東北大学
学際科学フロンティア研究所

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『安全で環境にやさしい電池』を作る新技術を開発

『ACS Applied Materials & Interfaces』誌に論文掲載

2026.03.11

近年、技術革新の進展の一方で、希少資源の枯渇や環境負荷の増大など、持続可能な社会の実現に向けた課題が顕在化しています。こうした背景のもと、自然を回復させ、より良い環境を取り戻すことを目指す「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の考え方が世界的に広がっています。その実現に向けては、鉱物資源に依存した従来の材料・エネルギー技術から脱却し、持続可能な資源循環を志向した新たな技術の開発が求められています。

東北大学 学際科学フロンティア研究所の中安祐太助教は、東北大学大学院工学研究科附属超臨界溶媒工学研究センターの渡邉賢教授らと共同で、超臨界二酸化炭素(CO2)を用いた新しい手法により、水系全有機電池用電極にキノン系有機分子を高密度かつ均一に担持することに成功しました(図1)。この手法により、金属を活物質として一切用いない有機材料のみの電池において、エネルギー密度、高速充放電性能、サイクル寿命のすべてを向上させ(図2)、実用化レベルの性能を実現する新技術を開発しました。

さらに本研究では、東北大学の次世代放射光施設NanoTerasuを活用し、分子レベルでの構造、電子状態、界面状態を詳細に解析することで、電池性能向上のメカニズムを解明しました。これにより、電極中の有機分子の配置や電子状態が電池特性に与える影響を明らかにしました。

鉱物資源に依存しない電池技術の実用化につながる本研究成果は、持続可能な材料設計として注目される「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の理念にも資するものであり、持続可能な社会の構築に向けた新たなエネルギー技術の発展への貢献が期待されます。

論文情報
論文タイトル:“Supercritical CO2‑Induced Quinone Confinement and Interfacial
 Polarization in Microporous Carbon Electrodes for Aqueous All Organic Batteries”( 水系全有機電池向け微細孔カーボン電極における超臨界CO₂によるキノンの閉じ込めと界面分極)
掲載誌:ACS Applied Materials & Interfaces
著者:中安 祐太(東北大学 学際科学フロンティア研究所 助教)、曽我部崇(東北大学 大学院工学研究科)、永村直佳(NIMS)、大岡千恵(東北大学 大学院工学研究科)、山田 智也(東北大学 大学院工学研究科)、小林加代子(京都大学 農学研究科 准教授)、渡邉 賢(東北大学 大学院工学研究科 教授)
DOI: 10.1021/acsami.5c21457
 
 

図1.作成した電池模式図および超臨界CO2による有機分子含浸のイメージ.超臨界CO2は「細かな隙間」まで分子を輸送し、かつ均一に充填することができる.
 
 
図2. 超臨界CO2含浸により作成した電極を用いた電池の性能評価.液体含浸の場合よりも多くのエネルギーを貯めることができ、かつ高速でエネルギーを出力できる.
 
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