東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

領域創成研究プログラム 研究概要(2023年度採択)

多元物質科学研究所

岩瀬 和至 講師

採択課題名 基質及びプロトン輸送の制御による高活性二酸化炭素還元触媒の創成
実施年度 2023-2024
 電気化学的二酸化炭素還元反応(CO2RR)は、工場等で排出された高濃度の二酸化炭素を比較的温和な条件で再資源化できる手法として注目されている。CO2RRでは、(ア)競合する水素発生反応を抑制し、かつ(イ)特定の生成物のみを選択的得ることが重要である。CO2RRの反応過程では、基質となるCO2が活性中心金属上に吸着し、プロトン化及び電子移動が起こることで反応が進行する。つまり、CO2RR効率の向上には、活性中心へのCO2及びプロトン速度の制御が重要である。そこで本研究では、CO2電解などの電気化学触媒の分野、炭素材料を始めとする無機材料科学及びプロセスの分野、生態構造に着目したバイオ材料の分野、有機化学および構造に着目した機能創出の分野、をそれぞれ専門とする若手研究者がチームを組み、「精密設計された分子触媒が高濃度で分散担持されたカーボン触媒」を開発し、これまで達成されてこなかった高い電流効率で、かつ実条件に近い高い電流密度(すなわち、高い反応速度)でCO2RRを進行させる触媒の開発を目的とする。最終的に、錯体等の分子触媒の有する高い生成物選択性と、無機触媒の有するエチレンやメタン等の有用炭化水素の生性能という、両方の利点を併せ持つ触媒の開発を目指す。
 本研究では以上の目的を達成するため、以下のアプローチで研究を行う。まず、多孔性があり表面積が大きく、錯体触媒を高密度に分散担持できる多孔炭素材料開発を行う。同時に、活性中心への基質吸着・プロトン移動を制御可能な官能基化された有機錯体を合成する。酵素を始めとする生体触媒や、これまで他分野で蓄積されてきた有機錯体の合成と機能化の知見を取り入れた材料合成を行う。最後に、ガス拡散電極を用いて得られた触媒のCO2RR活性を評価する。活性評価の知見を適宜合成にフィードバックすることで、触媒活性のさらなる向上を目指す。適宜、電気化学測定条件下での放射光測定などを用いた反応メカニズム解析を行う。
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