トピックス
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お知らせ2025.03.04
3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu」の共用ビームラインのユーザー利用開始に合わせて2025年3月3日に行われたプレス発表に学際科学フロンティア研究所の鈴木博人助教が出席し、公募で選ばれたファーストユーザーとしてインタビューを受けました。鈴木助教はインタビューで「世界で戦える研究環境を整えていただきましたので、最大限活用して世界に負けない研究成果を出していきたいです」と意気込みを語りました。 インタビューの様子は以下の報道でご覧いただけます。 「ナノテラス」 新たな3つの「ビームライン」運用開始(NHKニュース) https://www3.nhk.or.jp/tohoku-news/20250303/6000030422.html 「必ず面白い結果を出したいと思って実験に臨む」次世代放射光施設「ナノテラス」 研究者が”強力な光”使った実験始める(東北放送) https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1763944?display=1 次世代放射光施設ナノテラス 公募で選出された研究者が実験(東日本放送) https://news.yahoo.co.jp/articles/b080fe156bb5639e4ddeab4bf7da9634f29365fb 「ナノテラス」共用利用開始 研究で将来の発展に期待―宮城(時事通信) https://www.jiji.com/jc/article?k=2025030300748&g=soc プレスリリース: NanoTerasuポータルサイト https://nanoterasu.jp/2025/03/nanoterasu共用ビームラインのユーザー利用を開始/
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会議発表・論文・出版2025.02.27
宇宙開発や水素社会などの分野においては、軽量でありながら激しい温度変化に対応できる形状記憶合金の開発が求められています。東北大学学際科学フロンティア研究所の許勝助教、同大学大学院工学研究科貝沼亮介教授、大森俊洋教授、宋雨鑫大学院生(研究当時)らの研究グループは、日本原子力研究開発機構、J-PARCセンター、チェコ科学アカデミーなどとの共同研究により、−269℃の極低温から+127℃の高温までの広い温度範囲で優れた超弾性特性を示す新規軽量形状記憶合金の開発に成功しました。 開発したチタン-アルミニウム基合金は、室温での比重が4.36と従来材より約3割低く、回復変形ひずみは7%を超え、超弾性動作温度幅は約400℃に及びます。激しい温度変化に曝される火星や月などでの利用が可能なほか、液体水素のような極低温環境や生体材料などへの応用も期待されます。 この研究成果は、科学誌Natureに2025年2月26日付で掲載されました。 図:本研究で開発した軽量形状記憶合金。 論文情報: タイトル:A lightweight shape-memory alloy with superior temperature-fluctuation resistance 著者:Yuxin Song#, Sheng Xu#*, Shunsuke Sato, Inho Lee, Xiao Xu, Toshihiro Omori*, Makoto Nagasako, Takuro Kawasaki, Ryoji Kiyanagi, Stefanus Harjo, Wu Gong, Tomáš Grabec, Pavla Stoklasová, Ryosuke Kainuma*(#共同第一著者) *責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教 許勝、東北大学大学院工学研究科 教授 大森俊洋、東北大学大学院工学研究科 教授 貝沼亮介 掲載誌:Nature DOI:10.1038/s41586-024-08583-7 URL:https://www.nature.com/articles/s41586-024-08583-7 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/02/press20250227-04-alloy.html 東北大学大学院工学研究科 https://www.eng.tohoku.ac.jp/news/detail-,-id,3127.html 日本原子力研究開発機構 https://www.jaea.go.jp/02/press2024/p25022701/ J-PARCセンターhttps://www.j-parc.jp/c/press-release/2025/02/27001476.html
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会議発表・論文・出版2025.02.13
