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ミトコンドリア局在タンパク質の分解誘導技術mitoTPDを開発 新しい創薬方法論やミトコンドリア研究技術への展開に期待
2024.08.29
近年、がんや神経変性疾患といった疾患とミトコンドリアとの関わりが明らかになり、ミトコンドリアを標的とする創薬手法の開発に関心が寄せられています。低分子化合物を用い、生体内のタンパク質分解機構を利用して任意のタンパク質を選択的に分解へと導く技術targeted protein degradation(TPD)が新しい創薬モダリティとして注目されています。しかし、ミトコンドリアは独自のタンパク質分解機構を持っており、従来のTPD技術ではミトコンドリアに局在するタンパク質を標的にできませんでした。
東北大学大学院生命科学研究科の友重秀介助教、石川稔教授、学際科学フロンティア研究所の佐藤伸一准教授らのグループは、これまでとは異なる化合物デザインによってミトコンドリアで機能するTPD技術「mitoTPD」を開発しました。ミトコンドリアを断片化するタンパク質をミトコンドリアに過剰発現させた細胞に本技術を用いることで、ミトコンドリア形態の正常化にも成功しました。これは、ミトコンドリアの形態操作やミトコンドリア異常の回復への活用が可能な技術であり、新たなミトコンドリア創薬手法や新規研究技術への展開が期待されます。
本成果は、英国王立化学会の学術誌Chemical Science誌にて、2024年8月29日付けで公開されました。
図:本研究で開発したmitoTPD技術の概要。
論文情報:
タイトル:Targeted Protein Degradation in the Mitochondrial Matrix and Its
Application to Chemical Control of Mitochondrial Morphology
著者:Wakana Yamada, Shusuke Tomoshige,* Sho Nakamura, Shinichi Sato, Minoru Ishikawa*
*責任著者:東北大学大学院生命科学研究科 助教 友重秀介、教授 石川稔
掲載誌:Chemical Science
DOI:10.1039/d4sc03145h
URL: https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2024/sc/d4sc03145h