トピックス
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会議発表・論文・出版2025.03.31
温度は生理学や病理学上の生体反応において重要な役割を担っており、生体システムから細胞レベルまでの化学物質の動態と密接にかかわっています。生体内部温度のモニタリング技術は進展しているものの、局所的な温度変化と体内の化学物質の変化を同時に計測する技術は開発には至っていませんでした。 東北大学学際化学フロンティア研究所の郭媛元准教授、同大学工学部の久保稀央学部生、理学部の阿部茉友子学部生(学際科学フロンティア研究所ジュニアリサーチャー)らの研究チームは、熱延伸技術を用いることで、温度とpHの同時計測が可能である超微細ファイバーデバイスの開発に成功しました。 本研究成果は、2025年3月6日付で米国化学会の学術誌ACS Measurement Science Auに掲載されました。 図. 熱延伸技術による超微細ファイバーデバイスの実現 論文情報 タイトル:Development of dual-function microelectronic fibers for pH and temperature sensing: toward in vivo and wearable applications 著者:Mahiro Kubo, Mayuko Abe, Etienne Le Bourdonnec, Sheau-Chyi Wu, To-En Hsu, Takao Inoue, *Yuanyuan Guo *責任著者: 東北大学学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部 東北大学大学院医工学研究科 バイオファイバ医工学分野 准教授 郭媛元 掲載誌:ACS Measurement Science Au DOI: 10.1021/acsmeasuresciau.4c00092 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/03/press20250331-02-fiber.html
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受賞2025.03.31
新領域創成研究部の橋田紘明助教が、2025年3月に東京で開催された電子情報通信学会総合大会において電子情報通信学会学術奨励賞を受賞しました。本賞は、2024年電子情報通信学会総合大会において発表した「近傍/遠方界におけるIntelligent Reflecting Surfaceの反射特性」の研究成果が評価されたものです。
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受賞2025.03.28
新領域創成研究部の藤林翔助教は、2024年度(第36回)⽇本天⽂学会研究奨励賞を受賞しました。 本賞は、優れた研究成果を上げている若手天文学者に対して授与されるものです。 受賞日:2025年3月18日 受賞対象題目:連星中性子星合体における質量放出・重元素合成の理論的研究 授賞式の様子。 ⽇本天⽂学会研究奨励賞 受賞者 https://www.asj.or.jp/jp/activities/prize/shorei/recipients/ 2024年度日本天文学会研究奨励賞 受賞理由 https://www.asj.or.jp/jp/item/2024shourei_reason_Fujibayashi.pdf
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受賞2025.03.26
新領域創成研究部の阿部博弥准教授および平本薫助教は「化学とマイクロ・ナノシステム学会 2024年度若手優秀賞」を受賞しました。化学とマイクロ・ナノシステム学会 若手優秀賞は、化学とマイクロ・ナノシステムに関連する新規性に富む優れた研究を行った若手研究者に対して贈られる賞です。 研究テーマ: 阿部博弥「ムール貝に着想を得た気液および液液界面の機能化」 平本薫「電気化学発光を用いた細胞・生体分子イメージング技術の開発」 受賞情報: 化学とマイクロ・ナノシステム学会 「2024年度 学会賞、奨励賞、若手優秀賞、技術賞が決定しました」
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会議発表・論文・出版2025.03.19
量子もつれは量子力学の基本概念であり、量子コンピューターは量子もつれの上に構築されています。同時に、量子コンピューターはその性質を調査し、明らかにするための強力なツールでもあります。 東北大学学際科学フロンティア研究所のLe Bin Ho助教と英国ロンドンのパブリックスクールであるセント・ポールズ・スクールのHaruki Matsunaga氏は、量子コンピューターによる量子もつれの検出を強化し、もつれて(エンタングルして)いるかどうかを判定する手法のエンタングルメント・ウィットネスによる測定を最適化する、変分エンタングルメント・ウィットネス方式(VEW)を提案しました。従来の局所的な測定では量子もつれを破壊してしまうことがありますが、本研究では非局所的な測定法によって、量子もつれの破壊を引き起こすことなく量子特性を測定するアプローチを導入しました。量子もつれの検出と保護の両方を行う量子アルゴリズムが使われたのは今回が初めてです。 本アルゴリズムは、量子コンピューター、量子通信、量子暗号などの分野で応用され、実社会における情報セキュリティ向上や情報処理能力の革新に寄与することが期待されます。 