トピックス
-
研究会等のお知らせ2023.07.06
ハイブリッド開催 / Hybrid Event FRIS Hub Meetingは、FRISの研究者全員が参加する研究発表セミナーで、月に一度、8月を除く毎月第4木曜日に開催しています。Hub Meetingの趣旨は、発表者が全領域の研究者を対象として、研究のイントロと分かりやすい専門的内容の紹介を行い、新テーマ創成の芽を作ることです。2021年1月からは世界で活躍できる研究者戦略育成事業「学際融合グローバル研究者育成東北イニシアティブ(TI-FRIS)」のTI-FRIS Hub Meetingと合同で開催しています。 Hub Meetingでは英語での発表を強く推奨しています。異分野研究者同士では共通の常識や考え方は望めません。参加者は発表中にどんどん質問し、討論し、理解を深めるようにしています。Hub Meeting参加対象(下記)の方は積極的にご参加ください。 【TI-FRISは、弘前大学、岩手大学、東北大学、秋田大学、山形大学、福島大学、宮城教育大学によるコンソーシアム事業です。】 第45回 FRIS Hub Meeting(TI-FRIS Hub Meetingとの合同開催) 日時:2023年7月27日(木)11:00-12:00 開催方式:ハイブリッド開催(オンライン/Zoom・学際科学フロンティア研究所セミナー室) 発表言語:日本語 参加ご希望の方は、事前登録が必要になります。 参加申し込みフォームよりご登録ください。 登録締切:7月26日(水)15:00 発表者: 田副博文 准教授 (弘前大学/生命・環境/TI-FRISフェロー) 発表タイトル: 精密化学分析による物質循環トレーサーの探求/ Exploration of Geochemical Cycle Tracer by Chemical Analysis and its Application to Different Field Summary : 環境中の重金属元素の同位体比や放射性核種はその供給源や供給過程によって変化するため物質循環研究の重要な指標となる。例えば、海洋の深層水循環は熱量や溶存成分の輸送に重要な役割を果たすが、流速が極めて遅く物理観測が困難であるため、放射性炭素年代など化学トレーサーが用いられた。また、海底堆積物など層序を維持して情報が保持された試料は過去におきた環境変化の変遷を紐解く鍵となる。最近では、骨や貝殻などの生体硬組織に蓄積された同位体情報から生息域に関する情報を抽出することで海産物の産地同定や、先史時代の交易の解明など他分野への展開も図られている。 Hub Meeting参加者 趣旨と守秘義務を理解・了解していることを条件に、以下の方が参加できます。 Hub Meetingメンバー 発表のターゲットとする参加者、アーカイブ視聴対象 ・東北大学学際科学フロンティア研究所教員 ・TI-FRISフェロー オブザーバー Hub Meetingに興味のある下記の参加者(質問・議論にも参加することができます) ・東北大学学際高等研究教育院研究教育院生 ・東北大学教職員・学生 ・TI-FRIS参画大学教職員・学生 ・TI-FRIS関係者(委員会委員等) ・「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」の育成対象者 ・科学記者 ・学際研所長/TI-FRISプログラムマネージャーが認めたもの ◆FRIS Hub Meetingについて
-
受賞2023.07.05
東北大学に所属する助教26名に「東北大学プロミネントリサーチフェロー」の称号が新たに付与され、学際科学フロンティア研究所(学際研)からは7名が選ばれました。 「東北大学プロミネントリサーチフェロー」制度は、東北大学の助教のうち、新領域を切り開く独創的な研究に挑戦する者に称号を付与するもので、令和3年度に新たに創設されました。今回が第5回の称号付与です。 プロミネントリサーチフェローの称号を付与された若手教員の活躍が、本学における教育研究の一層の推進及び社会への貢献に資することが期待されます。 学際研所属の新規称号付与者: Aseel Mahmoud Suleiman Marahleh(先端基礎科学) Welling Thomas Arnoldus Josephus(物質材料・エネルギー) 上地 浩之(生命・環境) 松平 泉(人間・社会) 千葉 貴裕(先端基礎科学) 村越 ふみ(生命・環境) 唐 超(デバイス・テクノロジー) 東北大学: 独創的な研究に挑戦する若手研究者「東北大学プロミネントリサーチフェロー(令和5年度第1回)」を発表しました https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/07/news20230703-pr.html 東北大学若手躍進イニシアティブ https://www.bureau.tohoku.ac.jp/yri/index.html
