東北大学
学際科学フロンティア研究所

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野田博文助教『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』に論文掲載

8月1日「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society (MNRAS)」オンライン版掲載

2018.08.06

銀河の中心に存在する「巨大ブラックホール」に大量の物質が飲み込まれると、重力エネルギーが解放され、X線、紫外線、可視光などで明るく輝きます。しかし、物質がどのような構造・状態で光を生成し飲み込まれるのか、飲み込まれる物質の量によって変化があるのかなど、巨大ブラックホール近傍の様子は未だによく分かっていません。
 
新領域創成研究部の野田博文助教はChris Done教授(英ダラム大学)と共同で、巨大ブラックホールに飲み込まれる物質の量が2008年から2016年にかけて1桁以上変化したMrk 1018という天体のXMM-Newton衛星およびSwift衛星による多波長観測データを解析しました。その結果、吸い込まれる量が多い時には、巨大ブラックホールの周りで可視光、紫外光、エネルギーの低いX線を強く発する円盤状の構造が卓越することを確認しました。そして量が少なくなると、その円盤が蒸発して希薄かつ高温になることで、可視光や紫外線が劇的に暗くなり、エネルギーの高いX線が相対的に強くなることを初めて明らかにしました。これは恒星質量ブラックホールではたびたび観測される「降着流の状態遷移」という現象に類似しており、質量が100万倍も異なる巨大ブラックホールと恒星質量ブラックホールを統一的に理解するための重要なステップとなりました。
 
本研究は、北海道大学、東北大学、名古屋大学によるコンソーシアム「次世代研究者育成プログラム」の支援により開始され、その研究成果をまとめた論文が2018年8月1日「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society (MNRAS)」のオンライン版に掲載されました。
 
論文情報:
Hirofumi Noda & Chris Done, “Explaining changing-look AGN with state transition triggered by rapid mass accretion rate drop", Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, sty2032
DOI: 10.1093/mnras/sty2032
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