本成果は、3月4日、米国物理学会の学術誌『Physical Review Research』に掲載されました。 図. 変分エンタングルメント・ウィットネス(VEW)方式の可視化。左:評価を待つ多くの量子状態が並んでいます。各状態はVEW法を使用して一つずつ分析されます。右:結果に基づいて、状態はもつれ部分空間(赤い楕円)または可分部分空間(青い楕円)に分類されます。 論文情報 タイトル:Detecting and protecting entanglement through nonlocality, variational entanglement witness, and nonlocal measurements 著者: Haruki Matsunaga, Le Bin Ho *責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部 助教 Le Bin Ho 掲載誌:Physical Review Research DOI:10.1103/PhysRevResearch.7.013239 URL:https://doi.org/10.1103/PhysRevResearch.7.013239 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/03/press20250319-01-quantum.html
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受賞2025.03.18
新領域創成研究部の齋藤勇士助教が、第35回 トーキン科学技術賞を受賞しました。トーキン科学技術賞は、宮城県内の大学等において工学分野で優れた成果を上げた若手研究者に対して贈られる賞です。 研究テーマ:革新的ハイブリッドロケットの推進性能解明と実用化研究 受賞情報: 株式会社トーキン ニュースリリース「第35回 トーキン科学技術賞贈賞式を開催しました」
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会議発表・論文・出版2025.03.17
我々の住む宇宙は宇宙線と呼ばれるほぼ光速で飛び交う荷電粒子で満たされています。その中には1000兆電子ボルト(= 1 ペタ電子ボルト)を超えるような高エネルギーの宇宙線も存在しており、そのような高エネルギー宇宙線を加速する天体をぺバトロンと呼びます。しかし、ぺバトロンがどのような天体なのか、高エネルギー宇宙線の発見から50年以上が経過した現在も明らかになっていません。ぺバトロンは0.1ペタ電子ボルト程度のガンマ線やニュートリノを放射するため、それらの粒子を観測することで高エネルギー宇宙線の起源に迫ることができます。 宇宙線の起源として本命の候補であった超新星残骸の多くは、ガンマ線の観測からペバトロンではないことが示唆されており、他の宇宙線源が必要である可能性があります。2019年に稼働した中国のガンマ線検出器LHAASOは0.1ペタ電子ボルトを超える宇宙ガンマ線を検出しており、ペバトロンの起源解明に期待がかかっています。LHAASO実験により新たなガンマ線天体が複数報告されていますが、その中にはガンマ線スペクトルの特徴が既知の天体と異なる未知の天体も含まれていました。 東北大学学際科学フロンティア研究所の木村成生助教らの研究チームは、星間空間中の分子雲と呼ばれる高密度ガス内を漂うブラックホールがペバトロンであり、それがLHAASOが発見した未知のガンマ線天体とも対応しているという新たな説を提唱しました。我々の住む天の川銀河には、1億個から10億個ものブラックホールが存在していると理論的には考えられています。宇宙空間を漂うブラックホールは周囲の星間物質をその重力で引きずり込み、膨大な重力エネルギーを解放します。その際、星間物質と一緒に磁場もブラックホール周囲へと引き込み、ブラックホールの周囲に強く磁化したプラズマを生成します。その磁気エネルギーを解放することで、ブラックホールは1ペタ電子ボルトを超える宇宙線を生成します。これらの高エネルギー宇宙線は天の川銀河を伝播して地球に到達します。研究チームはこのシナリオを使うと地上で観測されている1ペタ電子ボルトの宇宙線観測データを説明可能であることを示しました。また、ブラックホール周囲で生成された宇宙線は、周囲の分子雲と相互作用することでガンマ線を生成します。これらのガンマ線がLHAASOが検出した未知のガンマ線天体のデータも説明できることも示しました。今後、ブラックホール天体の観測や高エネルギーのガンマ線・ニュートリノの観測が進むことで、長年の謎である高エネルギー宇宙線の起源を明らかにできるかもしれません。 これらの研究成果は米国天文学会発行の天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal Letters』誌に2025年3月10日付で掲載されました。 論文情報 タイトル:Isolated Black Holes as Potential PeVatrons and Ultrahigh-energy Gamma-Ray Sources 著者:Shigeo S. Kimura, Kengo Tomida, Masato I. N. Kobayashi, Koki Kin, and Bing Zhang 掲載誌:The Astrophysical Journal Letters DOI:10.3847/2041-8213/adb841 URL:https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/adb841