-
会議発表・論文・出版2023.07.03
東京農工大学大学院工学府の岡田隼輔(博士後期課程修了)、松本陽佑(博士前期課程修了)、大学院工学研究院の村岡貴博教授、東北大学学際科学フロンティア研究所の奥村正樹准教授、東海大学理学部の高橋莉奏(博士前期課程学生)、荒井堅太講師、関西学院大学理学部の金村進吾助教の研究グループは、変性状態のタンパク質に対して、1当量添加でフォールディングを効率的に進める合成化合物pMePySSの開発に成功しました。ピリジニウム基とチオール/ジスルフィド基の1連結構造が、ジスルフィド結合形成を伴う酸化的タンパク質フォールディングを促進する効果的な分子構造であることを見出しました。 アミノ酸が連結して作られるポリペプチドは、天然構造と呼ばれる特定の三次元構造を形成して、タンパク質としての機能を獲得します。この天然構造を形成する過程をポリペプチド鎖の折りたたみ、フォールディング、と呼びます。タンパク質は、インスリンや抗体医薬などバイオ医薬品としても広く利用され、その社会的重要性は近年急速に高まっています。フォールディングを効率よく進める材料や技術開発は、タンパク質製剤の生産効率の向上に直結する重要な課題です。 医薬品として用いられるものも含め、タンパク質の多くは、システイン残基間でのジスルフィド結合形成を伴いながらフォールディングを行います。ジスルフィド結合形成は酸化反応であるため、その形成を伴うフォールディングは酸化的タンパク質フォールディングと呼ばれます。酸化的タンパク質フォールディングを促進する人工化合物として、チオール/ジスルフィド構造を中心にこれまでも開発が行われてきました。しかし、従来のチオール/ジスルフィド化合物は、いずれもタンパク質に対して過剰に添加し、フォールディング促進が行われてきました。過剰量添加を要する点で、従来の化合物の効率は十分に高いものと言えない現状にありました。 本研究では、生体内で広く見られるメチル化反応に注目し、チオール/ジスルフィド化合物に対するメチル化による酸化的タンパク質フォールディングの促進効率向上を検討しました。その中で開発した化合物pMePySSが、還元変性タンパク質(ウシ膵臓トリプシンインヒビター、BPTI)に対して、ジスルフィド結合当り1当量添加で最大74%の収率で天然構造体を与えました。これは、従来の人工フォールディング促進化合物を過剰量用いた場合と比べても同等の収率であり、pMePySSが従来化合物と比べて、添加量基準で10倍以上高い効率でフォールディングを進めることが示されました。pMePySSは、インスリンのフォールディングに対しても1当量添加で促進効果を示しました。酸化型グルタチオンGSSGを用いる従来法と比べて、pMePySSは、4.2倍高い効率でインスリン天然構造体の形成を進めました。 この成果は、構造異常タンパク質が引き起こすパーキンソン病やアルツハイマー病、2型糖尿病などのミスフォールディング病に対する治療薬の開発や、インスリンや抗体医薬などのタンパク質製剤の合成効率の向上に貢献すると期待されます。 本研究成果は、本研究成果は2023年6月30日(金)、英国化学会誌『Chemical Science』のオンライン版で公開されました。 図:酸化的タンパク質フォールディングの概要と本研究で開発したpMePySS。左に示す還元変性タンパク質は、システイン残基の側鎖がチオール基(SH)の状態にあり、分子全体として構造がほどけている。還元変性タンパク質に対してpMePySSが反応することでフォールディングが進行し、右に示す天然構造タンパク質が作られる。天然構造タンパク質は、システイン残基の側鎖がジスルフィド結合(SS)を形成し、分子全体が折り畳まれた状態にある。 