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泉 正範助教(新領域創成研究部)の論文発表(The Plant Journal)のお知らせ
2014.09.11
The Plant Journal(9月号)に論文掲載
我々ヒトも太陽光に含まれる紫外線による障害を受け、いわゆる日焼けと呼ばれるような症状を示しますが、太陽光の元で育つ植物は常時その障害を受けながら成長しなければなりません。今回の成果では、重要作物であるイネにおいて、紫外線Bによる主な障害であるDNAの傷、シクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を修復する酵素「CPD光回復酵素」が核とミトコンドリアに移行するための機構の一端を、初めて明らかにしました。 これまで、東北大学大学院生命科学研究科、日出間准教授らのグループは、生化学的、酵素学的解析から、イネのCPD光回復酵素(OsPHR)が、核、ミトコンドリア、葉緑体というDNAが存在する3つの細胞内小器官(オルガネラ)に移行する、他に類をみないトリプルターゲッティングタンパク質であることを見出していました。本成果では、泉正範助教が専門とする植物の細胞生物学的な解析法を取り入れ、CPD光回復酵素と緑色蛍光タンパク質(GFP)の融合タンパク質(OsPHR-GFP)が、生きたイネの組織で確かに3つのオルガネラに移行していることを示しました。この手法を発展させ、OsPHR-GFPからOsPHRの様々な部位を欠失させたキメラ遺伝子を作成し、それらのオルガネラ移行性を詳細に解析することで、核とミトコンドリアへの移行に必要なアミノ酸配列を同定しました。つまり本研究は、専門が異なる研究者間の交流により生まれた発展的研究成果であると言えます。なお、ミトコンドリア移行タンパク質は通常N末端に移行シグナルを持つことが知られていますが、OsPHRのミトコンドリア移行配列はC末領域の内部に存在しており、これまでの知識では説明のつかない未知の移行メカニズムが機能していることが予想されます。本研究成果は、英国の科学雑誌The Plant Journalの2014年9月号に掲載されます。
掲載論文:Takahashi S, Teranishi M, Izumi M, Takahashi M, Takahashi F, Hidema J.
Transport of rice cyclobutane pyrimidine dimer (CPD) photolyase into mitochondria relies on a targeting sequence located in its C-terminal internal region.
The Plant Journal 79: 951-963 (Impact factor = 6.58)
DOI: 10.1111/tpj.12598(The Plant Journalウェブサイトへリンク)
関連ページ(東北大学サイトへリンク):
生命科学研究科のホームページ, 泉助教の所属研究室ホームページ, 泉助教の研究者情報