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会議発表・論文・出版2025.03.07
放線菌は抗生物質をはじめとする有用化合物の生産者として創薬上・産業上重要な微生物群です。放線菌はその化合物生産をシグナル分子(自己制御分子)で制御します。放線菌の優れた物質生産能を司る重要な因子ですが、シグナル分子が明確に同定されている例はごくわずかです。これはシグナル分子の生産は極めて低濃度で、解析に多大な労力を要することが一因と考えられます。 今回、新領域創成研究部の工藤雄大准教授らは、シグナル分子を迅速同定する2つの独自の手法を開発しました。 シグナル分子の生産を増大させるレジン(吸着剤)を放線菌と共培養することで、従来の1/100スケールの培養量でシグナル分子を単離構造決定しました。 有機合成と放線菌が有する生合成酵素による酵素反応を組み合わせたシグナル分子の化学-酵素合成法を構築し、シグナル分子の効率的な合成を達成しました。12種の合成標品を用いることで、多種の放線菌からシグナル分子を迅速に同定しました。 さらに、本研究ではシグナル分子の光学異性体を放線菌から初めて発見しました。シグナル分子の化学構造の多様性および分布を明らかにすることで、放線菌の二次代謝制御に関する知見を拡大しました。今後、有用化合物の生産増大、新規化合物の発見へと展開していきます。 本成果についてまとめた論文(Article)はイギリス王立化学会(RCS)「RSC Chemical Biology」誌に2025年2月25日付でオンライン速報版が掲載されました。本論文はオープンアクセスとなっております。 論文情報 タイトル:Identification of γ-butyrolactone signalling molecules in diverse actinomycetes using resin-assisted isolation and chemoenzymatic synthesis 著者:Yuta Kudo*, Keiichi Konoki and Mari Yotsu-Yamashita *責任著者:東北大学 学際科学フロンティア研究所(兼務 大学院農学研究科)准教授 工藤雄大 掲載誌:RSC Chemical Biology DOI:10.1039/d5cb00007f URL:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2025/cb/d5cb00007f
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会議発表・論文・出版2025.03.06
水圧破砕は、坑井(こうせい)を通して高圧の流体を地下に圧入し、岩石を破砕する(割る)技術であり、我が国に多く賦存する地熱エネルギー、シェールガス・オイル等の非在来型資源、地球温暖化対策として有効な二酸化炭素地下貯留等の地下資源開発において、必要不可欠です。き裂(岩の割れ目)を造成することは、地下の流体の流れやすさ(透水性)を向上させるため、効率的な地下開発につながります。しかしながら、通常の水圧破砕では、き裂が造成できる方向は地下の応力状態で決定され、それ以外の方向にき裂を造成し、透水性を向上させることはできませんでした。これが水圧破砕の技術的限界でしたが、もはやこれは、解決できる問題とも認識されていませんでした。 東北大学流体科学研究所の椋平祐輔助教らの研究グループは、ずり速度によって粘度が劇的に変化するせん断増粘流体(STF)を、破砕流体として用いた室内岩石実験を行いました。その結果、これまでの常識を覆し、坑井から多方向に伸びるき裂を造成することに成功しました。 本研究成果は、2025年2月15日付で科学誌International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciencesに掲載されました。 なお本成果は、Zhang Rongchang大学院生、伊藤高敏教授、同大学環境科学研究科の博士後期課程の後藤遼太大学院生(現大成建設)、渡邉則昭教授、末吉和公助教、博士前期課程の詫間康平大学院生(現日立製作所)、宇野正起准教授、同大学学際科学フロンティア研究所博士後期課程の新井裕子大学院生、笘居高明教授、オーストラリア・サンシャインコースト大学のTian Tongfei講師、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の州立職業訓練専門学校であるテイフ・ニューサウスウェールズ のVladimir Sokolovski博士、北海道大学理学部の直井誠准教授との共同研究によるものです。 図:従来の水圧破砕と、STFを用いた水圧破砕のき裂造成状況の比較。従来、き裂は地下の最も大きな応力が作用している方向(最大主応力方向)に進展する。STFを用いた場合は、一時的に固化するSTFにより、坑井の圧力がさらに高くなり、多方向にき裂が造成できた。その結果、多方向の浸透性が改善され、資源開発が効率的に実行できる。 