論文情報: タイトル:Semi-enzymatic acceleration of oxidative protein folding by N-methylated heteroaromatic thiols 著者:Shunsuke Okada, Yosuke Matsumoto, Rikana Takahashi, Kenta Arai, Shingo Kanemura, Masaki Okumura and Takahiro Muraoka (*責任著者 村岡貴博、奥村正樹) 掲載誌:Chemical Science DOI: 10.1039/D3SC01540H URL: https://doi.org/10.1039/D3SC01540H プレスリリース: 東北大学 http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/07/press20230703-01-pmepyss.html 東京農工大学 https://www.tuat.ac.jp/outline/disclosure/pressrelease/2023/20230630_02.html 科学技術振興機構(JST) https://www.jst.go.jp/pr/announce/20230630/index.html
-
研究会等のお知らせ2023.06.29
web開催 令和5年度 前期第3回 全領域合同研究交流会を開催します。 ZoomによるWeb開催となります。 教育院生及び学際研関係者以外の方で参加をご希望の方は7月6日(木)13時までに下記のフォームから申し込みをお願いいたします。 追って参加方法等についてご連絡いたします。 参加申込フォーム: https://forms.gle/6kkweWftDwKzoYhr6 参加には東北大メールが必要となりますので予めご確認下さい。 口頭発表者は以下の通りです。 須郷 大地(工学研究科 / 物質材料・エネルギー領域) 広域土砂災害リスク評価における三次元極限平衡法の性能検証 Performance verification of three-dimensional Limit Equilibrium Method for wide-area landslide risk assessment 山梨 太郎(工学研究科 / デバイス・テクノロジー領域) K+輸送体KUP12を介した植物の高湿度応答機構の解明 Mechanism of plant response to high humidity via the K+ transporter, KUP12 小野 泉帆(工学研究科 / 物質材料・エネルギー領域) フェムト秒レーザー照射における電子・格子ダイナミクスの数値シミュレーション Numerical simulation of electron and lattice dynamics in femtosecond laser irradiation R5前期第3回抄録集.pdf ■全領域合同研究交流会について
-
会議発表・論文・出版2023.06.27
周波数フィルタは、電気通信システムや信号処理システムなどの電子アプリケーションにおいて広く活用されており、特定の周波数帯域において目的の信号を送信し、望ましくない周波数帯域の信号を遮断または抑制することができます。このフィルタは、スイッチドキャパシタネットワーク、マイクロエレクトロメカニカルシステム、強誘電体、強磁性膜など、多様な技術を利用して、通過帯域の周波数を効果的に調整することが可能です。さらに、チューナブル周波数フィルタは、複数の周波数をカバーし、マルチバンド動作における様々なシナリオに対応できます。 曹 洋 助教(東北大学・学際科学フロンティア研究所・新領域創成研究部、現 湖北大学) 小林 伸聖 主席研究員((公財)電磁材料研究所) 王 誠 学術研究員(東北大学・学際科学フロンティア研究所) 前川 禎通 教授(理化学研究所) 高橋 三郎 学術研究員(東北大学・材料科学高等研究所) 増本 博 教授(東北大学・学際科学フロンティア研究所・先端学際基幹研究部) の研究グループは、磁性ナノ粒子を絶縁性マトリックスに分散させたナノグラニュラー薄膜を開発しました。この薄膜では、緩和周波数が電界で変化することを初めて報告し、この現象を説明するために新しい非対称電荷トンネルモデルも構築しました。 本研究では、電気的に調整可能な周波数特性を持つ誘電体グラニュラー材料を用いて、交流輸送応答の誘電緩和周波数を直流電界で制御できる新たな誘電体ナノグラニュラー材料が実証されました。この材料は、RFローパスフィルタやアンテナの簡素化や小型化に応用できると期待されています。 本研究成果は、2023年4月14日付けの「Advanced Electronic Materials」に掲載されました。 さらに本誌6月号のFront Cover(Volume 9, Issue 6 June 2023)にも選出されました(写真)。 論文情報: タイトル:Novel Dielectric Nanogranular Materials with an Electrically Tunable Frequency Response, 著者:Yang Cao, Nobukiyo Kobayashi, Cheng Wang, Saburo Takahashi, Sadamichi Maekawa, Hiroshi Masumoto, 掲載誌:Adv. Electron. Mater. 2023, 2201218 DOI:10.1002/aelm.202201218 URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/aelm.202201218
