東北大学
学際科学フロンティア研究所

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ブラックホールの電波ジェットへのプラズマの供給機構を発見 ─ ブラックホールが駆動する短時間のフレア現象 ─

2022年9月29日『The Astrophysical Journal Letters』誌に論文掲載、およびプレスリリース

2022.09.30

宇宙に存在するブラックホールからは、電波ジェットと呼ばれるほぼ光速で運動するプラズマ噴出流からの電波信号が観測されています。しかし、ブラックホール近傍では物質はブラックホールへと落ち込んでしまうため、電波放射に必要なプラズマを電波ジェットへと供給する機構は大きな謎となっています。
 
東北大学学際科学フロンティア研究所(大学院理学研究科兼務)の木村成生助教と當真賢二准教授らの研究チームは、ブラックホール近傍で磁気エネルギーが効率的に高エネルギーの光子へと変換されるフレア現象が発生すると考えて理論モデルを作り、フレアの際に放射される高エネルギーの光子同士が相互作用して効率的に電波ジェットへとプラズマが供給され、電波ジェットの観測から要求されるプラズマの供給量を説明することに初めて成功しました。
 
過去に提案されてきた理論モデルと比べ、今回のメカニズムでは10万倍以上もの量のプラズマを電波ジェットへと供給できます。この理論モデルでは、私たちの住む天の川銀河の中心の超巨大ブラックホールSgr A*からの電波ジェットは暗くて現在の装置では観測できず、初めてブラックホールの画像が撮られた巨大楕円銀河M87からは強力な電波ジェットが観測されることを自然に説明できます。Sgr A*やM87のブラックホールが駆動するフレアからの高エネルギー光子は次世代のX線観測衛星によって検出可能であり、将来のX線天文学によって電波ジェットの謎の解明が期待されます。

この研究成果は米国の天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal Letters』誌に2022年9月29日に掲載されました。


図:電波ジェットへのプラズマの供給機構の概念図。左側に降着プラズマと電波ジェットを含む広域図、右側にブラックホール近傍の詳細図を示している。ブラックホール表面付近で磁気リコネクションによりエネルギーが解放され、高エネルギーへと加速された電子がガンマ線を放射する。放射されたガンマ線同士が上空で電子・陽電子対を生成し、電波ジェットへとプラズマを供給する。(クレジット:當真賢二)

論文情報:
Shigeo S. Kimura(東北大学), Kenji Toma(東北大学), Hirofumi Noda(大阪大学), Kazunori Hada(国立天文台)
The Astrophysical Journal Letters
"Magnetic Reconnection in Black-Hole Magnetospheres: Lepton Loading into Jets, Superluminal Radio Blobs, and Multi-wavelength Flares"
DOI: 10.3847/2041-8213/ac8d5a
https://doi.org/10.3847/2041-8213/ac8d5a
東北大学大学院理学研究科
https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20220930-12294.html
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