トピックス
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会議発表・論文・出版2025.05.16
環境負荷の観点から、CO2排出量の削減および資源利用が産学問わず求められています。CO2から誘導されるギ酸塩は高温条件で二量化し、植物などにも含まれる有機酸であるシュウ酸となることが知られています。しかし二量化反応の過程で生成したシュウ酸の熱分解を伴うため、効率的な二量化を達成するための反応条件の探索が求められていました。 東北大学学際科学フロンティア研究所の田原淳士助教は、九州大学先導物質化学研究所の工藤真二准教授、林潤一郎教授らと共同で、CsOHを添加した際に高収率でシュウ酸が生成することを見出しました。得られたシュウ酸は還元剤として利用可能であり、特に鉄鉱石から還元鉄を得る製鉄法において、コークスを還元剤とする現行法と比較して大幅なCO2排出量の低下が可能な次世代還元剤としての利用が期待されます。 本成果は 2025 年 4 月 23 日付で、科学誌Frontiers in Chemistryの「Renewable Chemistry」特集号に掲載されました。 図:二酸化炭素からの誘導体であるギ酸塩を用いたシュウ酸合成において、水酸化セシウムを添加すると収率が向上することを見出した。 【論文情報】 タイトル:Effect of alkali metal cations on dehydrogenative coupling of formate anions to oxalate 著者:Atsushi Tahara*, Aska Mori, Jun-ichiro Hayashi, Shinji Kudo *責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教 田原淳士 掲載誌:Frontiers in Chemistry DOI:10.3389/fchem.2025.1588773 URL:https://doi.org/10.3389/fchem.2025.1588773 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/05/press20250516-01-co2.html
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会議発表・論文・出版2025.05.16
次世代の形状記憶合金として期待されるCu-Al-Mn系形状記憶合金は、原料が安価で加工しやすく、良好な超弾性を発現することから、耐震用構造材料や医療用デバイスなど幅広い分野での応用が期待されています。近年、この合金を単結晶化すると大きな形状回復を示すことが報告されていましたが、そのメカニズムは明らかとなっていませんでした。 長崎大学大学院総合生産科学研究科の赤嶺大志准教授(前九州大学大学院総合理工学研究院 助教)と、九州大学大学院総合理工学府修士2年の高松凌氏(研究当時。現株式会社デンソー)、九州大学の西田稔名誉教授、東北大学学際科学フロンティア研究所の許勝助教、東北大学大学院工学研究科の大森俊洋教授、貝沼亮介教授、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターの二宮翔助教、西堀麻衣子教授、株式会社古河テクノマテリアル(神奈川県平塚市、花谷健社長)の喜瀬純男博士らの共同研究グループは、電子顕微鏡観察と放射光X線回折測定を通じて、単結晶Cu-Al-Mn合金では多段階のマルテンサイト変態(注4)が生じていることを明らかにしました。また、この多段階のマルテンサイト変態が進行すると、相変態に伴うエネルギー吸収量が増大することがわかりました。 本研究の成果は、相変態の制御を通じてCu-Al-Mn系形状記憶合金のエネルギー吸収性能を自在に制御できる可能性を示すもので、制振材料や耐震用の土木・建築用材料等への幅広い応用が期待されます。 この成果は、2025年4月15日(米国時間)に材料科学分野の専門誌Acta Materialia誌にオンライン公開されました。 図:透過電子顕微鏡による結晶構造変化の観察結果 【論文情報】 タイトル:Successive stress-induced phase transformations with large stress-strain hysteresis in single crystal Cu-Al-Mn shape memory alloys 著者:Hiroshi Akamine, Ryo Takamatsu, Sheng Xu, Toshihiro Omori, Ryosuke Kainuma, Sumio Kise, Kakeru Ninomiya, Maiko Nishibori, Minoru Nishida 掲載誌:Acta Materialia DOI: 10.1016/j.actamat.2025.121054 URL: https://doi.org/10.1016/j.actamat.2025.121054 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/05/press20250516-02-metal.html 東北大学大学院工学研究科 https://www.eng.tohoku.ac.jp/news/detail-,-id,3213.html 東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター https://www.sris.tohoku.ac.jp/research/detail---id-194.html
