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「学際研究で蘇る東北の豪族達」・併設展示「知の交差点:異分野との出会いから続く未来への道」開催
2024.07.23
令和6年5月25日(土)〜29日(水)、せんだいメディアテーク1Fオープンスクエアにて、学際科学フロンティア研究所新領域創成研究部の波田野悠夏助教が中心となって企画した展示「学際研究で蘇る東北の豪族達」及び併設展示「知の交差点:異分野との出会いから続く未来への道」を開催しました。
企画展示では、異なる分野の専門知識や方法論を組み合わせ、広い視野で新しい知見を見いだす学際研究の1例として、考古学・人類学・遺伝学・理化学的解析といった最新の研究手法を駆使し甦った東北地方の古墳時代の女王や王とされる人物についての波田野助教らの研究成果を紹介しました。具体的には、山形県戸塚山古墳137号墳墓より出土した女性人骨と福島県灰塚山古墳出土の男性人骨と比較し、顔の形の他に遺伝情報や食べていたものなど、二人の共通点をパネルやCG動画などを通して紹介しました。
また、普段は図書館で借りることの難しい遺跡の報告書を自由に読める読書コーナーや、SONY空間ディスプレイなどで骨から顔が出来るまでの立体像や全身フォログラムによる新しい展示技術の紹介、複製された骨の模型や、全身骨を自由に触って観察できるコーナも用意し体験型の展示を目指しました。頭の骨を組み立てられるコーナーでは、特に子供達の関心を引き、家族連れに楽しんでいただきました。
写真1:展示会外観
併設展示では、学際研で毎月行われているHub Meetingの歴代ポスターや、MITテクノロジーレビュー「Innovators Under 35 Japan 2023」を受賞した学際研の阿部博弥准教授の微生物燃料電池、中安祐太助教の再生可能エネルギーデバイスを目指した里山の活動を展示しました。また、「実験室をのぞいてみよう」と題したVR(Virtual Reality)展示として、分野横断型研究環境FRIS CoREの仮想現実体験のコーナーも設けました。最新のデバイス技術により普段若手研究者が過ごしている環境を疑似体験してもらうことが可能となり、FRIS CoREの活動や仕組みを広く知っていただけました。
写真2:併設展示「知の交差点:異分野との出会いから続く未来への道」当日の様子
期間中の土曜日・日曜日・水曜日には、展示企画に関連した学術講演も開催しました。土曜日の講演では50名、日曜日の講演では40名、最終日の水曜日の講演では定員60名に対し満員御礼の講演会となりました。日曜日には、学際研の岡本泰典助教と松林英明助教が司会となり、学際研の若手研究者8名が「なぜ研究者を目指したのか?なぜその研究をしているのか?」をテーマにディスカッションを行いました。市民の方からは、幼少期の生活やノーベル賞についての質問も受け、若手研究者の生態を、笑いを交えながら研究者達がお答えしました。
写真3:学術講演「研究者になるってどんな感じ? -世界を変える仕事への旅人-」の演者(岡本泰典・松林英明・市之瀬敏晴・中安祐太・安井浩太郎・齋藤勇士・波田野悠夏・村越ふみ)。
講演の音声ファイルを公開しています(https://drive.google.com/drive/folders/1k01-cTnbHwnvd7uMRxgJJP1CwC2k0uOU?usp=share_link)。
本展示には全期間で1228名にご来場頂きました。約500名から頂いたアンケート回答のうち、80%の方は学際研を「知らない」としていましたが、そのうちの95%以上から「今回の展示を通して研究所の活動を知るきっかけとなった」との回答をいただきました。
このような展示会は学内の施設で行われることが多いのですが、プラスアルファのアプローチをめざし、仙台市図書館と同一建物内であるせんだいメディアテークでの本展示を開催したことが来場者数に繋がりました。せんだいメディアテークを観光目的で訪れる県外の方々や外国人留学生にも展示をご覧いただけたことも、予想外の成果でした。また、VRや空間ディスプレイによるデジタルを活用した展示は非常に好評で、新しい展示企画を通すことで、広く興味を持っていただけた貴重なケースとなりました。
本展示を通して、学際研にて、どのような若手研究者が日々どのような環境で、どのような研究を行っているのか、活動を広く市民の皆様に知っていただけるような展示になりました。アンケートでは「もっとこのような市民参加型の展示企画や学術講演を増やしてほしい」という声を多数いただきました。今後も研究成果に関する積極的なアウトリーチを目指します。
写真4:VR展示様子「FRIS CoRE ってどういうところ?実験室をのぞいてみよう」