19
日常生活における笑いは全身の健康にも影響することが報告されています。一方でCOVID-19の流行下では、対面交流の機会が制限され、人々の笑う機会が減少した可能性があります。 東北大学大学院歯学研究科の竹内研時准教授、学際科学フロンティア研究所の木内桜助教らを中心とする研究グループは、COVID-19流行下における友人との対面交流の制限が笑う機会の減少と関連しているかどうか、また、オンライン交流の増加が笑う機会の減少の緩和要因となりえるかどうかを検討しました。 2020年8月~9月にかけて実施された「日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究 (JACSIS) 」の15~79歳の参加者を対象とした横断調査により、対面交流が減少した人は約1.6倍笑う機会が減少していたことが示されました。一方、同時期に非対面(オンライン)交流が増加した場合は笑いの減少リスクが緩和されていました。リスク緩和割合は、電話での交流では36.1%、ビデオでの交流では28.6%で、統計的に有意な値を示しました。 本研究結果から、COVID-19流行下では対面交流の制限が笑う機会の減少と関連していましたが、電話やビデオ等のオンライン交流の増加がこの関連を緩和していたことが明らかになりました。本研究成果は2023年9月21日に、国際誌Preventive Medicine Reportsにて公開されました。 図:オンライン交流の有無による対面交流の減少と笑いの減少のリスク 論文情報: タイトル:Does online communication mitigate the association between a decrease in face-to-face communication and laughter during the COVID-19 pandemic? A cross-sectional study from JACSIS study. 著者:Kiuchi, S., Takeuchi, K*., Kusama, T., Cooray, U., Tamada, Y., Osaka, K., Tabuchi, T *責任著者:東北大学大学院歯学研究科 准教授 竹内研時 掲載誌:Preventive Medicine Reports DOI: 10.1016/j.pmedr.2023.102432 URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211335523003236? via%3Dihub 研究成果: 東北大学大学院歯学研究科 https://www.dent.tohoku.ac.jp/news/view.html#!986 詳細 https://www.dent.tohoku.ac.jp/news/file/20231017_01.pdf
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研究会等のお知らせ2023.10.12
ハイブリッド開催 / Hybrid Event FRIS Hub Meetingは、FRISの研究者全員が参加する研究発表セミナーで、月に一度、8月を除く毎月第4木曜日に開催しています。Hub Meetingの趣旨は、発表者が全領域の研究者を対象として、研究のイントロと分かりやすい専門的内容の紹介を行い、新テーマ創成の芽を作ることです。2021年1月からは世界で活躍できる研究者戦略育成事業「学際融合グローバル研究者育成東北イニシアティブ(TI-FRIS)」のTI-FRIS Hub Meetingと合同で開催しています。 Hub Meetingでは英語での発表を強く推奨しています。異分野研究者同士では共通の常識や考え方は望めません。参加者は発表中にどんどん質問し、討論し、理解を深めるようにしています。Hub Meeting参加対象(下記)の方は積極的にご参加ください。 【TI-FRISは、弘前大学、岩手大学、東北大学、秋田大学、山形大学、福島大学、宮城教育大学によるコンソーシアム事業です。】 第47回 FRIS Hub Meeting(TI-FRIS Hub Meetingとの合同開催) 日時:2023年10月26日(木)11:00-12:00 開催方式:ハイブリッド開催(オンライン/Zoom・学際科学フロンティア研究所セミナー室) Language: English 参加ご希望の方は、事前登録が必要になります。 参加申し込みフォームよりご登録ください。 登録締切:10月25日(水)15:00 発表者: 飯浜賢志 助教 (東北大学学際科学フロンティア研究所/先端基礎科学/TI-FRISフェロー ) 発表タイトル: スピントロニクスと学際研究/Spintronics and its interdisciplinary research Summary : Spintronics is research field in which magnetic degree of freedom in electronics is studied for developing new devices with low energy consumption and new functionalities. Magnetic random-access memory is a major application in spintronics, where nano-magnets are used to store information