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研究会等のお知らせ2025.05.13
オンサイト開催(一部オンライン) 日時 / 2025年5月19日 (月) 13:30~ 会場 / 学際科学フロンティア研究所 セミナー室 教育院生及び学際研関係者の方は申込不要です。 口頭発表者は以下の通りです。 1.當真 賢二「生命の発生と進化の物理学」 Physics for the Birth and Evolution of Life 2.青栁 拓志「シンプルで強力なDNA複製のエラー抑制メカニズム -バイオ技術への応用を見据えてー 」 A Simple and Robust Error Suppression Mechanism in DNA Replication — Toward Applications in Biotechnology — 3.福嶋 一期 「パソコンしかない研究室で環境影響を考えるということ」 Thinking About Environmental Impact in a Computer-Only Laboratory なお、プログラムの時間配分は変更する場合がありますので、予めご了承下さい。 抄録集.pdf 問い合わせ先 学際高等研究教育院 総合戦略研究教育企画室 @ ■全領域合同研究交流会について
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会議発表・論文・出版2025.05.12
我々の住む宇宙は宇宙線と呼ばれる高エネルギーの陽子や原子核で満たされています。しかし、それらがどこで、どのように加速されているのかはまだよくわかっていません。過去に発生した超新星爆発の名残である超新星残骸が最も有力な宇宙線加速場所の候補であり、超新星爆発の際に放出された物質と星間ガスが衝突して生じる衝撃波で宇宙線が加速されると考えられています。近年の超新星爆発の観測から、超新星爆発の際には周囲に非常に濃い星周物質が存在することが明らかとなりました。この星周物質と爆発の際に放出された物質が衝突して衝撃波を形成し、そこで宇宙線が加速されると、宇宙線が濃い星周物質と衝突してガンマ線やニュートリノを生成します。これらのガンマ線やニュートリノを観測することができれば、宇宙線の加速場所や加速機構を明らかにできる可能性があります。 東北大学学際科学フロンティア研究所の木村准教授と国立天文台の守屋助教の研究チームは、超新星爆発が濃い星周物質と相互作用した際に生じるニュートリノ・ガンマ線放射を新たな手法で計算し、2023年に近傍銀河で発生した超新星爆発、SN 2023ixf へと適用することで宇宙線の生成効率に関して制限をつけることに成功しました。研究チームはSN 2023ixfの可視光の観測データと一致する星周物質や超新星爆発の放出物質の構造を輻射流体シミュレーションを用いて求め、そのシミュレーションデータを用いてガンマ線・ニュートリノ放射を計算する手法を構築しました。その手法でニュートリノ・ガンマ線放射を計算した結果、宇宙線の生成効率が10%以上の場合には現状のガンマ線望遠鏡で未検出であったデータと矛盾してしまうことがわかりました。今後、この手法を複数の超新星爆発に適用することで衝撃波における宇宙線の生成効率を明らかにできると期待されます。 本研究結果は天文学の専門誌 The Astrophysical Journal に2025年5月2日付で掲載されました。本論文は『東北大学2025年度オープンアクセス推進のためのAPC支援事業』の支援を受け、Open Accessとなっています。 図:回転花火銀河に現れた超新星SN 2023ixf。 Credit:International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA Image Processing: J. Miller (Gemini Observatory/NSF NOIRLab), M. Rodriguez (Gemini Observatory/NSF NOIRLab), M. Zamani (NSF NOIRLab), T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab) & D. de Martin (NSF NOIRLab). 論文情報 タイトル:High-energy gamma-ray and neutrino emissions from interacting supernovae based on radiation hydrodynamic simulations: a case of SN 2023ixf 著者:Shigeo S. Kimura, Takashi J. Moriya 掲載誌:The Astrophysical Journal DOI:10.3847/1538-4357/adc716 URL:https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/adc716 プレスリリース: 国立天文台科学研究部 https://sci.nao.ac.jp/main/highlights/highlight20250507
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研究会等のお知らせ2025.05.07