-
研究会等のお知らせ2023.06.23
現地開催 / Onsite Event デザインを中心としたガバナンスに向けて FRISシンポジウム:ソーシャルロボットとエシカルデザインについて 本シンポジウムでは、ロボットのガバナンスにおけるAI倫理標準化の使用について議論します。具体的には、技術進歩の急速なスピードに追いつけない立法プロセスの遅れによる、AI対応技術の規制に対する様々な課題について検討します。さらに、ステークホルダーが日常生活に内在する倫理的、法的、社会的影響(ELSI)のリスクを管理できるようにするため、拘束力のない柔軟なAI倫理基準に依存する規制の枠組みについても討論します。 人間とロボットのインタラクションについて、ソーシャルロボットの開発プロセスにAI倫理基準を組み込むことによって、ロボット開発者がロボット規制のために制定された法律に抵触することがなくなり、責任あるイノベーションと研究の原則を組み込むこともできるようになると考えられます。 そのため、私たちは倫理的なロボット設計のアプローチを調査しながら、それに関わる全ての可能性と限界を検討します。また、「コンプライアンス・バイ・デザイン」という概念を実践する際に、「倫理的に調和した設計」と「社会システム・デザイン」に関する枠組みの有用性も討論の対象となります。 このシンポジウムに参加することにより、以下のことを学ぶことができます: 1. AI時代における新興テクノロジーの規制に関するブランド戦略 2. 倫理設計の概念をロボットシステム開発に適用する方法 3. IEEE 7000シリーズのAI倫理標準化の動向と事例 ウェブサイト:https://1243122972.wixsite.com/fris2023 プログラム:https://works.bepress.com/weng_yueh_hsuan/140/ 参加ご希望の方は、事前登録が必要になりますので、参加申し込みフォームよりご登録ください。 【謝辞】 本シンポジウムは、JST FOREST(助成番号:JPMJFR222C)及び(7月19日の非公開セッションに限り)JST Moonshot R&D(助成番号:JPMJMS2034)の助成によって運営されています。 【1日目】公開セッション 日時:2023年7月18日(火)09:00-17:00 場所:青葉山コモンズ 翠生ホール(2階) 使用言語:英語 【基調講演】(1名) 発表者:平田 泰久(東北大学工学研究科) 発表タイトル:AIロボットとの共生で誰もが健康に暮らせる社会へ 【通常講演】(11名) 発表者: Ruth Lewis (IEEE テクノロジーの社会的影響に関する研究会/分科委員会) 発表タイトル:IEEE標準化協会 AI倫理とガバナンス 発表者:Ben Bland (IEEE P7014ワーキンググループ) 発表タイトル:共感型AIの倫理基準作成で得た苦い教訓 発表者:武田 洸晶(豊橋技術科学大学) 発表タイトル:身体支援ロボットとユーザーとのコミュニケーション 発表者:丸山 文宏(産業技術総合研究所) 発表タイトル:ヒューマン・マシン・チーム化の概要と枠組み 発表者:Alison Xu(早稲田大学) 発表タイトル:自律走行車事故の賠償責任問題:比較の視点より 発表者:Gabriele Trovato(芝浦工業大学) 発表タイトル:ベールを脱ぐ:同型ロボットと説明能力の臨界問題 発表者:Andrew McStay(バンガー大学) 発表タイトル:共感、ガバナンス、コンプライアンス:レプリカから学ぶモラル 発表者: Phoebe Li(サセックス大学) 発表タイトル: AIガバナンス、データフロー、国際貿易 発表者:林 宥岺(大葉大學) 発表タイトル:台湾の長期介護現場における社会支援ロボットの倫理的問題:医療従事者の視点からの考察 発表者:出雲 孝(日本大学) 発表タイトル:自然法とロボットの自然設計 発表者: Hilja Autto(ラップランド大学) 発表タイトル:情報デザイン・可視化によるリーガル・コミュニケーションの強化 