東北大学
学際科学フロンティア研究所

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初期宇宙で最速級に成長する超巨大ブラックホールを発見

2026年1月21日『The Astrophysical Journal』誌に論文掲載および1月22日国立天文台プレスリリース

2026.01.22

多くの銀河の中心には、太陽の数百万倍から数百億倍もの質量を持つ超巨大ブラックホールが存在します。ブラックホールは周囲の物質を吸い込んで成長し、その過程で強い光を放ちます。ブラックホールの周りには、ガスが円盤状に回り込む構造(降着円盤)や、より内側の高温ガス領域、さらに一部の物質が高速で噴き出す「ジェット」が形成されます。そのため、可視光や紫外線、X線、電波など、さまざまな種類の光で観測されます。特に明るいものは「クエーサー」と呼ばれますが、こうした天体がどのように成長し、その母銀河の成長とどのように関連しているのかは、いまだ大きな謎です。
 
早稲田大学の小渕紗希子 大学院生、東北大学学際科学フロンティア研究所の市川幸平准教授を中心とする研究チームは、すばる望遠鏡を用いて初期宇宙のクエーサー周囲のガスの運動を調べ、今から約120億年前の超巨大ブラックホールの質量を高い精度で測定しました。質量とX線での明るさから推定されるこのブラックホールの成長率はとても高く、これまでに観測された同程度の質量を持つ超巨大ブラックホールの中では最も急速に成長していることが分かりました。
 

図:超巨大ブラックホールの想像図。中心のブラックホールにガスが降着し、降着円盤やジェットを形成している。(クレジット:NASA)。
 
特筆すべきは、このクエーサーがX線でも電波でも明るく輝いていることです。急速に成長するブラックホールでは、高温ガス領域が効率的に冷やされるためX線が弱くなり、電波で観測されるジェットも目立たなくなるとこれまでは考えられていました。しかしこの天体はX線と電波の双方で明るいことから、従来は想定されていなかった特異なメカニズムが隠されている可能性があります。研究チームは、極めて明るいX線が観測された理由として、超巨大ブラックホールの成長の勢いが変化している可能性を提唱しています。初期宇宙で超巨大ブラックホールの成長が変動を伴いながら進行する過程を初めて捉えたことになります。また、電波での明るさは、このクエーサーが、母銀河での星生成を抑制しうるほどの極めて激しいジェットを放出していることを示しています。今回の発見は、初期宇宙において母銀河と中心の超巨大ブラックホールがどのように影響し合いながら成長するのかを理解する上で、重要な手がかりになるでしょう。
 
論文の主著者の小渕さんは、「今回の発見は、これまで困難とされていた初期宇宙における超巨大ブラックホールの形成過程を解明することに繋がるかもしれません。今後、このクエーサーにおけるX線や電波の放射機構を探るとともに、まだ見つかっていない類似天体が存在しているのかどうかについても明らかにしていきたいです」と展望を語っています。

本研究成果は、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に 2026年1月21日付で掲載されました。

【論文情報】
タイトル:Discovery of an X-ray Luminous Radio-Loud Quasar at z = 3.4: A Possible Transitional Super-Eddington Phase
著者:Sakiko Obuchi et al.
掲載誌:The Astrophysical Journal
DOI:10.3847/1538-4357/ae1d6d
URL:https://doi.org/10.3847/1538-4357/ae1d6d

プレスリリース:
国立天文台
https://www.nao.ac.jp/news/science/2026/20260122-subaru.html
 
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