トピックス
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研究会等のお知らせ2025.10.02
ハイブリッド開催 / Hybrid Event 本シンポジウムでは、ソーシャルロボットのガバナンスにおけるAI倫理標準の活用について議論します。特に、AI技術の規制において、急速な立法プロセスに追いつけないことによる課題に焦点を当てます。また、ソーシャルロボットの規制を検討することに加えて、倫理的設計の観点から、利害関係者が倫理的、法的、社会的影響 (ELSI) のリスクを確実に管理できるよう、拘束力のない柔軟な AI 倫理基準に基づく規制の枠組みについても探求しています。 参加ご希望の方は、GoogleFormにて参加登録をお願いいたします。 締切:11月3日 開催日時: 2025年11月5~7日 各日9:30-17:00 会場: 東北大学 学際科学フロンティア研究所 セミナー室 主催: 九州大学高等研究院 東北大学学際科学フロンティア研究所 共催: IEEE Robotics and Automation Society TC on Robot Ethics IEEE Society on Social Implications of Technology グレイトブリテン・ササカワ財団 台湾ソーシャルロボット学会 国立台湾大学人文情報学研究センター 九州大学法学府国際コース国際関係法専攻 東北大学工学研究科機械・知能系平田研究室 ヤギェウォ大学法学部刑法学科 オスロ大学大学院情報科学研究科 ノースフロリダ大学大学院政治学研究科 セント・アンドルーズ大学大学院情報科学研究科 理化学研究所革新知能統合研究センター科学技術と社会チーム Website: https://2025.roboethics.design// LinkedIn: https://www.linkedin.com/events/ias-frissymposiumonsocialrobots7379026824103649280/ お問い合わせ / Contact 東北大学学際科学フロンティア研究所 翁岳暄 @
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会議発表・論文・出版2025.09.19
東北大学学際科学フロンティア研究所の藤原英明特任准教授は、「すばる望遠鏡」の運用初期に得られた観測結果に基づき発表された論文の学術的影響を分析した研究を発表しました。すばる望遠鏡は、ハワイ島・マウナケア山頂域に設置された口径8.2メートルの光学赤外線望遠鏡で、国立天文台が運用する日本を代表する天文学観測施設です。 本研究は、1996年から2007年に発表された天文学分野の論文を対象に、引用指標を用いた計量書誌学的手法で評価したものです。分析の結果、すばる望遠鏡に基づく論文は日本全体の論文数の1割未満であったにもかかわらず、被引用数の高さなどが際立ち、世界平均を大きく上回る学術的インパクトを示したことが明らかになりました。これは、日本が進めてきた大型研究施設の学術的価値を定量的に示す成果です。 本研究成果は、2025年9月17日付で学術誌Publications of the Astronomical Society of Japanに掲載されました。 論文情報: タイトル:A bibliometric analysis of the scholarly impact of early Subaru Telescope-based publications 著者:Hideaki Fujiwara* *責任著者:東北大学 学際科学フロンティア研究所 特任准教授 藤原英明 掲載誌:Publications of the Astronomical Society of Japan DOI:10.1093/pasj/psaf100 URL:https://academic.oup.com/pasj/advance-article/doi/10.1093/pasj/psaf100/8256513
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研究会等のお知らせ2025.09.19
ハイブリッド開催 / Hybrid Event 2025年9月29日(月)に医工学セミナー「International Symposium on Advances in Biomedical Engineering Devices」を開催いたします。 開催概要は下記のとおりです。 参加ご希望の方は、下記GoogleFormにて参加登録をお願いいたします。 締切:9月26日(金)12:00 開催日時: 2025年9月29日(月) 13:30~16:00 会場:東北大学 学際科学フロンティア研究所 セミナー室 概要 The "International Symposium on Advances in Biomedical Engineering Devices" will bring together researchers and professionals to discuss emerging technologies shaping the future of healthcare. The symposium will highlight innovations in smart biomedical systems, portable diagnostic platforms, and non-invasive sensing techniques. Emphasis will be placed on how these advancements are moving from laboratory research to real-world applications, addressing challenges such as infectious disease detection and metabolic monitoring. By fostering interdisciplinary dialogue among engineers, clinicians, and scientists, the symposium aims to inspire collaboration and promote the development of accessible, reliable, and impactful biomedical solutions for global health. 