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柴﨑 裕樹 助教(新領域創成研究部)
2016.09.23
柴﨑 裕樹 助教
『American Mineralogist』、『PNAS』、および
『Geophysical Research Letters』に論文掲載
地球をはじめとする地球型惑星に分類されている惑星の中心には、金属で構成されている“核”が存在していると考えられています。この金属核は、鉄を主成分としていますが、鉄以外に10%程の軽元素と呼ばれる鉄より軽い元素が含まれていると考えられています。軽元素の種類によって鉄の物理量に与える影響は異なり、このことは、金属核のダイナミクス(例えば、核の形成や惑星地場の発生機構)等の議論にも強く影響を及ぼします。したがって、核中の軽元素の種類の特定が、地球惑星科学の最重要課題の一つとされています。
新領域創成研究部の柴﨑裕樹助教は、この問題に取り組むべく、本学理学研究科、東京大学、公益財団法人高輝度光科学研究センター、大阪大学の研究者と共同で、放射光施設SPring-8の高輝度X線とマルチアンビル型高温高圧発生装置を組み合わせて、核の主要構成元素である鉄の弾性波速度と密度を高温高圧下で測定し、弾性波速度と密度の詳細な温度圧力依存性を明らかにしました。これによると、bcc構造の鉄の弾性波速度は、P波速度とS波速度の圧力依存性は同程度である一方で、温度依存性はS波速度の方が約2倍大きいことが明らかになりました。さらに、核中の軽元素候補である珪素が加わると鉄の温度依存性が小さくなる可能性も指摘することができました。
今回の成果をもとに、鉄に与える軽元素の効果を定量的に明らかにしていくことで、核中の軽元素の種類の同定に繋がることが期待されます。
地球内部の主要構成物であるSiO2の高温高圧下での挙動を研究することは、地球内部の理解を進める上で非常に重要です。同様な理由から、SiO2のアナログ物質であるGeO2の研究も、地球内部の理解には欠かせないものとなります。柴崎助教は、米国カーネギー研究所の河野博士を中心とした共同研究により、地球内部でのマグマの挙動の解明を目的に、GeO2ガラスの高圧下での局所構造を、アメリカの放射光施設APSで測定しました。本研究では、高圧発生装置を大幅に改善し、これまで測定が不可能であった90万気圧という超高圧でのGeO2ガラスの局所構造を、世界最高水準で決定することに初めて成功しました。
本研究結果によると、GeO2ガラスは約40万気圧以上で、Ge-Oの配位数が6配位からさらに増加することが明らかになりました。このことは、ガラスの密度、さらにはマグマの密度が急激に増加する可能性を示唆しており、地球の深部には地球誕生初期のマグマが溜まっている可能性を示すことに成功しました。
地球をはじめとする惑星核中の軽元素の種類や量を解明していくためには、主要構成物質である鉄の惑星中心の温度圧力条件での密度を正確に求めることが重要になってきます。柴崎助教は、米国カーネギー研究所のFei博士を中心とした共同研究により、ダイヤモンドアンビルセルとレーザー加熱装置を組み合わせて約200万気圧、2000度の温度圧力を発生し、アメリカの放射光施設APSにてX線回折実験を行うことで、高温高圧下での密度を測定しました。本研究では、圧力測定用の圧力マーカーを3種類用いることで、過去の鉄の密度データとの整合性を高める改善を行いました。
本研究で得られた鉄の密度データと過去のデータを組み合わせて、鉄の密度の温度圧力依存性を求めた結果、地球の内核は、鉄の密度よりも約4%小さいことが明らかになりました。今後、この値が地球内核の軽元素の同定を行う指針になることが期待されます。