ハイブリッド開催 / Hybrid Event セミナー「海洋性珪藻の特殊な葉緑体を作る構造と機能」 会場:東北大学学際科学フロンティア研究所(1Fセミナー室) 及び オンライン 主 催:東北大学学際科学フロンティア研究所 Oraganizer:奥村正樹 准教授(okmasak*tohoku.ac.jp)*を@に変えてください。 講演者:松田祐介 教授(関西学院大学・生命環境学部) 海洋性珪藻類は、特に高緯度域の海洋に繁栄しており、リモートセンシング衛星観測による推計では、地球上の光合成の約20%を占めるとされる。珪藻は緑藻を葉緑体化した後に紅藻型葉緑体に“換装”した複雑な二次共生を経て、約2億年前に成立した二次共生藻である。葉緑体包膜構造は4重で、ストロマの中心にはCO2固定化酵素Rubiscoが相分離したピレノイドを持ち、陸上植物とは全く異なる葉緑体構造を有している。ピレノイドは中心部に1~2層の貫通チラコイド様膜(PPT)を持ち、PPTでは、その内腔に特異的に局在するθ型炭酸脱水酵素によって、ストロマに溜め込んだHCO3-をCO2に変換してRubiscoにかけ流しのように供給する。この“CO2発生マシナリ構造”により珪藻は効率の高い光合成が可能である。ピレノイドのこの構造形成に関わる分子はこれま で全く知られていなかった。我々のグループは、光アミノ酸感光架橋技術を用いて珪藻ピレノイドを生体内で“その場”固定し、Rubiscoと相互作用してピレノイド覆うように局在する未知因子を発見し、Pyrenoid+Shel(l PyShell)と名付けた。このタンパク質の一つを精製し、試験管内で濃縮したところ、シートやチューブ様の構造体を自己組織化した。この構造体をクライオ電子顕微鏡観察し、その周期性をサブトモグラム平均化後、単一粒子解析したところ、PyShell同士がC末端突出を介して、表裏を入れ子にしながら互いに90°に配向して、チューブを作ることが分かった。さらに、クライオ電子トモグラム(CET)を用いて生体内のピレノイドを観察したところ、PyShellと考えられるシートがピレノイドを覆っていることを確認した。主要なPyShellをゲノム編集で破 壊したところ、珪藻は大気レベルCO2での生育が難しくなり、光合成効率は野生株の1/80程度まで極端に落ちてしまった。さらに、CET観察によりPyShellとピレノイド構造の消失が確認された。PyShellは水圏光合成の効率を維持するための葉緑体構造形成に必須な構造タンパク質であることが明らかとなった。 参考文献:Shimakawa G…Matsuda et. al. (2024) Cell 187(21): 5919-5934, e19, https://doi.org/10.1016/j.cell.2024.09.013
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研究会等のお知らせ2025.05.02
ハイブリッド開催 / Hybrid Event FRIS Hub Meetingは、FRISの研究者全員が参加する研究発表セミナーで、月に一度、8月を除く毎月第4金曜日に開催しています。Hub Meetingの趣旨は、発表者が全領域の研究者を対象として、研究のイントロと分かりやすい専門的内容の紹介を行い、新テーマ創成の芽を作ることです。2021年1月からは世界で活躍できる研究者戦略育成事業「学際融合グローバル研究者育成東北イニシアティブ(TI-FRIS)」のTI-FRIS Hub Meetingと合同で開催しています。 Hub Meetingでは英語での発表を強く推奨しています。異分野研究者同士では共通の常識や考え方は望めません。参加者は発表中にどんどん質問し、討論し、理解を深めるようにしています。Hub Meeting参加対象(下記)の方は積極的にご参加ください。 【TI-FRISは、弘前大学、岩手大学、東北大学、秋田大学、山形大学、福島大学、宮城教育大学によるコンソーシアム事業です。】 第65回 FRIS Hub Meeting(TI-FRIS Hub Meetingとの合同開催) 日時:2025年5月23日(金)16:00- 開催方式:ハイブリッド開催(オンライン/Zoom・学際科学フロンティア研究所セミナー室) Language: English 参加ご希望の方は、事前登録が必要になります。 参加申し込みフォームよりご登録ください。 登録締切:2025年5月22日(木)15:00 発表者: 松林 英明 助教 (東北大学学際科学フロンティア研究所/生命・環境) 発表タイトル: 発表タイトル:“作る”生命科学で挑む生物の起源・運動・進化/Decoding Life through Synthesis: Origins, Motility, and Evolution 発表内容の概要: What if we could build life from scratch? Synthetic biology and artificial cell research pursue this bold vision by reconstructing biological systems from the bottom up. Through this constructive approach, we investigate how cells first acquired functional proteins on their surfaces, and how they developed the remarkable dynamic capabilities of motility, deformation, and division. Furthermore, we are