主催者情報: 東北大学学際科学フロンティア研究所 参加登録はこちらから(締切9/26) https://forms.gle/Scnew9b8QGWtoGEb6 参加対象:東北大学関係者およびACT-X [強靱化ハードウェア] 関係者 参加登録用QRコード Timetable 1:30 pm ~ 1:40 pm -Opening 1:40 pm ~ 2:40 pm -Prof. Chen-zhong Li, Chinese University of Hong Kong, Shenzhen, China (Keynote Speaker) Title: Smart Biomedical Devices for Diagnosis and Treatment (Presentation: 50 min, Q&A 10 min) 2:40 pm ~ 2:50 pm Break time 2:50 pm ~ 3:20 pm -Dr. Shan Liu, University of Electronic Science and Technology, China (Invited Speaker) Title: Field-Ready Microfluidic Integration of Lyophilized RPA/CRISPR and Visual LFA for Infectious Disease Detection (Presentation: 25 min, Q&A 5 min) * Online 3:20 pm ~ 3:50 pm -Dr. Kenta Iitani, Institute of Science Tokyo, Japan (Invited Speaker) Title: Biosensing transdermal acetone to monitor lipid metabolism (Presentation: 25 min, Q&A 5 min) 3:50 ~ 4:00 pm -Closing and Networking Oraganizer: 阿部博弥 准教授(hiroya.abe.c4*tohoku.ac.jp) * を@に変えてください。
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研究会等のお知らせ2025.09.11
ハイブリッド開催 / Hybrid Event FRIS Hub Meetingは、FRISの研究者全員が参加する研究発表セミナーで、月に一度、8月を除く毎月第4金曜日に開催しています。Hub Meetingの趣旨は、発表者が全領域の研究者を対象として、研究のイントロと分かりやすい専門的内容の紹介を行い、新テーマ創成の芽を作ることです。2021年1月からは世界で活躍できる研究者戦略育成事業「学際融合グローバル研究者育成東北イニシアティブ(TI-FRIS)」のTI-FRIS Hub Meetingと合同で開催しています。 Hub Meetingでは英語での発表を強く推奨しています。異分野研究者同士では共通の常識や考え方は望めません。参加者は発表中にどんどん質問し、討論し、理解を深めるようにしています。Hub Meeting参加対象(下記)の方は積極的にご参加ください。 【TI-FRISは、弘前大学、岩手大学、東北大学、秋田大学、山形大学、福島大学、宮城教育大学によるコンソーシアム事業です。】 第68回 FRIS Hub Meeting(TI-FRIS Hub Meetingとの合同開催) 日時:2025年9月26日(金)16:00- 開催方式:ハイブリッド開催(オンライン/Zoom・学際科学フロンティア研究所セミナー室) Language: English 参加ご希望の方は、事前登録が必要になります。 参加申し込みフォームよりご登録ください。 登録締切:2025年9月25日(木)15:00 発表者: LAM Pui Ying 助教 (秋田大学/生命・環境/TI-FRIS Fellow) 発表タイトル: 植物特化代謝とバイオテクノロジー/Plant specialized metabolism and biotechnologyio 発表内容の概要: Plants produce a diverse array of specialized metabolites, including flavonoids and lignin, which are crucial for plant physiology and beneficial to human activities. Flavonoids are health beneficial when consumed, whereas lignin is a key component of plant lignocellulosic biomass used for the sustainable production of fuels, chemicals, and materials in biorefineries, which can contribute to reducing the reliance on fossil resources. To better utilize plants for various applications, understanding the biosynthesis and physiological roles of these metabolites is essential. In this seminar, I will give a brief introduction to plant science, specialized metabolism, and biotechnology. I will also introduce my research on biosynthesis and bioengineering of flavonoids and lignin. Hub Meeting参加者 趣旨と守秘義務を理解・了解していることを条件に、以下の方が参加できます。 