without power supply. The devices using nano-magnets have many advantages such as faster operation, high endurance, and high-density recording. In the talk, the presenter will introduce how spintronics has been used in applications so far and what next-generation interdisciplinary applications of spintronics are. Hub Meeting参加者 趣旨と守秘義務を理解・了解していることを条件に、以下の方が参加できます。 Hub Meetingメンバー 発表のターゲットとする参加者、アーカイブ視聴対象 ・東北大学学際科学フロンティア研究所教員 ・TI-FRISフェロー オブザーバー Hub Meetingに興味のある下記の参加者(質問・議論にも参加することができます) ・東北大学学際高等研究教育院研究教育院生 ・東北大学教職員・学生 ・TI-FRIS参画大学教職員・学生 ・TI-FRIS関係者(委員会委員等) ・「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」の育成対象者 ・科学記者 ・学際研所長/TI-FRISプログラムマネージャーが認めたもの ◆FRIS Hub Meetingについて
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受賞2023.10.03
増本研究室(先端学際基幹研究部・物質材料・エネルギー領域)の陳 育霆(ちん ゆいてぃん)(東北大学大学院工学研究科修士課程2年)さんが、日本セラミックス協会第36回秋季シンポジウム:2023年9月5~8日:京都工芸繊維大学)において、「奨励賞」を受賞しました。 本賞は、セッション『グリーンプロセッシング~SDGs実現に向けた機能性セラミックスのイノベーション~』の発表の中で、優れた内容の若手研究者の発表に対して与えられるシンポジウム賞です。 写真:後列左2番目:陳さん、前列左2番目:増本教授、前列左4番目:川口セッション長 タイトル: 熱処理によるCo-Ta2O5系ナノコンポジット薄膜におけるトンネル磁気―抵抗効果の増大 受賞者名: 陳 育霆(学際研増本研究室 修士2年) 木村 萌(学際研増本研究室、現:TDK(株)) 大沼 繁弘(学際研学術研究員・電磁材料研究所) 小林 伸聖(学際研客員教授・電磁材料研究所) 増本 博(学際研先端学際基幹研究部・物質材料・エネルギー領域)
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会議発表・論文・出版2023.09.28
「親子で性格が似ている」「親も子もうつ病になった」など、考え方の特徴や精神的な不調が、まるで連鎖するように親子で共通して見られることがあります。また、親が幼少期に虐待などの辛い体験をした場合、その影響は次世代の脳の発達や精神状態にも現れると言われています。親の性格や経験が次世代へ引き継がれているとも言うべきこれらの現象は「世代間伝達」と呼ばれています。 世代間伝達はどのようにして起こるのか、誰にでも起こるのか、ヒトの精神的健康における世代間伝達の役割とは何なのか、明確な答えは未だ得られていません。そこで、東北大学学際科学フロンティア研究所の松平泉助教、同大学医学系研究科の山口涼大学院生(日本学術振興会特別研究員)、同大学スマート・エイジング学際重点研究センターの瀧靖之教授の研究グループは、父・母・子(=親子トリオ)を対象とした脳科学の研究プロジェクト『家族の脳科学(英語名:Transmit Radiant Individuality to Offspring [TRIO] study)』を開始しました。この研究では、世代間伝達とヒトの個性の関係性の深淵な理解を目的として、親子3名の脳画像・遺伝子・生育環境・性格・認知能力、などのデータを取得し、相互の関係性を詳細に分析します。 本研究は2021年にスタートし、地域にお住まいの皆様のご協力のもと、これまでに約200トリオのデータ取得を行いました。本研究の目的、データ取得の方法、将来展望をまとめたプロトコル論文が、2023年9月28日にFrontiers in Psychiatry誌に掲載されました。今後もサンプル数を拡大しながら研究を展開し、ヒトの精神的健康の維持に貢献する新たな知見の創出を目指します。 図:TRIO studyの概要。(左上)研究参加者募集用のプロモーション画像。(左下)世代間伝達をキーワードとして、ヒトの個性が形成される仕組みを探究することがTRIO studyの目的です。(右上)研究参加者の皆様から脳画像を中心に遺伝子や生育環境などあらゆる情報を取得させて頂いています。(右下)思春期以上の子とその父母のトリオを対象としている点が、国内外の他のコホートにはないTRIO studyの特色です。 論文情報: タイトル:Transmit Radiant Individuality to Offspring (TRIO) study: Investigating intergenerational transmission effects on brain development 著者: Izumi Matsudaira*†, Ryo Yamaguchi†, and Yasuyuki Taki (†共同第一著者) *責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教 松平泉 掲載誌:Frontiers in Psychiatry DOI: 10.3389/fpsyt.2023.1150973 URL: https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2023.1150973/full