東北大学学際科学フロンティア研究所(兼務 大学院理学研究科)の當真賢二教授が参画する国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・コラボレーション」はM87銀河の中心にある巨大ブラックホールの観測を進めており、2017年の観測で巨大ブラックホールの影の撮影に史上初めて撮影に成功したと発表していました(2019年4月)。今回、2017年に加えてその1年後の2018年に行われた観測結果の比較から、巨大ブラックホールについての理解をさらに深めることに成功しました。 本研究では、1年の間に事象の地平面スケールで起こった現象を解析できるようにするため、理論シミュレーション画像を新たに12万枚も追加し、観測結果と照らし合わせました。その結果、M87ブラックホールの自転軸が地球とは反対方向を向いていることを再確認しました。そしてリングの最も明るい場所の変化には、ブラックホールの周囲を回転するガス円盤の乱流が重要な役割を果たしていることを示しました。これはブラックホール周辺の複雑な運動状態を解明する上で大きな前進となります。 本研究成果は欧州の天文学専門誌Astronomy and Astrophysicsに2025年1月22日付けで掲載されました。 図:M87ブラックホールの観測画像(左)と理論画像(中央・右)。 左図:2018年(上)と2017年(下)に行われたEHTの観測で得られたM87ブラックホールの画像。(中央)2つの異なる時間における一般相対論的磁気流体力学(GRMHD)シミュレーションに基づく画像。 右図:中央の画像をEHTの解像度に合うようにぼかした画像。 (画像クレジット:EHT Collaboration) 論文情報: タイトル:The persistent shadow of the supermassive black hole of M87. II. Model comparisons and theoretical interpretations 著者:Event Horizon Telescope Collaboration 掲載誌:Astronomy and Astrophysics DOI:10.1051/0004-6361/202451296 URL:https://www.aanda.org/10.1051/0004-6361/202451296 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/02/press20250213-01-blackhole.html 東北大学大学院理学研究科 https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20250213-13597.html EHT-Japan https://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/c/pr/pr20250122.1.html
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会議発表・論文・出版2025.02.12
生命科学研究や疾患メカニズムの解明には、タンパク質などの微細な動きをミリ秒単位で観察する高い時間分解能が求められます。既存のタンパク質標識は光安定性や明るさに限界があり、このような観察は困難でした。 東北大学学際科学フロンティア研究所の丹羽伸介准教授と北智輝大学院生を中心とした研究チームは、三重大学大学院工学研究科の鈴木勇輝准教授らと共同で、DNAを利用して作られた新しい蛍光標識「FTOB (Fluorescent-labeled tiny DNA origami block)」を開発しました。このFTOBは、従来の標識に比べて光退色や点滅が起きにくく、ALSなどの神経疾患の原因となるタンパク質の動きをミリ秒単位という極めて高い時間分解能で少なくとも数十分の長時間観察することが可能です。また、FTOBは「DNAオリガミ」という技術を用いてブロックのように自由に組み替えられる設計になっており、細胞分裂のような生命現象や、アルツハイマー病やガンといったさまざまな疾患に関わるタンパク質の研究に幅広く応用できる可能性があります。 本成果は、米国東部時間2025年2月11日に学術誌Cell Reports Physical Scienceにオンラインで掲載されました。 図:DNAオリガミ製蛍光標識「FTOB」のデザイン。8.8 nm以内に5つの蛍光色素と一つのタンパク質結合サイトを持つ。一つの角には一本鎖DNAを持ち、これが別のFTOBのそれと相補的に結合することで、二量体を形成する。例として、それぞれのFTOBに別々のキネシンを結合し、FTOBをつなぐことで2種類のキネシンを架橋する実験を行った。 論文情報: タイトル:Modular photostable fluorescent DNA blocks dissect the effects of pathogenic mutant kinesin on collective transport 著者:Tomoki Kita, Ryota Sugie, Yuki Suzuki, Shinsuke Niwa *共同責任著者:三重大学大学院工学研究科 准教授 鈴木勇輝 *責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 准教授 丹羽伸介 掲載誌:Cell Reports Physical Science DOI:10.1016/j.xcrp.2025.102440 URL:https://doi.org/10.1016/j.xcrp.2025.102440 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/02/press20250212-03-dna.html 東北大学大学院生命科学研究科 https://www.lifesci.tohoku.ac.jp/research/results/detail---id-52430.html 三重大学 https://www.mie-u.ac.jp/R-navi/release/cat775/dna-1.html
