東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

領域創成研究プログラム 研究概要(2023年度採択)

属材料研究所

杉浦 栞理 助教

採択課題名 環境超越型材料物質科学への挑戦
実施年度 2023-2024
 
“Beyond the virtual”すなわち本研究では仮想環境中に留まる物質を、夢現の境を超越した現実の物質として創成することを目指し、異分野融合により極限環境物性科学と高機能材料科学の境界領域を開拓する。

近く訪れる再生可能エネルギーを主軸としたカーボンニュートラルな未来では、エネルギー輸送における損失を極限まで抑えることで、エネルギー生産・利用を高効率化することが欠かせない。特に注目されているのは超伝導材料であるが、現在、超伝導を安定して存在させるには自然には存在しない極低温、もしくは地球核圧力に匹敵する超高圧といった極限環境が必要であるという実用への難壁が存在する。そこで本研究で着目したのは、“分子”の中に有効的な外場を組み込むことで、通常では不安定な状態を安定化させるというアイディアの応用である。

具体的な目標は、分子・原子をフラーレンやカーボンナノチューブといった炭素骨格の内側へ高密度で導入することによって、擬似的な超高圧状態を常圧下に置かれた炭素骨格分子内へ人工的に発生させ、材料として利用可能な超伝導の実現を見据えた高伝導度材料を生み出すことである。本研究の鍵はナノ材料化学の応用、高機能分子が開拓してきたデバイス化技術と計算科学、基礎物理が確立してきた理論と精密測定手法の協奏である。異なる専門性・特異性を最大限に生かし、①高密度リチウム過剰内包C60の合成、さらに②膜化・単結晶化による金属伝導(超伝導)の実現に挑戦する。

従来常圧では起こり得ないとされていた状態を実現するための足がかりを掴むことができれば、ひいては超伝導材料の系譜へ全く新しい血脈を刻み、材料開発の観点でブレイクスルーをもたらすことが可能であると考えている。また、本研究の成果はこれまで物理的に発生させていた極限環境へ化学的にアクセスするという材料設計概念の革新によって、学際的な視点から未踏材料物質科学分野を開拓する可能性を秘めている。
 
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