beginning to explore how our synthetic methodology might illuminate the evolutionary transition from prokaryotes (relatively simple cells like bacteria) to eukaryotes (more complex cellular forms). I will discuss our latest discoveries and outline future directions for this interdisciplinary endeavor that bridges molecular biology, engineering, and evolutionary science. Hub Meeting参加者 趣旨と守秘義務を理解・了解していることを条件に、以下の方が参加できます。 Hub Meetingメンバー 発表のターゲットとする参加者、アーカイブ視聴対象 ・東北大学学際科学フロンティア研究所教員 ・TI-FRISフェロー オブザーバー Hub Meetingに興味のある下記の参加者(質問・議論にも参加することができます) ・東北大学学際高等研究教育院研究教育院生 ・東北大学教職員・学生 ・TI-FRIS参画大学教職員・学生 ・TI-FRIS関係者(委員会委員等) ・「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」の育成対象者 ・学際研所長/TI-FRISプログラムマネージャーが認めたもの ◆FRIS Hub Meetingについて
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会議発表・論文・出版2025.04.30
超伝導とは、ある特定の温度以下で金属の電気抵抗がゼロになり、電気がスムーズに流れるようになる現象です。多くの超伝導体はおよそ−200℃以下という非常に低い温度でしかこの性質を示さないため、より高い温度で超伝導を示す物質が望まれる一方、超伝導の発現機構と超伝導転移温度を高める指針は解明されていません。電気の流れや振動を詳しく調べることで、これらの課題を解決する手がかりが得られる可能性があります。 東北大学学際科学フロンティア研究所の鈴木博人助教らの研究グループは、量子科学技術研究開発機構(QST)NanoTerasuセンター、兵庫県立大学、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構などとの共同研究により、−163℃で超伝導を示す銅酸化物超伝導体のプラズマ振動の性質を解明しました。測定には、軟X線領域の放射光を試料に照射し、跳ね返ってきた光のエネルギーを調べる共鳴非弾性X線散乱(RIXS)を用いました。本研究は高温超伝導の発現機構に知見を与えるとともに、QSTがNanoTerasuの共用ビームラインにて開発したRIXS装置の世界最高水準の性能を実証するものです。 この研究成果は、米国物理学会が発行する学術誌Physical Review Bに2025年4月21日付で掲載されました。 図:本研究で測定した三層系銅酸化物Bi2Sr2Ca2Cu3O10の結晶構造。超伝導が発現する二次元的なCuO2面が三枚ずつ積み重なる構造を持つ。 論文情報: タイトル:Out-of-phase Plasmon Excitations in the Trilayer Cuprate Bi2Sr2Ca2Cu3O10+δ 著者: S. Nakata, M. Bejas, J. Okamoto, K. Yamamoto, D. Shiga, R. Takahashi, H. Y. Huang, H. Kumigashira, H. Wadati, J. Miyawaki, S. Ishida, H. Eisaki, A. Fujimori, A. Greco, *H. Yamase, D. J. Huang, and *H. Suzuki *責任著者:物質・材料研究機構 主幹研究員 山瀬博之 *責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教 鈴木博人 掲載誌:Physical Review B DOI:10.1103/PhysRevB.111.165141 URL:https://doi.org/10.1103/PhysRevB.111.165141 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/04/press20250430-03-plasmon.html 東北大学多元物質科学研究所 https://www2.tagen.tohoku.ac.jp/lab/news_press/20250430-plasmon/ 量子科学技術研究開発機構 https://www.qst.go.jp/site/press/20250430.html 産業技術総合研究所 https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250430_3/pr20250430_3.html 物質・材料研究機構 https://www.nims.go.jp/press/2025/04/202504300.html
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受賞2025.04.25