Hub Meetingメンバー 発表のターゲットとする参加者、アーカイブ視聴対象 ・東北大学学際科学フロンティア研究所教員 ・TI-FRISフェロー オブザーバー Hub Meetingに興味のある下記の参加者(質問・議論にも参加することができます) ・東北大学学際高等研究教育院研究教育院生 ・東北大学教職員・学生 ・TI-FRIS参画大学教職員・学生 ・TI-FRIS関係者(委員会委員等) ・「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」の育成対象者 ・学際研所長/TI-FRISプログラムマネージャーが認めたもの ◆FRIS Hub Meetingについて
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会議発表・論文・出版2025.09.05
【概要】 ウナギなどの細長い魚は、脊髄が損傷した後も泳ぐことができ、水中だけでなく陸上も移動できる優れた運動能力を持っています。東北大学学際科学フロンティア研究所の安井浩太郎助教、電気通信研究所の鈴木朱羅助教、石黒章夫教授は、公立はこだて未来大学の加納剛史教授、オタワ大学のEmily M. Standen准教授、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のAstha Gupta大学院生、Auke J. Ijspeert教授らとの共同研究により、この驚異的な運動能力を生み出す神経回路メカニズムの解明に取り組みました。 研究グループは、身体に備わる「伸展感覚」と「圧力感覚」の二つの感覚フィードバック注1を統合した神経回路モデルを提案し、このモデルが水中遊泳と障害物がある陸上移動の両方に有効であることをシミュレーション・ロボット実験により世界で初めて実証しました。また、脊髄損傷後のウナギの遊泳能力に関する新たな仮説として、身体に分散した神経回路が自発的なリズムを生み出せるならば感覚フィードバックを活用して自然に泳ぎ続けられることを提唱しました。本研究成果は、動物の運動制御の原理解明に貢献するとともに、タフに動くロボットの開発への応用が期待されます。 本研究成果は、学術誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America に2025年8月18日付けで掲載されました。 【詳細な説明】 研究の背景 ウナギなどの細長い魚類は、身体を波状にうねらせる運動によって移動します。このうねり運動は自然界で様々な動物種が採用する最も普遍的な運動様式の1つです。特に、ウナギは、運動の制御を担う脊髄が一部損傷しても水中を泳げたり、でこぼこした陸上でも移動できるという優れた運動能力を示します。 こうした適応的な運動は、脊髄内の中枢パターン発生器(CPG)注2と呼ばれる神経回路網によって制御されていることが知られています。CPGは感覚入力がなくても基本的な運動リズムを生成できますが、状況に応じた運動の実現には、身体が環境から得られる様々な感覚情報のフィードバックによる運動調整が重要であると考えられています。 これまでのうねり運動に関する研究では、伸展感覚(筋肉の伸びを感知する感覚)や圧力感覚(表皮の圧力を感知する感覚)などの感覚フィードバックが運動時のCPGの活動を調整することが示唆されてきました。しかし、これら複数の感覚フィードバックが組み合わさった場合にどのような運動能力が発現するのかは、動物の生体を用いて実験的に計測することが技術的に困難なため、十分に解明されていませんでした。 今回の取り組み 本研究では、ウナギなどの細長い魚類の運動制御メカニズムを理解するため、神経回路を数理モデル化し、その神経回路モデルから生み出される運動をシミュレーション・ロボット実験により検証するアプローチを採用しました(図1)。 まず、伸展感覚と圧力感覚の二つの感覚フィードバックを統合した神経回路を数理モデル化しました。このモデルでは、身体の各体節に運動リズムを生成する神経回路(CPGに相当)を仮定し、それらが伸展感覚と圧力感覚のフィードバックによって自律的に調整される仕組みを表現しました。 次に、提案した神経回路モデルの妥当性を検証するため、コンピュータシミュレーションとロボットを用いた実験を行いました。水中での遊泳実験では、安定した遊泳パターンを迅速に生成できることを確認しました。特に、伸展感覚フィードバックが、この運動の生成に貢献していることを発見しました。さらに、障害物が多数配置された陸上環境での実験を行い、水中遊泳用と同じ神経回路が陸上移動にも有効であることを実証しました。特に、伸展感覚フィードバックが、障害物を活用した推進力の獲得に重要な役割を果たすことが明らかとなりました。 本研究では、ウナギの脊髄を身体中央部で切断する実験に対応したシミュレーション・ロボット実験を行うことで、脊髄切断後も遊泳能力を維持できるメカニズムを調べました。その結果、身体に分散した神経回路に自発的なリズム生成能力が一定程度存在すれば、提案した複数感覚のフィードバックが機能することで、脊髄切断箇所の前後の身体運動が協調した遊泳が生み出されることが分かりました。 今後の展開 本研究の成果は、動物の運動制御の原理解明に貢献するとともに、環境変化や身体損傷に対してタフに動くロボットの開発への応用が期待されます。