東北大学
学際科学フロンティア研究所

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静穏な超巨大ブラックホールからの高エネルギー粒子 ~天体ニュートリノと天体ガンマ線の発生源を新たに提唱~

2021年9月23日『Nature Communications』誌に論文掲載、およびプレスリリース

2021.09.24

宇宙はニュートリノやガンマ線といった高エネルギー粒子で満たされており、それらは宇宙ニュートリノ背景放射や宇宙ガンマ線背景放射として観測されています。それらの高エネルギー粒子の起源天体や生成機構はまだよくわかっていません。
 
東北大学学際科学フロンティア研究所(當真グループ)の木村成生博士(大学院理学研究科兼務)らの研究チームは、「静穏な」超巨大ブラックホールがそれらの起源であるという説を新たに提唱しました。ほぼ全ての銀河の中心には超巨大ブラックホールが存在すると考えられており、銀河内部の星間ガスがブラックホールへと落ち込むと、さまざまな波長の電磁波を放射して活動銀河核として観測されます。木村氏らは落ち込むガスの量が少ない暗い活動銀河核でのブラックホール周囲の物質状態をX線観測データを用いて理論的に考察し、電子が100億度まで加熱されて効率的に100万電子ボルト程度のガンマ線を放射することを明らかにしました。また、そこでは高エネルギーニュートリノも効率的に生成され、そこから放射されるガンマ線とニュートリノが地球での観測データを自然に再現できることも示しました。今後、観測・実験技術の進歩により暗い天体の理解が進み、宇宙を満たす高エネルギー粒子起源の解明に繋がることが期待されています。
 
この研究成果は英国の科学雑誌『Nature Communications』誌に2021年9月23日に掲載されました。


低光度活動銀河核の高温プラズマの概念図。ブラックホール周囲に高温プラズマが生成され、超高温の熱的電子が軟ガンマ線を放射する。宇宙線陽子も同時に加速され、周囲の物質と相互作用してニュートリノを放射する。(クレジット:木村成生)

論文情報:
Shigeo S. Kimura (東北大学), Kohta Murase (ペンシルベニア州立大学), Péter Mészáros (ペンシルベニア州立大学)
Nature Communications
"Soft gamma rays from low accreting supermassive black holes and connection to energetic neutrinos"
DOI: 10.1038/s41467-021-25111-7
https://doi.org/10.1038/s41467-021-25111-7
 
プレスリリース:
東北大学
 
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