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お知らせ2025.02.06
「学際融合グローバル研究者育成東北イニシアティブ(TI-FRIS: Tohoku Initiative for Fostering Global Researchers for Interdisciplinary Sciences)」は、令和2年度に「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」に採択され、学際科学フロンティア研究所に事務局(プログラムマネージャー:早瀬敏幸所長、コーディネーター:藤原英明特任准教授、児山洋平特任講師)を置き、世界トップクラスの研究者育成に向けたプログラムと開発その普及・展開を進めています。 この度、取組開始年度より5年目にあたる令和6年度に文部科学省による中間評価を受けました。中間評価の結果、「大学の持つ伝統的な資源を活用した効果的かつ戦略的なモデルとして高く評価」され、最高位である「総合評価:S(卓越した水準にある)」の評価を得ました。 中間評価では、「各大学から様々な分野の研究者が集い、学際的な協働を可能にする場を提供するとともに、図書館や研究設備などの研究インフラの共有、異分野交流の場である Hub Meeting、国際共同研究支援といったプログラム要素を着実に進展させている点」が特に評価されました。 今後、代表機関である東北大学と共同実施機関6大学(弘前大学、岩手大学、秋田大学、山形大学、福島大学、宮城教育大学)との連携強化に加え、東北地方を中心に他大学への普及拡大も図り、全国的なモデルケースとし若手研究者育成の先駆的役割を果たすことが期待されています。 リンク: 学際融合グローバル研究者育成東北イニシアティブ(TI-FRIS) 文部科学省「世界で活躍できる研究者戦略育成事業 評価結果」
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受賞2025.02.06
新領域創成研究部の千葉杏子助教が、第8回 東北大学紫千代萩賞を受賞することが決定しました。また受賞にあたり、国際女性デーを記念したイベントとして開催された受賞講演会で、千葉助教が受賞講演を行います。 本賞は、東北大学において優れた研究を展開する若手女性研究者に対し、その活躍を讃えることで、研究意欲の一層の増進に繋げ、世界トップリーダーとなるような研究人材の育成を目的とするものです。 受賞日:2025年3月13日 第8回東北大学紫千代萩賞受賞講演会 https://dei.tohoku.ac.jp/event/36821/ 男女共同参画推進センター 紫千代萩賞 https://dei.tohoku.ac.jp/news/36823/
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会議発表・論文・出版2025.02.05
細胞は脂質膜に包まれた構造をしており、細胞内小器官の多くも脂質膜で区画化されています。脂質膜は細胞がその機能を発現するための重要な構成要素であると言えます。脂質膜はリン脂質などを用いて、例えば平板電極上に人工的に再構成することができます。これを人工脂質二分子膜といい、細胞膜の機能を分子レベルで評価するのに適したモデルです。しかし、非常に薄い脂質膜(数ナノメートル程度)を観察する方法は限られており、高度な表面分析装置(全反射蛍光顕微鏡や原子間力顕微鏡など)を使用することが一般的でした。 東北大学学際科学フロンティア研究所の平本薫助教、平野愛弓教授(電気通信研究所/材料科学高等研究所)、伊野浩介准教授、珠玖仁教授(大学院工学研究科)のグループは、電気化学発光という現象を利用して、平板電極上に形成した脂質二分子膜を直接イメージングする手法を開発しました。脂質膜を形成した電極の入った溶液中に、ルテニウム錯体とトリプロピルアミンを入れて電圧を印加すると、これらの物質がわずかに脂質膜を透過し、電極表面で反応して発光を生じます(電気化学発光)。発光は電極の極近傍で生じるため、薄い膜でもぼやけることなく可視化することに成功しました。さらに、発光強度や発光の開始電位は、ルテニウム錯体と脂質膜との親和性や静電的相互作用によって変化することを見出し、これを指標に異なる組成の脂質膜を区別できることを示しました。 本研究は脂質膜の新しいイメージング手法を提案するとともに、脂質膜と発光物質の物理化学的な作用について知見を与えるものであり、人工脂質膜を用いた研究の加速につながります。 本研究成果は英国化学会誌『Chemical Communications』誌に2025年2月2日付で掲載されました。また2025 Emerging Investigatorsのコレクションとして掲載されます。 図:電極上の脂質膜をルテニウムビピリジン錯体(Ru2+)とトリプロピルアミン(TPrA)の電気化学発光(Electrochemiluminescence: ECL)を用いて観察する手法を構築。脂質組成によって異なるECL挙動を示す。 論文情報: タイトル:Electrochemiluminescence of [Ru(bpy)3]2+/tri-n-propylamine to visualize different lipid compositions in supported lipid membranes 著者:Kaoru Hiramoto*, Ayumi Hirano-Iwata, Kosuke Ino, Hitoshi Shiku *責任著者:東北大学 学際科学フロンティア研究所 助教 平本 薫 掲載誌:Chemical Communications DOI:10.1039/D4CC06245K URL:https://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2025/CC/D4CC06245K
