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-200℃の低温でも動作するアクチュエータ用の形状記憶合金を開発 宇宙機器や水素利用分野における動作制御の高性能化に期待
2025年7月16日『Communications Engineering』誌に論文掲載およびプレスリリース
2025.07.17
電気や熱を機械的エネルギーに変換するアクチュエータには、用途に応じてさまざまな機構や材料があります。特に、宇宙機器や水素利用などの分野では、-100℃以下の低温でも正確に動作し、高出力を発揮できるアクチュエータ用材料が求められています。しかし、これまで実用的な材料はありませんでした。
このたび、東北大学大学院工学研究科の大森俊洋教授らは、銅、アルミニウム、マンガンを主成分とする合金が-200℃でも形状記憶効果を示すことを発見し、さらに、この合金をアクチュエータとして組み込んだ機械式ヒートスイッチが-170℃で動作することを確認しました。低温下での高性能アクチュエータの実用化が期待されます。
本研究は、東北大学大学院工学研究科の佐藤駿介大学院生(当時)、大森俊洋教授、貝沼亮介教授、許皛准教授、同大学学際科学フロンティア研究所の許勝助教、岩手大学理工学部の戸部裕史准教授、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の澤田健一郎主任研究開発員と佐藤英一教授、国立天文台先端技術センターの東谷千比呂研究技師、東京都市大学総合研究所の中川貴雄特任教授、京都大学大学院工学研究科の荒木慶一教授の共同研究により実施されました。
本研究成果は、2025年7月16日18時(日本時間)に科学誌Communications Engineeringに掲載されました。

図:ニッケル(Ni)を加えたCu-16.9Al-13.4Mn-3.1Ni(原子%)合金板に引張り応力を与えた状態で冷却・加熱した際の歪み(ひずみ)の変化。冷却により伸長し、加熱により収縮する形状記憶効果が得られている。本実験で形状記憶効果が得られた最も低い温度は-200℃だった。このような低温域で形状記憶効果が得られたのは世界初。
【論文情報】
タイトル:Shape memory alloys for cryogenic actuators
著者:Shunsuke Sato, Hirobumi Tobe, Kenichiro Sawada, Chihiro Tokoku, Takao Nakagawa, Eiichi Sato, Yoshikazu Araki, Sheng Xu, Xiao Xu, Toshihiro Omori*, Ryosuke Kainuma
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 教授 大森 俊洋
掲載誌:Communications Engineering
DOI:10.1038/s44172-025-00464-9
URL:https://doi.org/10.1038/s44172-025-00464-9