新領域創成研究部の田原淳士助教が、2025年3月26日(水)~29日(土)に関西大学で開催された日本化学会第105春季年会(2025)において、「若い世代の特別講演会」(第39回)の講演者に選出され、特別講演証を授与されました。 受賞題目: 非古典的な立体選択性で進行するバイオマス化合物への付加反応の開発と創薬科学・材料科学への応用 「若い世代の特別講演会」は、日本化学会が若い世代の研究者を励まし、次代の化学および化学技術をさらに活性化するため、意欲的に研究を行っている若手研究者に”特別講演”の機会を与えるものです。 日本化学会 第39回若い世代の特別講演会 https://www.chemistry.or.jp/event/conference/young-scholar.html#39
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会議発表・論文・出版2025.04.22
「物質だけの太古の地球において、生命はなぜ発生し、なぜ複雑な機能を持つように進化したのか?」というのは、基本的で興味深い問いであり、生物学、化学や地球科学などにおいてそれぞれの異なるアプローチで精密な実験を駆使し研究されています。一方で、物質の構造や動きの様々な側面を単純な原理で説明しようとする物理学では、20世紀に相対性理論を創始したアルバート・アインシュタインや量子力学を創始したエルヴィン・シュレディンガーが熱力学に基づく生命の理解を主張しましたが、近年はあまり議論されなくなっていました。 東北大学学際高等研究教育院の沢田康次名誉教授、公益財団法人がん研究所の大学保一プロジェクトリーダー(研究開始当時:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教)、東北大学学際科学フロンティア研究所の當真賢二教授は、開放系非平衡熱力学の「最大エントロピー生成原理」が生命の発生や進化の謎を理解する基本的な概念になることを提唱し、様々な文献を挙げながら議論を展開しました。これによれば、物質の世界で高分子が自己複製を始めたこと、細胞集団や生物個体集団が分化して組織を作ることは単位時間あたりのエントロピー生成が最大になる現象として理解できます。 本研究は、非線形物理学の研究者、分子遺伝学の研究者、宇宙物理学の研究者による学際的な成果となりました。本研究の学説はチャールズ・ダーウィンの適者生存の概念に対する科学的原理となる可能性があります。また、人類が技術を発展させ、大量のエネルギーを消費することについて同じ原理の下で理解を試みています。そして植物の種子や過酷な環境における動物の非常に遅いエントロピー生成の状態を参考にして、地球温暖化の影響を受ける人類の未来を考察することも提案しています。 この研究成果は国際オープンアクセス学術雑誌『Entropy』誌に2025年4月21日付で掲載されました。 論文情報: タイトル:Maximum Entropy Production Principle of Thermodynamics for the Birth and Evolution of Life 著者:Yasuji Sawada, Yasukazu Daigaku, and Kenji Toma 掲載誌:Entropy DOI: 10.3390/e27040449 URL: https://doi.org/10.3390/e27040449
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受賞2025.04.09
学際科学フロンティア研究所先端学際基幹研究部の島津武仁教授が『令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)』を、新領域創成研究部の齋藤勇士准教授と鈴木博人助教が、『令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞』を受賞することが決定しました。 科学技術賞(研究部門)は我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究又は発明を行った個人又はグループに、若手科学者賞は萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者個人に対して、文部科学大臣より授与されるものです。 それぞれの受賞対象の業績は以下の通りです。 科学技術賞(研究部門): 島津武仁 教授「無機薄膜を用いたウエハの室温接合技術に関する研究」 若手科学者賞: 齋藤勇士 准教授「革新的ハイブリッドロケットの推進性能解明に関する研究」 鈴木博人 助教「共鳴非弾性X線散乱による量子物質の素励起の研究」 表彰式は、2025年4月15日(火)に文部科学省にて行われます。 写真:科学技術賞(研究部門)を受賞する島津武仁教授(左)と、若手科学者賞を受賞する齋藤勇士准教授(中央)と鈴木博人助教(右)。 2025年4月15日(火)に行われた表彰式にて。(4月17日追記) 文部科学省: 令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者の決定等について https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01503.html 東北大学: 令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰の受賞について https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/04/award20250408-mext.html