東北大学
学際科学フロンティア研究所

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非水系溶媒でのタンパク質の機能化手法を開発:タンパク質の機能を損なわない迅速なトリプシン残基修飾

2024年2月29日『Journal of the American Chemical Society』誌に論文掲載

2024.03.01

タンパク質に人工的な機能を導入するバイオコンジュゲーション技術は近年、目覚ましい成長を遂げている。バイオコンジュゲーション技術の核となるのは、目的のタンパク質と標識試薬の間に共有結合を形成する化学反応である。これまでの研究では、タンパク質の立体構造を損なわないようにバッファーなどの水系溶媒中で進行する化学反応を利用してきた。このようなアプローチでは、リジン残基、システイン残基のような反応性の高いアミノ酸残基を修飾することは比較的容易であるが、トリプトファン残基のような一般に反応性の低いアミノ酸残基の修飾は困難な課題であった。
反応性の低いアミノ酸残基を修飾するために使用される高反応性化学種は、水系溶媒においては、水分子の反応性が高いため、クエンチされてしまい、適用可能な有機化学反応の範囲が著しく制限されている。一方で、これまで、バイオコンジュゲーション反応とタンパク質の安定化の両方を促進する代替反応溶媒を発見する努力はほとんどなされていない。
 
ノースカロライナ州立大学の大畠潤助教授、Zibo Li教授、Elon A. Ison教授、東北大学学際科学フロンティア研究所の佐藤伸一助教らの研究チームは、タンパク質のαヘリックスを安定化するヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、イオン液体といった非水系溶媒での新規バイオコンジュゲーション技術を追求した。ルイス酸を触媒とするカチオン種の発生条件によって、迅速かつ、トリプトファン残基選択的なバイオコンジュゲーション法を開発することに成功した。
非水系溶媒でのバイオコンジュゲーション技術は従来のプロセスでは利用できなかった多くの化学反応の活用を可能にし、タンパク質化学をさらに進歩させることが期待できる。
 
これらの研究成果はアメリカ化学会発行の総合化学誌『Journal of the American Chemical Society』誌に2024年2月29日付で掲載されました。
 
 
論文情報:
タイトル:Hexafluoroisopropanol as a Bioconjugation Medium of Ultrafast Tryptophan-Selective Catalysis
著者:Mohammad Nuruzzaman, Brandon M. Colella, Chiamaka P. Uzoewulu, Alissa E. Meo, Elizabeth J. Gross, Seiya Ishizawa, Sravani Sana, He Zhang, Meredith E. Hoff, Bryce T. W. Medlock, Emily C. Joyner, Shinichi Sato, Elon A. Ison, Zibo Li, and Jun Ohata
DOI: 10.1021/jacs.3c13447
URL: https://doi.org/10.1021/jacs.3c13447
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