東北大学
学際科学フロンティア研究所

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電子のふるまいを1マイクロメートルの細かさで見る顕微鏡の開発に成功 ~量子材料・次世代情報処理デバイス開発の加速に期待~

2026年3月11日『Journal of Synchrotron Radiation』誌に論文掲載およびプレスリリース

2026.03.12

量子科学技術研究開発機構(QST)の山本航平研究員、宮脇淳主幹研究員、東北大学学際科学フロンティア研究所の鈴木博人助教らの研究グループは、ナノテラスに設置した電子状態のわずかなエネルギー差を見分ける超高エネルギー分解能をもつQSTの共鳴非弾性X線散乱(RIXS)装置「2D-RIXS」において、物質中の電子のふるまいを1マイクロメートル以下の精度で可視化することに世界で初めて成功しました。本装置は、ナノテラスの高輝度X線と独自の光学設計を組み合わせることで、これまで困難だった「材料内部の量子状態の空間分布」を、顕微鏡のように直接観測することを可能にします。本成果は、量子材料やスピントロニクス材料、次世代情報処理デバイスの研究開発を大きく前進させるものです。
 
RIXSは電子や原子、スピンの量子力学的な電子状態を直接調べる強力な手法です。これまでRIXSはエネルギー分解能の向上をめざして開発が行われてきました。QSTは、世界最高のエネルギー分解能の装置「2D-RIXS」を独自に開発し、2025年3月から広く研究者に利用されています。一方で、微細化が進む半導体デバイスや、不均一性が鍵となる量子材料の研究の進展に伴い、「どんな電子状態か」だけでなく、「それが試料中のどの位置に存在するのか」を知ることが不可欠になってきました。
 
超高エネルギー分解能を失うことなく、空間分解能を手に入れるためにはどうすればよいのか?この問いに研究チームは「2D-RIXS」装置の原理を根本から見直しました。「2D-RIXS」装置では、超高エネルギー分解能を達成するために、X線を当てて得られた試料全体の信号を足し合わせて強度を高めていますが、この足し合わせる前の個々のデータには試料中のどの位置から来た信号であるかの情報も含まれていることに研究チームは着目しました。この着想をもとに、空間分解能の評価と光学系の精密な制御という地道で粘り強い検証を積み重ねた結果、一つ一つのX線光子ごとに空間情報をたどる手法を確立し、これまで両立不可能であった超高エネルギー分解能と高空間分解能を同時に実現しました。
 
この新しい技術はナノテラスの共用実験制度において利用可能であり、今後、材料内部の電子状態をこれまでにない高精細で描き出す技術として、次世代デバイス開発への貢献が期待されます。
 
この研究成果は、学術誌Journal of Synchrotron Radiationに2026年3月11日付(日本時間)で掲載されました。
 

図:超高エネルギー分解能と高空間分解能を両立する「2D-RIXS顕微鏡」の概念図。2024年にQSTが開発したナノテラスの「2D-RIXS」装置では、一般的なRIXS装置(上段左)と比較して、電子状態の違いを格段に精細に識別できる超高エネルギー分解能を達成した(上段右)。さらに本研究では、高い空間分解能を持った計測も同時に実現し、試料内部の量子状態の分布を顕微鏡のように直接観察することに成功した(下段)。下段のイメージは2D-RIXS顕微鏡によるニッケル薄膜微細構造の空間分解測定結果。多彩な磁性体のスピン状態を担うニッケル3d電子に対応するRIXS信号を用いることで、スピン状態を応用したデバイスを模擬してシリコン基板上に形成した微細パターンの電子状態分布をマッピングした(色はニッケル3d電子の情報に対応している)。本結果は、850エレクトロンボルト付近の軟X線を用いて、空間分解能1マイクロメートル、エネルギー分解能約17ミリエレクトロンボルトでのRIXSイメージングが可能であることを示している。

【論文情報】
タイトル:2D-RIXS: Resonant inelastic x-ray scattering microscopy with high energy and spatial resolutions
著者:Kohei Yamamoto a, Hakuto Suzuki b,c, and Jun Miyawaki a (a NanoTerasu Center, National Institutes for Quantum Science and Technology, 468-1, Aoba, Aramaki, Aoba-ku,Sendai, Miyagi, 980-8572, Japan; b Frontier Research Institute for Interdisciplinary Sciences, Tohoku University, Sendai 980-8578, Japan; c Institute of Multidisciplinary Research for Advanced Materials (IMRAM), Tohoku University, Sendai 980-8577, Japan) 
掲載誌:Journal​ of Synchrotron Radiation
DOI:10.1107/S1600577526000573

プレスリリース:
東北大学
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2026/03/press20260312-00-rixs.html
東北大学多元物質科学研究所
https://www2.tagen.tohoku.ac.jp/lab/news_press/20260312-rixs/
量子科学技術研究開発機構(QST)
https://www.qst.go.jp/site/press/20260311.html
 
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