東北大学
学際科学フロンティア研究所

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クラゲ類の受精卵における初の遺伝子ノックダウン法 ~非モデル動物の遺伝子機能を解析する新規研究プラットフォーム~

2022年9月30日『Scientific Reports』誌に論文掲載、および10月7日プレスリリース

2022.10.07

海中を漂うプランクトンであるクラゲ類は、イソギンチャクやサンゴと同じ刺胞動物門に属し、動物の発生や行動の進化を理解する上で重要な研究対象です。これまでの刺胞動物を用いた細胞や分子レベルの研究では、一部のポリプ型の動物を中心に展開されてきたこともあり、メデューサのステージをもつクラゲ類に特徴的な生命現象の分子レベルの理解はあまり進んでいませんでした。その理由として、マイクロインジェクションによる胚操作が困難であったことが挙げられます。
 
東北大学学際科学フロンティア研究所の中嶋悠一朗博士(研究当時・助教、現・東京大学大学院薬学系研究科・講師)は、小澤(増田)ときは博士(研究当時・学術研究員、現・生命科学研究科)、生命科学研究科大学院生の冨士田壮佑氏、倉永英里奈教授らとともに、クラゲ類の初期胚の遺伝子を効率よく、かつシステマティックに発現抑制(ノックダウン)する手法を確立しました。
 
研究グループは、複数種のヒドロ虫綱クラゲの受精卵を使って、RNAi法による遺伝子発現の抑制(ノックダウン)に成功しました。本研究で確立した手法は、クラゲ類だけでなく他の海産無脊椎動物にも適用可能な手法であり、初期胚の遺伝子機能を解析する上で大変有用と考えられます。

本研究成果は、国際科学誌『Scientific Reports』 に2022年9月30日に掲載されました。


モデルクラゲであるクリティアと非モデルクラゲのエダアシクラゲ。本研究では、これらの受精卵を使って、RNAi法による遺伝子ノックダウンを導入することに成功した。

論文情報:
Tokiha Masuda-Ozawa, Sosuke Fujita, Ryotaro Nakamura, Hiroshi Watanabe, Erina Kuranaga, and Yu-ichiro Nakajima*
Scientific Reports 12, Article number: 16049 (2022)
"siRNA-mediated gene knockdown via electroporation in hydrozoan jellyfish embryos"
DOI: 10.1038/s41598-022-20476-1
https://doi.org/10.1038/s41598-022-20476-1
 
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