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「生命はなぜ発生し、進化したのか?」に答える物理学の総説論文を発表
国際オープンアクセス学術雑誌『Entropy』誌に2025年4月21日掲載
2025.04.22
「物質だけの太古の地球において、生命はなぜ発生し、なぜ複雑な機能を持つように進化したのか?」というのは、基本的で興味深い問いであり、生物学、化学や地球科学などにおいてそれぞれの異なるアプローチで精密な実験を駆使し研究されています。一方で、物質の構造や動きの様々な側面を単純な原理で説明しようとする物理学では、20世紀に相対性理論を創始したアルバート・アインシュタインや量子力学を創始したエルヴィン・シュレディンガーが熱力学に基づく生命の理解を主張しましたが、近年はあまり議論されなくなっていました。
東北大学学際高等研究教育院の沢田康次名誉教授、公益財団法人がん研究所の大学保一プロジェクトリーダー(研究開始当時:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教)、東北大学学際科学フロンティア研究所の當真賢二教授は、開放系非平衡熱力学の「最大エントロピー生成原理」が生命の発生や進化の謎を理解する基本的な概念になることを提唱し、様々な文献を挙げながら議論を展開しました。これによれば、物質の世界で高分子が自己複製を始めたこと、細胞集団や生物個体集団が分化して組織を作ることは単位時間あたりのエントロピー生成が最大になる現象として理解できます。
本研究は、非線形物理学の研究者、分子遺伝学の研究者、宇宙物理学の研究者による学際的な成果となりました。本研究の学説はチャールズ・ダーウィンの適者生存の概念に対する科学的原理となる可能性があります。また、人類が技術を発展させ、大量のエネルギーを消費することについて同じ原理の下で理解を試みています。そして植物の種子や過酷な環境における動物の非常に遅いエントロピー生成の状態を参考にして、地球温暖化の影響を受ける人類の未来を考察することも提案しています。
この研究成果は国際オープンアクセス学術雑誌『Entropy』誌に2025年4月21日付で掲載されました。
論文情報:
タイトル:Maximum Entropy Production Principle of Thermodynamics for the Birth and Evolution of Life
著者:Yasuji Sawada, Yasukazu Daigaku, and Kenji Toma
掲載誌:Entropy
DOI: 10.3390/e27040449
URL: https://doi.org/10.3390/e27040449
タイトル:Maximum Entropy Production Principle of Thermodynamics for the Birth and Evolution of Life
著者:Yasuji Sawada, Yasukazu Daigaku, and Kenji Toma
掲載誌:Entropy
DOI: 10.3390/e27040449
URL: https://doi.org/10.3390/e27040449