【2日目】非公開セッション(招待者限定) 日時:2023年7月19日(水) 場所:東北大学 学際科学フロンティア研究所1階第一会議室および第二会義室、東北大学 工学研究科ロボティクス専攻平田研究室 【3日目】公開セッション 日時:2023年7月20日(木)10:00-12:00 場所:東北大学 学際科学フロンティア研究所1階セミナー室 使用言語:英語 【特別講演】(1名) 発表者:Ruth Lewis(IEEE テクノロジーの社会的影響に関する研究会/分科委員会) 発表タイトル:自律型及び知能型システムのための集合知をエンジニアリングする:IEEE 7010-2020 【クロージングリマークス】(1名) 発表者:翁岳暄(東北大学学際科学フロンティア研究所とIEEE P7017ワーキンググループ) 発表タイトル:デザインを中心としたソーシャルロボットガバナンスに向けて
-
会議発表・論文・出版2023.06.23
乳酸(lactate)は解糖系とよばれる細胞内エネルギー産生の初期段階で産生される代謝物です。例えば運動による骨格筋の収縮では多くの乳酸が血中に放出されます。これまで乳酸はエネルギー産生における副次的な代謝物として考えられてきましたが、最近では乳酸自体が情報を伝達する物質として様々な細胞機能に影響を与える可能性が指摘されています。東北大学大学院医学系研究科の徐 丹大学院生、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の楠山譲二テニュアトラック准教授(研究当時:東北大学学際科学フロンティア研究所・助教)、東北大学大学院医工学研究科の永富良一教授らのグループは、ヒトとマウスの神経細胞を用いた実験により、乳酸が神経細胞の分化を促進するシグナル伝達機構を解明しました。本研究は、代謝物とみなされてきた乳酸が神経細胞の機能を制御するというユニークな機能を明らかにした重要な報告です。 本研究成果は、2023年6月10日(日本時間6月11日)付でThe Journal of Biological Chemistry誌(電子版)に掲載されました。 図:乳酸による神経細胞分化の促進機構。本研究では、ヒトやマウスの神経細胞を培養する際、乳酸を加えると神経細胞の分化が促進する(分化指標であるNH-Fが多くなる)ことを見出した。乳酸は、神経細胞の乳酸輸送体(MCT)によって細胞内に取り込まれると、乳酸に結合するタンパク質であるNDRG3を介して、TEAD1、ELF4といった転写因子を介して神経細胞の分化に関わる遺伝子の発現を促進する。一方で、乳酸はNDRG3を介さない経路によっても神経細胞分化を制御しており、TLE2、EE1A2、HES7などがこの機構に関わっている。 論文情報: タイトル:Lactate promotes neuronal differentiation of SH-SY5Y cells by lactate-responsive gene sets through NDRG3-dependent and -independent manners. 著者:Yidan Xu, Joji Kusuyama*, Shion Osana, Satayuki Matsuhashi, Longfei Li, Hiroaki Takada, Hitoshi Inada, Ryoichi Nagatomi* (* Corresponding authors) 掲載誌:The Journal of Biological Chemistry DOI: 10.1016/j.jbc.2023.104802 URL: https://www.jbc.org/article/S0021-9258(23)01830-6/fulltext プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/06/press20230623-01-lactate.html 東北大学大学院医学系研究科 https://www.med.tohoku.ac.jp/5414/
-
会議発表・論文・出版2023.06.15