特に、多感覚フィードバックを活用した制御手法は、水中・陸上・不整地といった多様な環境で適応的に動き回ることのできるロボットの実現に資すると期待されます。また、脊髄損傷後の運動能力に関する知見は、生物学的な観点から興味深いだけでなく、脳による制御に依存しない分散型の運動制御システムの設計原理としても応用できる可能性があります。 水中遊泳用の神経回路が陸上移動にも有効であるという発見は、進化の過程で水中から陸上への進出が新たな神経回路を必要とせずに実現できた可能性を示唆しています。したがって、この知見は脊椎動物の運動制御の進化的起源の理解にも貢献する可能性があります。 図1. 本研究の概要。(A) ウナギなどの細長い魚類を模した身体および神経回路のモデルの概観図。(B)開発したウナギ型ロボットのCADイメージ図。(C) 提案モデルが動物の運動を再現しうるかをシミュレーション実験やロボット実験を通じて検証するアプローチを本研究では採用。(D)検証に用いた多様な神経回路の構成。 【関連動画】 Summary movie of the paper by Yasui & Gupta et al. in PNAS (2025) https://youtu.be/-9v5MbU0ySM 【謝辞】 This project has received funding from Human Frontier Science Program (grant RGP0027/2017) and the European Research Council (grant agreement, No 951477). This work was supported by the JSPS KAKENHI (Grant Number JP23KK0072, JP23K13349). 【用語説明】 注1. 感覚フィードバック:生物が身体の感覚をもとに環境や自身の状態を検知し、その感覚情報に基づいて運動を調整する仕組み。 注2. 中枢パターン発生器(CPG):歩行や遊泳などの運動におけるリズミックなパターンを生み出すことができる神経回路網を指し、脊椎動物では脊髄に存在する。 【論文情報】 タイトル:Multisensory feedback makes swimming circuits robust against spinal transection and enables terrestrial crawling in elongate fish 著者:Kotaro Yasui*, Astha Gupta*, Qiyuan Fu, Shura Suzuki, Jeffrey Hainer, Laura Paez, Keegan Lutek, Jonathan Arreguit, Takeshi Kano, Emily M. Standen, Auke J. Ijspeert, Akio Ishiguro *責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教 安井浩太郎 *責任著者:スイス連邦工科大学ローザンヌ校 Astha Gupta (博士課程学生) 掲載誌:Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS) DOI:https://doi.org/10.1073/pnas.2422248122 URL:https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2422248122 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/09/press20250905-01-robot.html 公立はこだて未来大学 www.fun.ac.jp/press_release#pr15
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お知らせ2025.08.27
学際科学フロンティア研究所の中安祐太助教(人間・社会領域)は、未利用資源を活用した材料開発やエネルギー自給を軸とするエコライフスタイルの確立を目指し、独創的な学際研究を展開しています。このたび、中安助教が参画する大船渡山林火災の被害木の利活用へ向けた活動が複数メディアで紹介されました。 2025年2月に発生した同山林火災では、国内最大規模となる約3370ヘクタールが被害を受けました。被災した山林の復旧には、焼け焦げるなどの被害を受けた被害木の活用が課題とされています。 この課題の解決へ向けて、林業関係者、大学、県などが協力し、被害木活用へ向けた調査活動が行われました。地球環境の変化により、今後国内でも大規模な山林火災の発生が懸念される中、今回の取り組みは、災害復旧と資源循環の両面において重要な知見を提供するものとして注目されています。中安助教は、「建築資材としての活用可能性を確認し、(資材として)活用できない場合でも、どのような活用方法があるのかを考えていきたい」とコメントしました。 【FNNプライムオンライン】 https://www.fnn.jp/articles/-/914002 【NHK】 https://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/20250807/6040026663.html 【TBS NEWS DIG】 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2095685 【日テレNEWS】 https://news.ntv.co.jp/category/society/tvdea0b476b8f646178701834cec9ddfda 【河北新報オンラインニュース】 https://kahoku.news/articles/20250810khn000023.html
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会議発表・論文・出版2025.08.22
