東北大学
学際科学フロンティア研究所

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市川幸平 助教『The Astrophysical Journal Letters』に論文掲載

2020年12月4日『The Astrophysical Journal Letters』に論文掲載

2020.12.07

宇宙には数多くの銀河がありますが、それぞれの銀河の中心には太陽質量の100万倍から100億倍にもおよぶ超巨大ブラックホール(supermassive black hole; SMBH)が存在することが知られています。興味深いことに、SMBHの質量とその母銀河の星質量との間には非常に強い相関関係があり、銀河とSMBHの成長にはなにかしらの相互作用が起きていることが示唆されていますが、断定的な観測はまだ得られていません。
 
この関係を解く一つの鍵となるのが活動銀河核という天体です。活動銀河核ではSMBHのまわりにあるガスが中心に落ちることで、その重力エネルギーを開放し非常に明るく輝くだけでなく、周りにあるガスを吹き飛ばし(アウトフローといいます)母銀河に影響を与える可能性が示唆されています。
 
新領域創成研究部の市川幸平助教は、Xiaoyang Chen 研究員(現: 国立天文台ALMA観測所 プロジェクト研究員)、大阪大学の野田博文助教(元: 学際科学フロンティア研究所新領域創成研究部助教)らと共同で、AKARI J0916248+073034という活動銀河核に注目しました。この天体は宇宙近傍にある活動銀河核のうち、BH周辺から大量のアウトフローを出していることが我々の過去の研究から明らかになっていました。このアウトフローを出す活動銀河核が現在どの程度の明るさを持っているのかをNASA NuSTAR X線衛星で観測したところ、アウトフローから予測される光度より一桁以上暗いことがわかりました。これは、アウトフローを大量に出したことで中心核周辺のガスが減り、現在は活動がやみつつあることを示唆しており、今まさしく銀河とSMBHの両方が活動をやめつつある状態に移る天体であることがわかりました。
 
本研究は、北海道大学、東北大学、名古屋大学によるコンソーシアム「次世代研究者育成プログラム」の支援により行われ、その研究成果をまとめた論文が2020年12月4日「The Astrophysical Journal Letters (ApJL)」のオンライン版に掲載されました。
 
論文情報:
Xiaoyang Chen, Kohei Ichikawa, Hirofumi Noda et al.,
"NuSTAR Non-detection of a Faint Active Galactic Nucleus in an Ultraluminous Infrared Galaxy with Kpc-scale Fast Wind", The Astrophysical Journal Letters
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