恒星程度の質量をもつ2つのブラックホールで構成される連星ブラックホールの存在が近年の重力波の観測から明らかになりましたが、その起源はわかっていません。これまでの恒星進化理論からは形成されないと思われていた太陽の50倍から100倍程度の質量をもつブラックホール同士が衝突するという事象も観測されています。そのような連星ブラックホールの形成場所として、活動銀河核と呼ばれる銀河の中心部でのブラックホール合体現象が提案されています。活動銀河核には降着円盤と呼ばれる濃いガス円盤が存在すると考えられています。ブラックホールがそのガス円盤に閉じ込められると、頻繁にブラックホール同士が合体して質量を増やすため、恒星進化理論で予言されるものよりも重い連星ブラックホールを形成することが可能になります。しかし、このシナリオを電磁波観測で検証する方法は知られていませんでした。 コロンビア大学(当時)の田川博士、東北大学学際科学フロンティア研究所の木村助教を含む国際研究チームは、活動銀河核の降着円盤内部にブラックホールが存在する時に放射される電磁波信号を理論的に計算し、どのような電磁波観測を通じてシナリオを検証できるか検討しました。このシナリオでは、ブラックホールから射出されるジェットが降着円盤と相互作用して衝撃波を形成します。この衝撃波が円盤の表面に達した時に生じる多波長放射を計算し、活動銀河核における特異な増光現象として検出できることを見出しました。この特異な増光現象を見つけるには、X線帯域での広視野探索が有用です。 また、このシナリオでは一部のブラックホール合体事象に電磁波が付随することが予言されます。連星ブラックホールが合体するとブラックホールのスピンの向きが合体前後で変わるため、合体後に射出されたジェットが再び活動銀河核の円盤と相互作用して衝撃波を形成すると考えられます。その衝撃波が円盤表面に達すると様々な波長で観測可能な電磁波を放射します。このシナリオでは、過去に報告されている連星ブラックホール合体事象と電磁波の対応天体候補を説明する事が可能です。将来の連星ブラックホール事象に対する電磁波追観測によりシナリオの検証が期待されます。 これらの研究成果は米国天文学会発行の天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal Letters』誌に2023年3月21日付で、『The Astrophysical Journal』誌に6月6日付でそれぞれ掲載されました。 図:電磁波放射モデルの概念図。降着円盤に埋もれたブラックホールからジェットが射出され、降着円盤と相互作用しつつジェットが円盤から抜け出る瞬間に明るい電磁波が様々な波長帯で放射される。 論文情報: タイトル:“Observable Signatures of Stellar-mass Black Holes in Active Galactic Nuclei” 著者:Hiromichi Tagawa (Columbia University), Shigeo S. Kimura (Tohoku University), Zoltan Haiman (Columbia University), Rosalba Perna (New York University), Imre Bartos (Florida University) 掲載誌:The Astrophysical Journal Letters DOI:10.3847/2041-8213/acc103 URL: https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/acc103 タイトル:“Observable signature of merging stellar-mass black holes in active galactic nuclei” 著者:Hiromichi Tagawa (Columbia University), Shigeo S. Kimura (Tohoku University), Zoltan Haiman (Columbia University), Rosalba Perna (New York University), Imre Bartos (Florida University) 掲載誌:The Astrophysical Journal DOI:10.3847/1538-4357/acc4bb URL: https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/acc4bb
-
会議発表・論文・出版2023.06.09
