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【開催報告】11/5-11/7「IAS-FRIS Symposium on Social Robots and Ethical Design(ソーシャル・ロボットと倫理デザインの考察~AI共生社会の構築のために)」を開催
開催日:2025年11月5日~7日
2025.11.18
2025年11月5日から7日にかけて、九州大学高等研究院(IAS)と東北大学学際科学フロンティア研究所(FRIS)の主催と国立台湾大学人文情報学研究センター、オスロ大学先端ロボティクス研究グループ(ROBIN)、九州大学法学府国際関係法専攻、東北大学工学研究科平田研究室の共催より、「ソーシャルロボットと倫理的なデザイン」をテーマとするシンポジウムが青葉山キャンパスで開催されました。本イベントはハイブリッド形式で行われ、工学・デザイン・倫理・法・社会科学の研究者が参加し、AI搭載型ソーシャルロボットがもたらす設計・倫理・ガバナンスの課題を多角的に検討しました。ソーシャルロボットを技術・行動・規範が相互作用する「社会技術システム」として捉え、開発初期段階から統合的視点を取り入れる必要性を重視する基本的な姿勢が強調されました。
第一のテーマであるロボットのデザインと実装では、オスロ大学先端ロボティクス研究グループJim Torresen教授は、実生活環境での利用を想定した研究が紹介されました。東北大学工学研究科平田泰久教授は、生活空間を模したリビングラボで支援ロボットとの日常的相互作用を評価する取り組みを紹介しました。国立台湾大学工学部機械工学科Jia-Yang Juang(莊嘉揚)教授・学科長は、柔軟素材を用いたソフトロボティクスや適応的移動機構による人間環境への適応性向上を報告しました。また、国立台湾大学工学部機械工学科Ying-Yin Huang(黃瀅瑛)准教授は、視覚的複雑性や親しみやすさが利用者の安心感や注意に影響するとの知見を示し、安全・共感・信頼を高めるデザインの重要性が指摘しました。
第二のテーマでは、HRIの行動・認知面を扱い、受容・拒否・社会的摩擦といった感情反応の発生要因を分析しました。国立台湾大学人文情報学研究センターHsiu-Ping Yueh(岳修平)主幹教授・センター長とWeijane Lin(林維真)教授・副センター長は、ゲームベースの実験では、ロボットが人間の道徳的判断に影響する可能性を示し、また東北大学工学研究科平田研究室Zonghao Dong特任助教からは、犬型ロボットの擬人化に対する社会的受容に関する研究も報告されました。ノースフロリダ大学人文情報学研究センターJoshua C. Gellers教授・センター長は、SFやデジタルゲームの文化的ナラティブが、ロボットの規範形成や社会的想像力に影響を及ぼす点について議論しました。
第三の政策・ガバナンス領域では、国立台湾大学研究倫理センターPeishan Yang(楊培珊)教授・センター長とライデン大学法とデジタルテクノロジー学際研究センターEduard Fosch-Villaronga准教授が、高齢化社会におけるロボットの役割やケア技術に求められる人間中心アプローチを論じました。体系的レビューやステークホルダー協議が包摂的なガバナンス形成に寄与すること、さらにヤギェウォ大学法学部刑法学科Kamil Mamak准教授からは「責任の空白(responsibility gaps)」問題が依然として重要課題であることが示されました。
第四の倫理的デザイン・ガバナンスでは、法規制を補完する非拘束的倫理基準の有効性が強調されました。IEEE SSIT標準委員会Ruth Lewis委員長は、IEEEを中心とする国際標準が工学実務に浸透しつつある現状を分析され、オスロ大学先端ロボティクス研究グループDiana Saplacan Lindblom博士研究員は、日本とノルウェー比較研究からは同意・プライバシー・社会的受容に関する文化差が示されたと報告しました。九州大学高等研究院と東北大学学際科学フロンティア研究所Yueh-Hsuan Weng(翁岳暄)クロアポ准教授は、哲学的考察と実証研究を統合した倫理方法論の必要性を提起しました。
総じて、責任あるロボティクスには学際的協働が不可欠であり、技術革新だけでは社会的課題に対応できないことが再確認されました。産業ロボット中心から生活環境に組み込まれる社会的ロボットへの研究転換が進む中、デザイン主導型ガバナンスの重要性が強調して報告されました。
本シンポジウムは次回、2026年秋頃に九州大学伊都キャンパス稲盛財団記念館(稲盛ホール)にて開催予定です。引き続きご注目ください。
