東北大学
学際科学フロンティア研究所

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活動銀河核からコロナ由来のガンマ線放射の兆候を発見:ブラックホール近傍で生成されるガンマ線とニュートリノ

2024年1月31日『The Astrophysical Journal Letters』 誌に論文掲載

2024.02.02

宇宙にある銀河の中心には太陽の100万倍から100億倍程度の質量を持った超巨大ブラックホールがあることが知られています。これらの超巨大ブラックホールへと多量の物質が落ち込むことで膨大な重力エネルギーを解放し、様々な波長で明るく輝く天体を活動銀河核と呼びます。近年、近傍の活動銀河NGC 1068から高エネルギーのニュートリノが放射されているという証拠が発見され、超巨大ブラックホール周囲で起きる高エネルギー現象が注目を集めています。
 
ペンシルベニア州立大学の村瀬准教授、NASA ゴダード宇宙飛行センターのKarwin研究員、東北大学学際科学フロンティア研究所の木村助教らの研究チームは、X線で明るく輝く近傍の活動銀河、NGC 4151、NGC 4945, Circinus銀河の3天体に対して高エネルギー放射を調べました。そのうちNGC 4151からは高エネルギーニュートリノ信号の兆候も報告されています。研究チームはフェルミ宇宙望遠鏡のデータを再解析し、NGC 4151からのガンマ線強度に厳しい上限値を与えました。また、NGC 4945からはこれまでに報告されていたガンマ線に加え、より低エネルギーでガンマ線信号を検出しました。Circinus銀河については過去のガンマ線検出の報告と整合的な結果となりました。
 
研究チームでは、超巨大ブラックホール周囲のコロナと呼ばれる高温プラズマ中で宇宙線陽子が磁場と相互作用して高エネルギーまで加速され、周囲の物質や光子と相互作用してニュートリノとガンマ線が同時に放射される理論モデルを提唱しています。この理論モデルをこれらの3天体に適用した結果、今回の解析で得られたNGC 4151のガンマ線強度の上限値は宇宙ニュートリノ信号の兆候と整合的に説明できることがわかりました。
 
今回の解析で発見されたNGC 4945からの低エネルギーのガンマ線信号もコロナからの高エネルギー放射によって理論的に説明でき、仮説が正しければ近い将来のニュートリノ観測で検出できます。コロナモデルはCircinums銀河からのガンマ線とニュートリノのデータとも整合的です。いずれの天体についても、将来のガンマ線観測衛星による比較的低エネルギーでのガンマ線観測が重要であり、マルチメッセンジャー観測の更なる進展を強く後押しする結果と言えます。
 
これらの研究成果は米国天文学会発行の天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal Letters』誌に2024年1月31日付で掲載されました。
 

図:ブラックホール近傍のイメージ図。ブラックホール周囲の高温プラズマからX線、ガンマ線、ニュートリノなどの高エネルギー粒子が放射される。(クレジット:ESA)

論文情報:
著者:Kohta Murase, Christopher M. Karwin, Shigeo S. Kimura, Marco Ajello, and Sara Buson
雑誌:The Astrophysical Journal Letters, 2024, 961, L34
表題:“Sub-GeV Gamma Rays from Nearby Seyfert Galaxies and Implications for Coronal Neutrino Emission”
DOI: 10.3847/2041-8213/ad19c5
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