近年、けが等で体の一部が動かなかったり失ったりした時に、自然治癒力を利用して生体組織を再生・修復する再生医療技術が注目されています。細胞足場材料は、周囲の微小環境と細胞の相互作用を高めることで、組織再生のプラットフォームとして、細胞の成長や機能的な組織形成を促します。細胞足場材料の研究の多くは、固体基材の硬度やパターンの付与を操作することに重点が置かれていますが、人体では、細胞は流体状の足場も接着基材として利用しており、多様な生体環境の再構築が必要とされてきました。一方、流体表面への細胞の接着は、油と細胞の相互作用が乏しく困難でした。 東北大学学際科学フロンティア研究所の阿部博弥助教(大学院工学研究科兼任)、伊奈朋弥氏(工学部建築・社会環境工学科3年)、大学院工学研究科の西澤松彦教授、東京医科歯科大学の梶弘和教授は、ムール貝の接着性分子として知られるドーパミンを油と水の界面に接着させ、その重合体であるポリドーパミンの薄膜をその界面に形成させることで、油と細胞の親和性を高めることに成功しました。さらに、油の体積変化に伴って水と界面の見かけ上の表面積を変化させることで、油と水の界面上に高分子薄膜の"シワ"を形成させることを見出しました。このシワ上で細胞を播種した結果、細胞がシワに沿って並んでいることも確認されました。本研究成果は、組織工学や再生医療における細胞の成長や分化等への柔軟性と周期的なパターンの関係性を明らかにする新しい足場材料として期待されます。 この研究成果は高分子学会発行の専門誌『Polymer Journal』誌に2023年6月7日付で掲載されました。 なお、論文著者の伊奈氏は東北大学アドミニストレイティブ・アシスタントの制度をきっかけとして、研究チームに加わりました。学際科学フロンティア研究所では、所属教員の研究の進展を図るとともに、このような学生に最先端の研究を経験する機会を提供し、学生の多様な研究経験と経済支援に資する事を目的とした取り組みである「学部学生研究ワーク体験(FRIS-URO)」 を開始しております。 また、本成果は学際研内の日常的な異分野交流を可能とする協働的研究環境を目指したFRIS CoREを利用した研究成果です。 図:ムール貝から着想を得た高分子薄膜を培養液(medium)と油の界面に形成させることで細胞の接着に成功。さらに、“シワ”を導入することで界面上に規則的なパターンの導入を可能にした。 論文情報: タイトル:Mussel-inspired interfacial ultrathin films for cellular adhesion on the wrinkled surfaces of hydrophobic fluids 著者:Hiroya Abe, Tomoya Ina, Hirokazu Kaji, Matsuhiko Nishizawa 掲載誌:Polymer Journal DOI: 10.1038/s41428-023-00799-0 URL: https://doi.org/10.1038/s41428-023-00799-0 https://rdcu.be/ddVFT 学際科学フロンティア研究所「学部学生研究ワーク体験(FRIS-URO)」: https://www.fris.tohoku.ac.jp/recruit/fris-uro/
-
研究会等のお知らせ2023.06.07
ハイブリッド開催 令和5年度 前期第2回 全領域合同研究交流会を開催します。 教育院生及び学際研関係者以外の方で参加をご希望の方は6月12日(月)13時までに下記のフォームから申し込みをお願いいたします。 追って参加方法等についてご連絡いたします。 ただし口頭発表のオンライン参加のみとなりますのでご了承ください。 参加申込フォーム: https://forms.gle/oBJUNKR6r8nHJbGt5 参加には東北大メールが必要となりますので予めご確認下さい。 口頭発表者は以下の通りです。 横沢 拓海(薬学研究科 / 生命・環境領域) 炎症性疾患における新規サイトカインストーム誘導因子の発見 Identification of the novel cytokine storm inducing factor in inflammatory diseases. 角田 陽(工学研究科 / 先端基礎科学領域) 予熱帯と反応帯:火炎構造からみた燃焼現象の統一的理解 A unified understanding of combustion phenomena through flame structure: preheat zone and reaction zone 細木 亮輔 (農学研究科 / 生命・環境領域) フッ化炭素溶媒添加による細菌増殖促進メカニズムの解明 Operation of bacterial growth with fluorocarbon and search for molecular mechanisms 場所 口頭発表:オンライン&学際科学フロンティア研究所セミナー室 ポスター発表:学際科学フロンティア研究所セミナー室 R5前期第2回抄録集.pdf ■全領域合同研究交流会について