東北大学
学際科学フロンティア研究所

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宇宙空間でイオンが電子より高温になる理由を解明-プラズマ中の"音波"がイオンを選択的に加熱-

2020年12月11日『Physical Review X』に論文掲載、および12月15日プレスリリース

2020.12.15

 太陽から吹き出る太陽風やブラックホールを取り巻く降着円盤はプラズマで出来ています。宇宙に存在するプラズマは高温・希薄であるため、プラズマを構成するイオンと電子の間の衝突がほとんど起こらない無衝突状態にあります。そのためイオンと電子は直接相互作用をせず、異なった温度を取ることが可能です。実際に、これらの天体現象ではイオンの方が電子より遥かに高温になっていることが分かっていました。しかし、なぜイオンが電子より高温になるのか?この疑問の答えは長年の未解決問題でした。
 東北大学学際科学フロンティア研究所の川面洋平 助教(大学院理学研究科 兼任)を中心とした国際チームは、国立天文台の「アテルイⅡ」をはじめ複数のスーパーコンピュータ用いて無衝突プラズマ乱流のシミュレーションを行い、イオンと電子がどのように乱流によって加熱されるかを調査し、この問題を解決しました。プラズマの乱流中には縦波的ゆらぎと横波的ゆらぎが存在していますが、これまで行われてきた研究では横波的ゆらぎのみが考えられてきました。本研究では、世界で初めて縦波的ゆらぎを含む無衝突乱流を計算し、イオンが縦波的ゆらぎのエネルギーを選択的に吸収することで電子より高温になることを突き止めました。この結果は、2019年に公開されたイベントホライズン望遠鏡によるブラックホールの影の撮像結果を解析する際にも重要となります。

 本研究の成果は、2020年12月11日に発行された米国の科学雑誌「Physical Review X」に論文が掲載され、12月15日に東北大学および国立天文台よりプレスリリースされました。
 
論文情報:
Yohei Kawazura, Alexander A. Schekochihin, Michael Barnes, Jason M. TenBarge, Yuguang Tong, Kristopher G. Klein, and William Dorland,
"Ion versus Electron Heating in Compressively Driven Astrophysical Gyrokinetic Turbulence",
Physical Review X.
DOI: 10.1103/PhysRevx.10.041050
https://journals.aps.org/prx/abstract/10.1103/PhysRevX.10.041050
 
プレスリリース:
東北大学
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2020/12/press20201215-02-ion.html
東北大学大学院理学研究科
https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20201215-11359.html
国立天文台
https://www.nao.ac.jp/news/science/2020/20201215-cfca.html
国立天文台 天文シミュレーションプロジェクト
https://www.cfca.nao.ac.jp/pr/20201215
 
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