東北大学
学際科学フロンティア研究所

トピックス

「回転天体磁気圏における電磁エネルギーの解放と輸送の研究」

2020.04.08

木村智樹 助教 (新領域創成研究部)

「回転天体磁気圏における電磁エネルギーの解放と輸送の研究」

令和2年度 文部科学大臣表彰若手科学者賞


強磁場かつ高速で自転する木星の周囲の宇宙空間「磁気圏」における、電磁場のエネルギーの解放や輸送の解明は、自転と磁場で特徴づけられる磁化天体の宇宙環境を普遍的に理解する上で、最重要課題の1つです。エネルギーの解放・輸送を解明するには、探査機の「その場」における精密測定が最も有効ですが、木星磁気圏は広大かつ高速回転しているため、探査機の1点観測では磁気圏の全容が不明でした。
 
そこで木村智樹助教は、長期専有可能な世界初の惑星専用宇宙望遠鏡「ひさき」衛星(JAXA)の開発・運用に参加し、ひさき衛星を用いた木星磁気圏の遠隔観測の基盤を確立しました。ひさき衛星と、ハッブル宇宙望遠鏡、チャンドラX線望遠鏡、木星探査機ジュノー等との国際・学際協調を主導し、史上最大規模の磁気圏遠隔観測を実現しました。その結果、木星が持つ自転・磁場、衛星イオの火山ガスのエネルギーが急速に解放され、高エネルギープラズマを生み出し、木星方向に高速に輸送される過程が明らかになりました。この輸送は、高速回転している磁気圏では困難だと思われていたもので、定説を覆すものです。中性子星等の極限的回転磁化天体にも存在する可能性があり、回転磁化天体の宇宙環境を普遍的視座で理解する端緒を開きました。
 
略歴:
1982年 栃木県生まれ
2010年3月 東北大学理学研究科地球物理学専攻修了 博士(理学)
2010年4月−2015年3月 宇宙航空研究開発機構 プロジェクト研究員・JSPS特別研究員
2015年4月−2018年4月 理化学研究所 基礎科学特別研究員
2018年4月−現在 現職
 
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