東北大学
学際科学フロンティア研究所

　虫こぶは、昆虫の産卵により誘導される異形な植物組織で、昆虫由来の物質が植物の発生プログラムを改変することにより形成される。誘導する昆虫種によって虫こぶ形態は異なることから、これまでは昆虫側にその制御要因があると考えられてきた。しかし、多数の虫こぶ形態の比較から茎に誘導される虫こぶは比較的単純な形態である一方、葉にできる虫こぶは単純なものから複雑なものまで形態の多様性が高いという傾向が見えてきた。このことから、虫こぶ形態を決定する要因は虫側だけでなく植物側にもあると着想した。そもそも植物において葉の形態多様性は高い一方で、茎は植物個体の支持体であり、形態の多様性はほとんどない。すなわち、各器官における組織の細胞サイズや二次代謝産物、またそれに由来する物理的な強度が、虫こぶ形態を拘束する要因ではないかと仮説をたてた。

 

　そこで本研究では、市民により登録された数万単位の生物観測のオープンデータソースを用い、大量の虫こぶ画像を用いた定量解析により、植物種を超えて、虫こぶ形態の複雑さに由来器官の性質が投影されているかや、その他の形態的複雑性の決定要因を検証する。さらに実際にサンプリングした虫こぶの三次元要素の定量や力学特性評価を行うことにより、虫こぶ形態の多様性を規定する生物的・物理的要因の同定を目指す。