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受賞2023.09.26
新領域創成研究部の飯浜賢志助教は、公益財団法人本多記念会「第63回原田研究奨励賞」を受賞しました。 本賞は本多記念会が指定する東北地区の大学、研究機関及び高等専門学校等に在職する35才以下で、金属及びその周辺材料に関する研究・教育を行い、優れた成果・教育的貢献が顕著な将来性豊かな研究者に対して授与されるものです。 受賞対象の研究テーマ: 金属磁性ヘテロ構造における光誘起スピンダイナミクス 第63回原田研究奨励賞授賞式の様子(飯浜賢志助教は2列目の右から1人目)。
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研究会等のお知らせ2023.09.22
先端学際基幹研究部の丹羽伸介准教授がオーガナイザーを務める欧州分子生物学機構 (EMBO)・欧州分子生物学研究所 (EMBL)シンポジウム「Microtubules: from atoms to compex systems」が2024年6月にハイデルベルグ(ドイツ)で開催されます。 ■シンポジウム詳細(英語) https://www.embl.org/about/info/course-and-conference-office/events/ees24-07/
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会議発表・論文・出版2023.09.22
今日の半導体露光装置や蛍光物質を使わない医療技術において、100 nm〜300 nmの波長の短いレーザー光源が求められています。波長の短いレーザー光源を得る一つの手法として、第2高調波発生(SHG)の方法があります。 東北大学学際科学フロンティア研究所のグエン タン フン(Nguyen Tuan Hung)助教と大学院理学研究科の齋藤理一郎名誉教授は、米国ライス大学とマサチューセッツ工科大学と共同で、ヤヌス型遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)と呼ばれる表面と裏面で別の原子層を持つ2次元物質が、波長400nmのSHGを発生することを第一原理計算で検証しました。さらに、このヤヌス型TMDをヘテロ積層し、SHGを3倍に増強することにも示しました。得られた波長は長いですが、手法を他の物質に応用することが可能です。 また研究チームは可能な積層構造を検討し、どのヘテロ構造が最もSHG強度を強くすることができるかを第一原理計算によって示し、数値計算の結果の一部は実験結果を定量的に再現しました。これは計算結果の信頼性を示すものです。さらに面内方向に20%も歪ませることによりSHG強度を最大にすることも示しました。今後、歪ヤヌス型TMDのSHGの実験的検証が期待されます。 本研究の成果は、2次元物質の自由な合成手法によってSHGを発生・増強する新たな物質群を創生する意義があります。 本研究成果は、米国化学会ACS Nano誌に 2023年8月29日付で掲載され、発表号の表紙に採用されました。 図:(左)ヘテロ積層の方法を変える(AB→AA積層)だけで、(中)第2高調波(SHG)の強度(非線形感受率χ(2))が3倍大きくなります。(右)この結果を受けて、三角形の試料のSHG強度を観測し、計算の予想を再現しました。 論文情報: タイトル:Nonlinear Optical Responses of Janus MoSSe/MoS2 Heterobilayers Optimized by Stacking Order and Strain 著者: Nguyen Tuan Hung*, Kunyan Zhang, Vuong Van Thanh, Yunfan Guo, Alexander A. Puretzky, David B. Geohegan, Jing Kong, Shengxi Huang*, and Riichiro Saito* *責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教 Nguyen Tuan Hung 米国・ライス大学 准教授 Shengxi Huang 東北大学大学院理学研究科 名誉教授 齋藤理一郎 掲載誌:ACS Nano DOI: https://doi.org/10.1021/acsnano.3c04436 URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.3c04436 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/09/press20230922-02-shg.html 東北大学理学研究科 https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20230922-12871.html
