東北大学
学際科学フロンティア研究所

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太陽フレア・原始星フレアにおける非熱的放射理論モデルを新たに構築

2023年2月27日『The Astrophysical Journal』誌に論文掲載

2023.03.06

我々に最も近い恒星である太陽では、太陽フレアと呼ばれる爆発現象が観測されています。太陽フレアはさまざまな波長の電磁波が突発的に増光する現象です。規模の大きな太陽フレアでは高エネルギーのガンマ線も検出されていますが、その生成機構はよくわかっていません。また、生まれたばかりの恒星である原始星でも突発的にX線で明るく輝く原始星フレアが観測されていますが、その発生機構は未解明です。原始星の周囲は多くの塵を含む物質で取り囲まれており、可視光線やX線は強く減光されてしまいます。そのため、それらの波長帯の観測だけで原始星フレアの全容を解明することは難しいと考えられます。
 
東北大学学際科学フロンティア研究所の木村助教、大阪大学の高棹助教、東北大学大学院理学研究科の富田准教授は、現在の太陽フレアの標準的な磁気リコネクションシナリオに基づいて、太陽フレアでの宇宙線生成とガンマ線放射過程の理論モデルを構築しました。この理論モデルでは、太陽フレアの際に生成された宇宙線陽子がX線を放射しているプラズマと相互作用してガンマ線が放射されます。予言されたガンマ線放射は、太陽フレアで観測されているガンマ線データと整合的です。
 
また、その理論モデルを原始星フレアへと適用した結果、原始星フレアで観測されているX線データを再現しつつ、近い将来に完成するガンマ線望遠鏡で原始星からのガンマ線を検出できる可能性を見出しました。さらに、原始星フレアからは現行の観測装置で検出可能な明るいミリ波放射が生じることを予言しました。ガンマ線やミリ波は塵による減光の影響を受けづらいため、原始星の観測に好都合です。近い将来、これらの波長帯で原始星を長期間観測することで、原始星フレアの駆動機構や星形成環境下での宇宙線生成過程が明らかとなることが期待されます。

この研究成果は米国天文学会発行の天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal』誌に2023年2月27日付で掲載されました。


図:今回新たに構築した太陽フレア・原始星フレアにおける非熱的放射理論モデルの模式図。

論文情報:
Shigeo S. Kimura, Shinsuke Takasao, & Kengo Tomida
“Modeling Hadronic Gamma-Ray Emissions from Solar Flares and Prospects for Detecting Nonthermal Signatures from Protostars”
The Astrophysical Journal, 944, 192
DOI:10.3847/1538-4357/acb649
https://doi.org/10.3847/1538-4357/acb649
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