東北大学
学際科学フロンティア研究所

トピックス

王 誠さん(増本グループ博士2年)「AIP Advances」誌に論文掲載、およびFeatured Articleに選定

8月20日『AIP Advances』誌に論文掲載、およびFeatured Articleに選定

2021.08.24

高結晶化フッ化ストロンチウム-コバルトナノ複合薄膜をその場製作法で実現 ―トンネリング磁気誘電効果向上に新しい道―

1960年代に磁気誘電効果が預言され発見されて以来、磁気誘電材料は複雑な合成プロセス、強磁場や特に低温が必要など、応用に制限がありました。2014年、私たちの研究グループで発見された新しい磁気誘電効果『トンネリング磁気誘電効果』は、簡単な合成プロセスで、強磁場を必要とせず、何より室温で機能できます。トンネリング磁気誘電効果は磁気誘導、磁気ストレージ、電子機器の小型化と統合の分野で活躍することが期待されています。しかし、メカニズム理論は比較的新しいため、その理論に従って効果を向上させる方法はまだ十分に開発されていませんでした。
 
増本博教授(先端学際基幹研究部)の研究グループの王 誠さん(材料システム工学専攻博士2年)は、新領域創成研究部の曹 洋助教と電磁材料研究所(公財)の小林伸聖主席研究員と大沼繁弘研究員との共同研究により、共スパッタリング法による高結晶化フッ化ストロンチウム-コバルトナノ複合薄膜の合成を実現し、理論に基づき、マトリックスの結晶化度を上げることでより高いトンネリング磁気誘電効果を得ることに成功しました。
 
得られた材料は、高結晶化フッ化ストロンチウムのマトリックス中に直径3~4nmのコバルト金属ナノ粒子で構成されたナノ複合薄膜であり、高結晶化度は透過型電子顕微鏡の回折リングパターンで確認されました。そのトンネリング磁気誘電効果は、インピーダンスアナライザーを用いて3.5%の向上が確認されました。本研究は、これによりメカニズム理論の正確性と実現可能性を実証しました。将来、トンネリング磁気誘電効果を更に向上させることが期待されます。
 
本研究成果は、2021年8月20日付けで「AIP Advances」に論文として掲載され、優れた論文の1つとして、特別記事「Featured Article」に選定されました。
 
論文情報:
Cheng Wang, Yang Cao, Nobukiyo Kobayashi, Shigehiro Ohnuma, and Hiroshi Masumoto,
" Structure and tunneling magneto-dielectric properties of Co–SrF2 nano-granular thin films" Featured Article Marked,
AIP Advances 11, 085224 (2021)
DOI: 10.1063/5.0058707
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0058707
PAGE TOP