東北大学
学際科学フロンティア研究所

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宇宙を読み解く新たな知性: 量子×AIで異常なエネルギー放射現象を発見 ―X線宇宙観測データと量子機械学習の融合による世界初の成果―

2025年7月2日『The Astrophysical Journal』誌に論文掲載およびプレスリリース

2025.07.02

大阪大学大学院理学研究科の川室太希助教、立教大学の山田真也准教授、酒井優輔さん(博士後期課程)、理化学研究所の長瀧重博主任研究員、松浦俊司上級研究員、東北大学学際科学フロンティア研究所の山田智史助教らによる研究グループは、欧州宇宙機関(ESA)が運用するX線天文衛星XMM-Newtonがこれまで約24年間にもわたり取得してきた大規模な宇宙のX線変動データから、量子コンピュータと機械学習を組み合わせた量子機械学習モデルを構築し適応することで、113件の異常なエネルギー(X線)放射現象を捉えることに成功しました。
 
近い将来、今以上に宇宙の変化を捉えるために膨大な量の動画データが取得されると考えられています。そこで、人類の予想を超えるような変動を見つけ、宇宙の多様性やいまだ隠れている物理現象といった神秘を解明するために、最先端の機械学習モデルの開発が活発に行われています。
 
そのような状況のなか、研究グループは、機械学習と量子コンピュータを組み合わせた量子機械学習の有用性をシミュレーションベースで模索するため、機械学習で用いられているLSTM(Long Short-term Memory; 長・短期記憶)と呼ばれるニューラルネットワークに量子回路を埋め込み、量子コンピュータで計算できるように整備し、明るさの異常変動の検出を行いました。その結果、古典コンピュータを用いた場合よりも多くの候補を特定することに成功しました。
 
本研究成果は、米国科学誌「The Astrophysical Journal」に、2025年7月2日(水)15時(日本時間)に公開されます。
 

左図: 採用した量子LSTMと異常な明るさの検知の概要。連綿と入力データを量子回路を内包したLSTMユニットに送り、最終的に明るさを予測する(ひし形)。予測データよりも、ずれが小さい場合には通常データと判定(オレンジ丸)、ずれが大きい場合には異常現象と判定(赤紫丸)。
右図: 実際のX線の明るさの変化に量子また古典LSTMを適応した結果の一例。上パネルは、実際の観測データ、量子LSTM の予測、そして古典LSTMの予測を示している。下パネルは、観測データと予測のずれを示している。量子の方が、ずれ、または異常のシグナルが大きい。

【論文情報】
タイトル:Quantum Machine Learning for Identifying Transient Events in X-Ray Light Curves
著者:Taiki Kawamuro, Shinya Yamada, Shigehiro Nagataki, Shunji Matsuura, Yusuke Sakai, and Satoshi Yamada
掲載誌:The Astrophysical Journal
DOI: 10.3847/1538-4357/adda43
URL: https://doi.org/10.3847/1538-4357/adda43
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