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お知らせ2023.09.15
2023年8月26日、金属材料研究所において、仙台市内の高校生を対象とした公開講演会「ナノスケールの世界 材料科学へのいざないと電子顕微鏡」を開催しました。 学際科学フロンティア研究所が主催する研究者体験プログラム「マテジョLABO (マテリアル×女子高生×Laboratory)」で作製したナノ複相薄膜の膜構造の電子顕微鏡観察とともに、今野教授の講義では、材料が社会に果たす役割やモノが「見える」しくみについてわかりやすく説明していただきました。 電子顕微鏡室とリモートでつなぎ、実際の試料を観察しながらの解説があり、大画面に映し出される原子レベルの像に高校生は興味津々の様子でした。途中、回折像の直感的理解のために鉛フリーはんだボール(千住金属工業株式会社様よりご提供)を使った結晶模型の回折パターンの実験を行いました。アモルファス~多結晶~単結晶原子まで原子の配列を変えた場合にフーリエ変換像がどのように変化するか、電子顕微鏡の回折像と対応させて検証しました。今野先生から電子線の絞りや検出する電子線の種類と見える像の違いについてご説明いただき、高校生からは明視野像や暗視野像など一つの顕微鏡で様々な像が見られるところが面白かった、光の波が重なって明るく見える「干渉」について理解できたなどの声が聞かれました。 「マテジョLABO」は学際科学フロンティア研究所の2023年度領域創成研究プログラムの支援を受けて活動しています。活動の内容に興味のある方は下記ウェブサイトをご覧ください。 「マテジョLABO」ウェブサイト http://www2.fris.tohoku.ac.jp/~aoki/ 主催/東北大学学際科学フロンティア研究所 協賛/文科省マテリアル先端リサーチインフラ事業(ARIM事業班) 後援/東北大学金属材料研究所、東北大学工学研究科、 工学系女性研究者育成支援推進室 (ALicE)・DEI 推進プロジェクト 連携/東北大学「科学者の卵」養成講座
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会議発表・論文・出版2023.09.11
東京大学大学院薬学系研究科の長井広樹博士研究員(研究開始当時 東北大学学際科学フロンティア研究所研究員)、三浦正幸教授、中嶋悠一朗講師(研究開始当時 東北大学学際科学フロンティア研究所助教)らによる研究グループは、同大学定量生命科学研究所、北海道大学、東北大学、大阪大学と共同で、栄養環境に応じた腸管サイズ増大において、分化した腸管内分泌細胞が腸管幹細胞へと脱分化を起こすことを明らかにしました。これまで、脱分化は、組織損傷によって幹細胞が失われた際や、組織がん化の際に起こることが知られていましたが、生理的な条件下で脱分化が起こりうるかは不明でした。本研究グループは、ショウジョウバエ成虫の腸管において、蛹から羽化した直後の食餌摂取、あるいは絶食後の再摂食時に腸管幹細胞が増加することに着目し、このとき腸管内分泌細胞が栄養摂取に応答して脱分化を起こしていることを見出しました。また、脱分化由来の幹細胞を腸管から除去する実験系を構築し、脱分化が栄養摂取に応じた幹細胞数の増加と、それに続く腸管サイズの増大に必須であることを示しました。さらに、この栄養依存的な脱分化現象を誘導するメカニズムとして、食餌中のグルコースとアミノ酸量に反応してJAK-STATシグナルが腸管内分泌細胞で活性化することの重要性を解き明かしました。 食事摂取量に対する腸管サイズの適応反応は多様な生物種で観察されており、JAK-STATシグナルは哺乳類において損傷再生時の脱分化誘導を担っています。こうした知見から、本研究で発見した栄養依存的な脱分化現象は、ショウジョウバエのみならず、哺乳類を含む進化的に保存された機構であることが期待されます。また、細胞運命の可塑性は、腫瘍化や化生といった病態とも関連があり、本研究成果が栄養環境と疾患を結ぶ手がかりとなる可能性があります。 図:栄養環境の変動に応じた腸管内分泌細胞の脱分化モデル図 論文情報: タイトル:Nutrient-driven dedifferentiation of enteroendocrine cells promotes adaptive intestinal growth in Drosophila 著者:Hiroki Nagai*, Luis Augusto Eijy Nagai, Sohei Tasaki, Ryuichiro Nakato, Daiki Umetsu, Erina Kuranaga, Masayuki Miura, and Yu-ichiro Nakajima* 掲載誌:Developmental Cell DOI: 10.1016/j.devcel.2023.08.022 URL: https://cell.com/developmental-cell/fulltext/S1534-5807(23)00437-9 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/09/press20230911-01-cell.html 東北大学生命科学研究科 https://www.lifesci.tohoku.ac.jp/date/detail---id-51530.html 東京大学 https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0111_90034.html