東北大学
学際科学フロンティア研究所

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梨本裕司 助教『Analytical Chemistry』誌に論文掲載

2019.06.14

癌細胞を凝集させ、立体的に培養したスフェロイドは、固形腫瘍のモデルとして、創薬スクリーニングへの応用が盛んに検討されています。しかし、スフェロイドを形成している細胞の機能を1細胞レベルで、かつ、低侵襲に評価する技術は発展途上です。
 
今回、新領域創成研究部の梨本裕司助教は、東北大学大学院工学研究科の珠玖仁教授、伊野浩介准教授、大学院生の越後雅邦氏と共同で、超微量(fL~pL)の溶液回収が可能な電気化学シリンジと呼ばれる技術を用い、癌スフェロイド表面を形成している単一細胞から細胞質を回収、遺伝子発現解析を行いました。その結果、癌スフェロイドの表面の遺伝子発現は、癌スフェロイド全体を平均した際とは異なる遺伝子発現パターンを示していることを確認しました。このことは、本手法を用いることで、スフェロイド内の部位特異的な遺伝子発現の評価が可能であることを示しています。
本手法は、回収量が極微量であるため、サンプルに対して侵襲性が少なく、かつ1細胞レベルの細胞機能解析が可能です。今後、癌スフェロイド内の個々の細胞機能が、時空間的にどのように変化していくか、解析が進むことが期待されます。
 
本成果についてまとめた論文(Article)は、「Analytical Chemistry」誌において、6月13日付でオンライン版に掲載されました。

論文情報:
Yuji Nashimoto, Masakuni Echigo, Kosuke Ino, Hitoshi Shiku,
“Site-Specific Cytosol Sampling from a Single Cell in an Intact Tumor Spheroid Using an Electrochemical Syringe”,
Analytical Chemistry
DOI: doi.org/10.1021/acs.analchem.9b02062
https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.analchem.9b02062
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