東北大学
学際科学フロンティア研究所

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大型台風に巻き込まれた海鳥の様子を報告

2023年11月9日『Ecology』オンライン版掲載

2023.11.20

新領域創成研究部の塩見こずえ助教は、外洋を長距離移動する海鳥が台風に巻き込まれて通常とは大きく異なる経路・速度・高度で移動していた様子を報告する論文を発表しました。
 
オオミズナギドリCalonectris leucomelasは、東アジアの島々で巣を作り繁殖する鳥です。餌は海で取り、少なくとも成鳥は陸の上を飛ぶことはありません。しかし大きな台風が通過した後は、内陸に落鳥したオオミズナギドリが住宅街などで保護されることが時々あります。おそらく強風に負けて飛ばされてしまったのだと考えられます。
 
本論文では、台風に巻き込まれたものの、内陸への落鳥をギリギリのところで回避したと思われるオオミズナギドリ1羽の移動経路を新たに報告しました。
 
塩見助教は、2019年8月、伊豆諸島御蔵島で繁殖するオオミズナギドリ14個体にGPSロガーを装着しました。そしてその翌月の9月8日、大型台風(FAXAI)が御蔵島の西側を通過して本州に上陸しました。この時、GPS個体のうちの1羽が台風とともに本州上空を移動している様子が記録されていました。夜23時頃から朝8時頃まで、通常の飛行時にはありえない速度と高度(注)でぐるぐると回り、最終的には台風とともに海へと抜けて生き延びたようです(図)。
 
 

図 [左] 台風に巻き込まれたオオミズナギドリの飛行経路と台風の経路(灰色線)
    [右] 台風巻き込まれ期間の速度と高度の時系列データ
(Shiomi 2023 Ecologyより改変)
 
1羽のみのデータではありますが、台風回避の失敗(落鳥)と成功の境界線ぎりぎりの行動を記録した貴重な例だと、塩見助教は考えています。気候変動に伴って勢力の強い台風が増加している、そして今後増加していくことがいくつかの研究で示されています。そのようなイレギュラーな気象イベントが野生動物にどのような影響をもたらしうるのかを理解するためにも、今回報告したような行動データの蓄積が重要です。
 
本成果は、2023年11月9日付で『Ecology』誌のオンライン版に掲載されました。

(注) 通常は時速30〜40km程度で水面近くを飛んでいることが多いのに対して、「台風巻き込まれ期」は最大時速170km・最大高度4700mでした。

論文情報:
タイトル:Swirling flight of a seabird caught in a huge typhoon high over mainland Japan
著者:Kozue Shiomi (corresponding author)
掲載誌:Ecology
DOI: 10.1002/ecy.4161
URL: https://doi.org/10.1002/ecy.4161
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