東北大学
学際科学フロンティア研究所

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市川幸平 助教『The Astrophysical Journal』オンライン版に論文掲載

『The Astrophysical Journal』オンライン版に論文掲載

2020.04.08

宇宙に存在する多くの銀河の中心には、およそ太陽質量の100万倍から100億倍程度の超巨大ブラックホールが存在することが知られています。こうした超巨大ブラックホールに大量の物質が落ち込むと、その重力エネルギーが開放され、銀河中心部が非常に明るく輝きます。こうした天体を活動銀河核と呼びます。
 
銀河内には、数十オングストロームから数マイクロメートル程度の大きさのダストと呼ばれる固体微粒子が普遍的に存在しており、こうした活動銀河核の周囲にもダストが存在していることが観測的に知られています。しかし、活動銀河核の近くでは、小さなダスト(マイクロメートル以下程度)が破壊されていることが観測的に示唆されていましたが、その破壊機構は謎に包まれていました。
 
新領域創成研究部の市川幸平助教は、田崎亮研究員(工学院大学)、小久保充研究員(東北大学)らと共同で、活動銀河核近傍での小さなダストの破壊機構を理論的に発見しました。今回、市川助教らは、活動銀河核が放つ非常に明るい光(電磁波)とダストの相互作用によって、ダストが破壊される可能性に着目しました。その結果、次の2種類の現象により、ダストを破壊することが明らかとなりました。
 
一つは、電磁波が持つ圧力(輻射圧)によってダストが(周囲のガスに対して)秒速数百から数千キロメートル程度まで加速され、その結果として、ガス中の水素原子やヘリウム原子が、まるで銃弾のようにダストを”撃ち抜く”ことで、ダストが破壊されるというものです。もう一つは、強力な紫外線やX線がダストを光電効果によって過剰に帯電させ、電気的な反発力によってダストが破壊されるというものです。これら2種類のダスト破壊過程を考慮することで、活動銀河核近傍のダストの紫外線・赤外線観測の結果を自然に説明することができるようになりました。今回発見したダスト破壊過程は、今後、活動銀河核近傍がどのような環境になっているのかを探る手かがりになることが期待されます。
 
本研究は、北海道大学、東北大学、名古屋大学によるコンソーシアム「次世代研究者育成プログラム」の支援により行われ、その研究成果をまとめた論文2編が2020年3月31日,4月7日に「The Astrophysical Journal」のオンライン版に掲載されました。

Paper I:
Ryo Tazaki, Kohei Ichikawa, and Mitsuru Kokubo, "Dust Destruction by
Charging: A Possible Origin of Gray Extinction Curves of Active Galactic Nuclei", The Astrophysical Journal
DOI: 10.3847/1538-4357/ab7822
https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2020ApJ...892...84T/abstract
 
Paper II:
Ryo Tazaki and Kohei Ichikawa, "Dust Destruction by Drift-induced Sputtering in Active Galactic Nuclei"
DOI: 10.3847/1538-4357/ab72f6
https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2020arXiv200201736T/abstract
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