スピントロニクスの発展により、強磁性体を用いた不揮発性メモリー(磁気抵抗メモリー:MRAM)の社会実装が進展し、半導体集積回路の高機能化・省エネ化に貢献しています。一方で近年、基礎研究の領域では、全体としては磁力を持たない磁性材料である反強磁性体が注目されています。これまでこの反強磁性体の強磁性体との類似点や相違点が様々な角度から調べられてきましたが、強磁性体に対する工学的な優位性は明らかではありませんでした。 このたび東北大学、物質・材料研究機構及び日本原子力研究開発機構からなる研究チームは、スピンが渦巻状に並んだカイラル反強磁性体Mn3Snを用いて、半導体応用で重視される動作速度に関して、反強磁性体の強磁性体に対する優位性を実証しました。具体的には、Mn3Snをナノメートルサイズに微細化することで、反強磁性体特有の現象である「電流印加によるスピン構造のコヒーレント回転」を超高速で自在に制御できることを明らかにし、その上で高効率な書き込み動作を0.1ナノ秒という強磁性体を凌駕する時間スケールで実現しました。 この制御方式は外部からの磁場を必要とせず、再現性にも優れることから、「スピン半導体」の大幅な機能向上に繋がるものと期待されます。 今回の研究成果は、2025年8月21日(米国時間)付で科学誌Scienceに掲載されました。研究チームには学際科学フロンティア研究所の山根結太准教授が責任著者として参加しています。 図:(a) カイラル反強磁性体ナノドット素子の高速制御実験の模式図。(b) 今回作製したナノドット素子の観察画像。 【論文情報】 タイトル:“Electrical coherent driving of chiral antiferromagnet” (カイラル反強磁性体の電気的コヒーレント駆動) 著者: Yutaro Takeuchi*, Yuma Sato, Yuta Yamane*, Ju-Young Yoon, Yukinori Kanno, Tomohiro Uchimura, K. Vihanga De Zoysa, Jiahao Han, Shun Kanai, Jun’ichi Ieda, Hideo Ohno, and Shunsuke Fukami* *責任著者:物質・材料研究機構 磁性・スピントロニクス材料研究センター 研究員竹内祐太朗、東北大学 学際科学フロンティア研究所 准教授 山根結太、同学電気通信研究所 教授 深見俊輔 掲載誌:Science DOI:10.1126/science.ado1611 URL: http://www.science.org/doi/10.1126/science.ado1611 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/08/press20250822-01-spin.html 東北大学 東北大学電気通信研究所 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/08/press20250822-01-spin.html
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お知らせ2025.08.04
学際科学フロンティア研究所の佐藤伸一准教授(国際卓越PI)らにより開発されたタンパク質修飾剤 「MAUra-Azide」 が試薬として販売されました。発展途上とされてきたタンパク質化学修飾分野の研究推進および産業技術の発展を大幅に加速することが期待されます。 タンパク質化学修飾技術の重要性と現状の課題 タンパク質は20種類のアミノ酸からなる生体分子で、抗体などのバイオ医薬品の主成分です。タンパク質を化学的に修飾する技術は、ADC(抗体薬物複合体:がん細胞を狙い撃ちする次世代医薬品)開発の中核技術であり、医療材料開発や生体内タンパク質の解析にも不可欠です。 しかし、現在の技術による選択的かつ高効率な化学修飾が可能なアミノ酸は、リジン残基とシステイン残基(20種類中2種類のアミノ酸)に限られており、残り18種類のアミノ酸の修飾法は発展途上とされてきました。 MAUra-Azideの革新的特徴 佐藤准教授らは、ラジカル種や一重項酸素種(高い反応性を持つ化学種)を活用することで、従来困難とされてきたアミノ酸残基の修飾を実現するMAUra-Azideの開発に成功しました。この化合物は以下の2つの特徴を持ちます: 1. チロシン残基の選択的修飾 一電子酸化条件下でラジカル化し、チロシン残基を選択的に修飾します。 2. ヒスチジン残基の選択的修飾 一重項酸素発生条件下で、酸化されたヒスチジン残基を選択的に修飾します。 また、azide基(アジド基)はclick反応(2022年ノーベル化学賞の対象となった効率的な化学結合反応)の足掛かりとなる構造として知られており、蛍光性や精製タグなど、任意の機能を導入することが可能です。タンパク質修飾に寄与する「MAUra」構造に「アジド基」を導入した本化合物の活用により、タンパク質に様々な機能を導入できます。 MAUra-Azideの実用化による波及効果 MAUra-Azideの実用化により、チロシン・ヒスチジン残基修飾技術は、世界中の研究者が容易に利用可能な技術となります。アミノ酸修飾戦略の広範化により、ADCなどの次世代バイオ医薬品や医療材料開発における設計自由度が大幅に向上します。また、高い選択性を備えた修飾技術は、ケミカルバイオロジー分野に有用な新たな手法を提示しています。バイオ医薬品、診断技術、バイオマテリアル分野での革新的応用が期待され、特に精密医療の発展において、重要な技術基盤となることが予想されます。MAUra-Azideを活用した世界中の研究により、タンパク質工学の新時代を築く重要技術の創出が期待されます。 