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会議発表・論文・出版2025.02.04
光と磁石が結合した状態はマグノンポラリトンと呼ばれ、超伝導量子ビットを用いた量子コンピューターの操作に繋がるために、多方面から研究されています。これまでの研究では、金属の箱(マイクロ波にとっての共振器)に磁石を入れ、マイクロ波を当てることで強い結合が実現されてきました。これを超える結合比を持つ極めて強い結合(超強結合、結合比0.1以上)を実現するためには、低温の超伝導体が共振器として用いられています。しかし室温で安定した超強結合マグノンポラリトンを作ることができれば、量子コンピューターの操作を室温で実現できる可能性があります。 東北大学大学院理学研究科の三田健太郎大学院生、同大学学際科学フロンティア研究所(大学院工学研究科兼務)の千葉貴裕助教、同大学高度教養教育・学生支援機構の児玉俊之特任助教と冨田知志准教授(大学院理学研究科兼務)、京都工芸繊維大学電気電子工学系の上田哲也教授、京都大学大学院工学研究科の中西俊博講師、理化学研究所放射光科学研究センターの澤田桂研究員は、金属のらせん構造のカイラルメタ原子と絶縁性の磁石の磁性メタ原子からなる人工構造体、磁気カイラルメタ分子を作製し、マイクロ波に対する応答を調べました。その結果、メタ分子では室温で結合比0.22の超強結合マグノンポラリトンが実現していることが明らかになりました。それのみならず光の透過が表と裏とで異なる方向非相反性も実現していました。本研究では、カイラルメタ原子を共振器としてメタ分子に取り込むことで、金属箱や冷却を必要とせずに、コンパクトで室温動作するマグノンポラリトン媒体の開発に成功しました。 本成果は2025年1月17日、米国物理学会による学術誌Physical Review Appliedに速報論文(Letter)として掲載されました。 図:磁気カイラルメタ分子でのマグノンポラリトンの概念図。外部磁場Hextの元で、磁性体での磁化m(t)の歳差運動とマイクロ波の磁場h(t)が結合し、マグノンポラリトンが生成される。 論文情報: タイトル:Ultrastrongly coupled and directionally nonreciprocal magnon polaritons in magnetochiral metamolecules 著者: Kentaro Mita, Takahiro Chiba, Toshiyuki Kodama, Tetsuya Ueda, Toshihiro Nakanishi, Kei Sawada, Satoshi Tomita* *責任著者:東北大学高度教養教育・学生支援機構(兼務:大学院理学研究科 物理学専攻) 准教授 冨田知志 掲載誌:Physical Review Applied DOI:10.1103/PhysRevApplied.23.L011004 URL:https://doi.org/10.1103/PhysRevApplied.23.L011004 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/02/press20250204-01-magnon.html
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研究会等のお知らせ2025.01.28
ハイブリッド開催 / Hybrid Event FRIS Hub Meetingは、FRISの研究者全員が参加する研究発表セミナーで、月に一度、8月を除く毎月第4金曜日に開催しています。Hub Meetingの趣旨は、発表者が全領域の研究者を対象として、研究のイントロと分かりやすい専門的内容の紹介を行い、新テーマ創成の芽を作ることです。2021年1月からは世界で活躍できる研究者戦略育成事業「学際融合グローバル研究者育成東北イニシアティブ(TI-FRIS)」のTI-FRIS Hub Meetingと合同で開催しています。 Hub Meetingでは英語での発表を強く推奨しています。異分野研究者同士では共通の常識や考え方は望めません。参加者は発表中にどんどん質問し、討論し、理解を深めるようにしています。Hub Meeting参加対象(下記)の方は積極的にご参加ください。 【TI-FRISは、弘前大学、岩手大学、東北大学、秋田大学、山形大学、福島大学、宮城教育大学によるコンソーシアム事業です。】 第62回 FRIS Hub Meeting(TI-FRIS Hub Meetingとの合同開催) 日時:2025年2月28日(金)16:00- 開催方式:ハイブリッド開催(オンライン/Zoom・学際科学フロンティア研究所セミナー室) Language: English 参加ご希望の方は、事前登録が必要になります。 参加申し込みフォームよりご登録ください。 