東北大学
学際科学フロンティア研究所

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堅固で低温でも充放電可能な岩塩型構造の正極材料の提案 資源豊富なマグネシウムを使用する蓄電池の実現に貢献

2024年3月15日『Journal of Materials Chemistry A』誌に論文掲載および3月14日プレスリリース

2024.03.18

資源として豊富なマグネシウム(Mg)を用いるマグネシウム蓄電池(Rechargeable Magnesium Battery: RMB)は、安価で安全・高容量な次々世代蓄電池として期待されています。RMBの実現には、Mgを円滑に挿入・脱離できる正極材料が必要ですが、Mgは固体中を移動しにくいことが高性能な正極材料の開発を阻んでいました。例えば、これまでに提案されてきたスピネル型構造の正極材料では、Mgの移動を促進するために150℃まで加熱する必要がありました。またMgを挿入することで、スピネル型構造からMgの移動がより困難な岩塩型構造に変化し、実質的に利用可能な容量が目減りした結果、電極が劣化することが問題でした。
 
東北大学金属材料研究所の河口智也助教と市坪哲教授、学際科学フロンティア研究所の下川航平助教らは、Mg以外に6種類の金属元素を混合することで、Mgの移動を促す空間を安定かつ大量に含む岩塩型構造の新たな正極材料を開発しました。岩塩型構造はMgの挿入・脱離が困難とされていましたが、90℃とこれまでよりも低い温度で挿入・脱離が実現できることを実証しました。広範囲にわたり容易に入手可能なMgを用いた蓄電池が実現すれば、資源を巡る国際的競争の緩和など、持続可能な社会の実現への貢献が期待されます。
 
本成果は2024年3月15日10:00(英国時間)に、エネルギーに関する専門誌『Journal of Materials Chemistry A』にオンラインで公開されました。


図:マグネシウム蓄電池の概念図。リチウムイオン電池と同様に、Mgが正極と負極間を電解液を介して移動することで、蓄電池として作動する。従来型のリチウムイオン電池と大きく異なるのは、リチウムイオン電池では黒鉛が使用されていた負極材料に、容量が大きいマグネシウム金属を用いる点である。

論文情報:
タイトル:Securing cation vacancies to enable reversible Mg insertion/extraction in rocksalt oxides
著者: Tomoya Kawaguchi,* Masaya Yasuda, Natsumi Nemoto, Kohei Shimokawa, Hongyi Li, Norihiko L. Okamoto, and Tetsu Ichitsubo*
*責任著者:東北大学金属材料研究所 助教 河口智也、教授 市坪哲
掲載誌:Journal of Materials Chemistry A
DOI:10.1039/D3TA07942B
URL:https://pubs.rsc.org/doi/D3TA07942B

プレスリリース:
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