東北大学
学際科学フロンティア研究所

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酵素を使ったチロシン残基の修飾反応を開発:タンパク質表面の機能化に有用な化学反応

2024年11月13日『Chemical Communications』誌に論文掲載

2024.11.14

タンパク質に人工的な機能を導入するバイオコンジュゲーション技術は近年、目覚ましい成長を遂げています。バイオコンジュゲーション技術の中核をなすのは、目的のタンパク質と標識試薬の間に共有結合を形成する化学反応であります。従来の研究では、天然に存在する20種類のアミノ酸のうち、リジン残基、システイン残基の2種類の求核性アミノ酸残基を機能化する技術は確立されており、広範な応用研究に活用されています。しかし、他の18種類のアミノ酸残基を効率良く機能化することは難しい課題として残されています。タンパク質表面に出現するチロシン残基は、(1)翻訳後修飾の基質として多様な修飾(リン酸化、硫酸化、酸化など)を受ける、(2)タンパク質間相互作用や核酸‐タンパク質間相互作用の界面に多く存在する、という理由からチロシン残基の選択的化学修飾反応は生命現象解明のツールとして有用であると期待されています。また、これまでは、天然のタンパク質構造表面に露出したチロシン残基の化学修飾には、タンパク質構造にとって苛酷な反応条件を必要とするため、修飾反応によってタンパク質構造が一部損傷するという課題がありました。
 
東北大学学際科学フロンティア研究所の佐藤伸一准教授、東北大学生命科学研究科の石川稔教授、友重秀介助教、東北大学情報科学研究科の西羽美准教授、東京科学大学細胞制御工学研究センターの田口英樹教授、丹羽達也助教、東京科学大学生命理工学院の門之園哲哉准教授らの研究チームは、ラッカーゼという菌糸が主に生産する酵素を使った温和な反応条件において、極めて迅速に進行するチロシン残基修飾反応の開発に成功しました。タンパク質表面のチロシン残基の状態の観測や、タンパク質の機能化に関する研究が進展することが期待できます。
 
これらの研究成果は英国化学会誌『Chemical Communications』誌に2024年11月13日付で掲載されました。
 
 

論文情報:
タイトル:Laccase-catalyzed tyrosine click reaction with 1-methyl-4-arylurazole: rapid labeling on protein surfaces
著者:Keita Nakane, Chizu Fujimura, Shogo Miyano, Zhengyi Liu, Tatsuya Niwa, Hafumi Nishi, Tetsuya Kadonosono, Hideki Taguchi, Shusuke Tomoshige, Minoru Ishikawa, Shinichi Sato
DOI: 10.1039/D4CC03802A
URL: https://doi.org/10.1039/D4CC03802A
 
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