登録締切:2月28日(木)15:00 発表者: 鈴木 博人 助教 (東北大学学際科学フロンティア研究所/先端基礎科学) 発表タイトル: NanoTerasuで切り拓く物性物理学 Physics of quantum materials revealed by advanced spectroscopies at NanoTerasu 発表内容の概要: NanoTerasu, a 3 GeV synchrotron radiation facility, began operation in the spring of 2024 at the Aobayama campus of Tohoku University. The high-brilliance X-ray light produced by the synchrotron is now being utilized across a wide range of applications, encompassing basic sciences and industrial research. These applications include studies in physics, chemistry, energy materials, functional devices, and biological specimens. In this seminar, I will present the latest developments in spectroscopic techniques at NanoTerasu and their applications in condensed matter physics research. Special emphasis will be on the resonant inelastic X-ray scattering (RIXS) developed at the beamline BL02U, along with the first results obtained from quantum materials. Hub Meeting参加者 趣旨と守秘義務を理解・了解していることを条件に、以下の方が参加できます。 Hub Meetingメンバー 発表のターゲットとする参加者、アーカイブ視聴対象 ・東北大学学際科学フロンティア研究所教員 ・TI-FRISフェロー オブザーバー Hub Meetingに興味のある下記の参加者(質問・議論にも参加することができます) ・東北大学学際高等研究教育院研究教育院生 ・東北大学教職員・学生 ・TI-FRIS参画大学教職員・学生 ・TI-FRIS関係者(委員会委員等) ・「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」の育成対象者 ・科学記者 ・学際研所長/TI-FRISプログラムマネージャーが認めたもの ◆FRIS Hub Meetingについて
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会議発表・論文・出版2025.01.24
低環境負荷の観点から、化石資源に依存しないバイオマス資源を用いた樹脂開発は、持続可能な社会の実現につながります。植物や木材から誘導される基礎化学原料は石油由来のものとは異なる分子構造を持ち、バイオマス由来特有の物性が期待されますが、この構造の複雑さゆえに、樹脂を合成する際の重合反応におけるモノマーの配列は無秩序、またはその精密制御が難しいという課題が残されていました。 東北大学学際科学フロンティア研究所の田原淳士助教、同大学大学院薬学研究科の谷代省吾大学院生と土井隆行教授らの研究グループは、九州大学先導物質化学研究所の工藤真二准教授、星光PMC株式会社の外城稔雄氏らと共同で、木材や廃紙から製造可能なバイオマス化合物「レボグルコセノン(LGO)」をモノマーの一つとして用いる、分子鎖が精密に配列された新しいバイオベースポリマーの合成に成功しました。このポリマーは高耐熱性、旋光性、耐水性といった機能面と水中での分解性というサステナビリティを兼ね備えており、次世代の石油代替樹脂としての応用が期待されます。 本成果は 2025年1月22日付で、英国王立化学会発行の学術誌 Polymer Chemistry に掲載されました。また学術誌の表紙(Front Cover)への採択が予定されています。 図:本研究ではLGO を用いた精密配列されたポリマーの合成に成功した。ポリマーは白色固体で、無色透明のフィルムへの加工も可能である。 論文情報: タイトル:Stereoselective Polycondensation of Levoglucosenone leading to Water-Degradable Biopolymers 著者:Atsushi Tahara*, Shogo Yashiro, Toshio Hokajo, Shinji Kudo, Yuta Yoshizaki, Tomohiro Konno, Takayuki Doi *責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教 田原淳士 掲載誌:Polymer Chemistry DOI:10.1039/D4PY01094A URL:https://doi.org/10.1039/D4PY01094A プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/01/press20250124-01-bio.html 東北大学大学院薬学研究科 http://www.pharm.tohoku.ac.jp/file/information/20250124.pdf