論文情報: タイトル:Creating Multidirectional Fractures through Particle Jamming 著者: Yusuke Mukuhira*, Ryota Goto, Noriaki Watanabe, Kazumasa Sueyoshi, Kohei Takuma, Rongchang Zhang, Tongfei Tian, Vladimir Sokolovski, Makoto Naoi, Yuko Arai, Takaaki Tomai, Masaoki Uno, Takatoshi Ito *責任著者:東北大学流体科学研究所 助教 椋平祐輔 掲載誌:International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences DOI:10.1016/j.ijrmms.2025.106051 URL:https://doi.org/10.1016/j.ijrmms.2025.106051 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/03/press20250304-01-STF.html 東北大学流体科学研究所 https://www.ifs.tohoku.ac.jp/jpn/news/5541/
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研究会等のお知らせ2025.03.06
ハイブリッド開催 / Hybrid Event FRIS Hub Meetingは、FRISの研究者全員が参加する研究発表セミナーで、月に一度、8月を除く毎月第4金曜日に開催しています。Hub Meetingの趣旨は、発表者が全領域の研究者を対象として、研究のイントロと分かりやすい専門的内容の紹介を行い、新テーマ創成の芽を作ることです。2021年1月からは世界で活躍できる研究者戦略育成事業「学際融合グローバル研究者育成東北イニシアティブ(TI-FRIS)」のTI-FRIS Hub Meetingと合同で開催しています。 Hub Meetingでは英語での発表を強く推奨しています。異分野研究者同士では共通の常識や考え方は望めません。参加者は発表中にどんどん質問し、討論し、理解を深めるようにしています。Hub Meeting参加対象(下記)の方は積極的にご参加ください。 【TI-FRISは、弘前大学、岩手大学、東北大学、秋田大学、山形大学、福島大学、宮城教育大学によるコンソーシアム事業です。】 第63回 FRIS Hub Meeting(TI-FRIS Hub Meetingとの合同開催) 日時:2025年3月28日(金)16:00- 開催方式:ハイブリッド開催(オンライン/Zoom・学際科学フロンティア研究所セミナー室) Language: English 参加ご希望の方は、事前登録が必要になります。 参加申し込みフォームよりご登録ください。 登録締切:2025年3月27日(木)15:00 発表者: 熊 可欣 助教 (東北大学学際科学フロンティア研究所/人間・社会) 発表タイトル: Mapping language in mind: Unraveling the mechanisms of lexical processing and learning. ことばの心内地図を描く:語を学び使うメカニズムの解明 発表内容の概要: With over 7,000 languages spoken worldwide, understanding how humans process and acquire language remains a crucial challenge. Language has been extensively studied through an interdisciplinary lens, using methodologies from fields such as psychology to explore its sounds, structures, meanings, and the cognitive mechanisms underlying language use and acquisition in both monolinguals and bilinguals. More recently, neuroscience has provided new insights by incorporating methods for studying brain function. In this seminar, I will present findings that leverage these approaches to examine how Japanese words are processed and learned as a foreign language, offering insights into language comprehension and learning. Hub Meeting参加者 趣旨と守秘義務を理解・了解していることを条件に、以下の方が参加できます。 Hub Meetingメンバー 発表のターゲットとする参加者、アーカイブ視聴対象 ・東北大学学際科学フロンティア研究所教員 ・TI-FRISフェロー オブザーバー Hub Meetingに興味のある下記の参加者(質問・議論にも参加することができます) ・東北大学学際高等研究教育院研究教育院生 ・東北大学教職員・学生 ・TI-FRIS参画大学教職員・学生 ・TI-FRIS関係者(委員会委員等) ・「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」の育成対象者 ・学際研所長/TI-FRISプログラムマネージャーが認めたもの ◆FRIS Hub Meetingについて