本記事に関する参考資料 製品ホームページ: https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/M3978 酵素を使った温和な反応条件によるチロシン残基修飾 https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2024/cc/d4cc03802a 容易に調整できるラジカル種を使ったチロシン残基修飾 https://www.tetrahedron-chem.com/article/S2666-951X(24)00050-0/fulltext チロシン残基を狙った部位特異的抗体修飾 と 蛍光免疫センサーの開発 https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.bioconjchem.0c00120 https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2021/cc/d1cc03231c 光増感剤を使ったヒスチジン残基修飾 https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/jacs.1c01626 反応条件の選択によるチロシン/ヒスチジン残基の選択性制御 https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscatal.2c05946 https://www.mdpi.com/1422-0067/23/19/11622
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会議発表・論文・出版2025.08.01
自然科学研究機構 生命創成探究センター/分子科学研究所/総合研究大学院大学の岡本泰典 准教授(東北大学 学際科学フロンティア研究所 客員准教授)、東北大学 流体科学研究所の馬渕拓哉 准教授、産業技術総合研究所の氷見山幹基 主任研究員らのグループは共同で、ヒトサイトカインに人工的な金属構造の三核亜鉛中心を移植し、外来性機能として高い加水分解活性とヒトサイトカインが元来有する内在性機能の両方を持つ人工酵素の創製に成功しました。 移植された三核亜鉛構造は、自然界には見られないものであり、先行研究では、有機合成化学的に精密設計された配位子を用いて構築されています。多核金属中心の構築には、金属イオンの精密な多点配置が必要です。研究グループは、幾何学的探索と量子化学計算を用いることで、タンパク質を、従来の有機合成配位子と同等の精度で、配位子として利用できることを実証しました。 自然界には、現在の有機合成化学的手法では困難な高度物質変換を行っている多核金属中心を有する酵素があります。本研究成果は、天然の高機能性酵素に倣ったグリーンな物質変換技術につながることが期待できます。また、今回移植先としたサイトカインは生体内の様々な現象に応答することから、本研究により創製されたサイトカインベースの人工酵素は、生命現象適応型ケミカルツールとしての発展が期待されます。 本研究成果は、国際科学雑誌Nature Communicationsにて(日本時間2025年07月31日18時解禁)オンライン掲載されました。また本研究の一部は、東北大学学際科学フロンティア研究所に設置された学際研協働的研究環境(FRIS CoRE)において実施されました。 図:内在性機能と外来性機能を併せ持つ人工酵素 内在性機能と外来性機能を有する人工三核亜鉛酵素(左)および設計構造と実験構造の重ね合わせ(右)。 【論文情報】 タイトル:A Cytokine-based Designer Enzyme with an Abiological Multinuclear Metal Center Exhibits Intrinsic and Extrinsic Catalysis 著者:Akiko Ueno#, Fumiko Takida#, Tomoki Kita, Takuro Ishii, Tomoki Himiyama*, Takuya Mabuchi*, and Yasunori Okamoto* (#共筆頭著者、*責任著者) 掲載誌:Nature Communications DOI:10.1038/s41467-025-61909-5 URL:https://doi.org/10.1038/s41467-025-61909-5 プレスリリース: 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/08/press20250801-01-ion.html 東北大学 流体科学研究所 https://www.ifs.tohoku.ac.jp/jpn/news/5970/ 自然科学研究機構 生命創成探究センター https://www.excells.orion.ac.jp/news/12579 学際研協働的研究環境(FRIS CoRE): https://www.fris.tohoku.ac.jp/fris_core/
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受賞2025.08.01
新領域創成研究部の安井浩太郎助教は、国際会議The 12th International Symposium on Adaptive Motion of Animals and Machines (AMAM2025)においてBest Oral Presentation Awardを受賞しました。 発表題目:"Decoding the Interplay Between Central and Peripheral Control for Versatile Locomotor Repertoire in Centipedes" 著者:Kotaro Yasui, Emily M. Standen, Takeshi Kano, Hitoshi Aonuma, Akio Ishiguro 受賞日:2025年7月11日 AMAM2025のウェブサイト: https://www.tu-darmstadt.de/lokoassist/home_lokoassist/news_und_events_lokoassist/amam25/amam25.en.jsp