研究
相対論的天体物理学の手法を用いて、ブラックホールが引き起こす極限的現象について理論的に研究しています。ブラックホールは重力が非常に強く、一度入れば光さえも出て来られない領域です。これまで発見されているブラックホール候補天体には、太陽質量程度のものと、太陽質量の100万倍以上という超巨大なものがあります。ブラックホール近傍では、地球上では実現しない極限的な物理実験場となっており、世界の研究者を魅了しています。
そこでは高エネルギーを獲得した粒子が多種の電磁波を放ち、また光速に近い速さで噴き出して「ジェット」と呼ばれる構造を作っているのが観測されています。それらは莫大なエネルギーで天体爆発現象を引き起こしたり、銀河の進化に影響を及ぼしたりします。また宇宙最遠方天体、重力波源や基礎重力理論の研究の手がかりにもなります。
本研究室では、「ジェットはいかにして駆動され、加速され、光るのか?」「ブラックホール近傍で粒子のエネルギーはどれだけ高くなりうるのか?」「それらの理論は観測的にいかに証明しうるか?」といった理論的問題の解明を目的として、手計算・コンピュータシミュレーション・観測を利用して研究しています。
成果
ハイライト
- Black hole energy reduction and space-time variation by driving relativistic jet
- Origin of particles of black hole jets
- General relativistic particle-in-cell simulations of black hole magnetospheres
- "First Black Hole Image!"
- General relativistic magnetohydrodynamic simulations of jets and observed structure of M87 galaxy jet
- Particle loading of black hole jets and emission model of M87 galaxy
- Acceleration of pulsar wind nebulae
- Model of gamma-ray burst afterglow polarization
- Prediction of gamma-ray burst polarization statistics
- GeV emission model of gamma-ray bursts
- Detection of circularly polarized afterglow of gamma-ray burst
獲得した競争的研究資金
- 日本学術振興会科学研究費 基盤研究(A)分担 (2021-2025)
- 日本学術振興会科学研究費 挑戦的研究萌芽 (2021-2023)
- 日本学術振興会科学研究費 基盤研究(B) (2018-2021)
- 次世代研究者育成プログラム (2015-2017)
- 日本学術振興会科学研究費 若手研究(A) (2015-2017)
受賞
- The 2020 Breakthrough Prize in Fundamental Physics
- 第15回東北大学理学部物理系同窓会(泉萩会)森田記念賞
- 平成29年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞
- 第8回日本物理学会若手奨励賞
- 第25回日本天文学会研究奨励賞
プレスリリース
- 「ブラックホールの1年の変化から流入ガスの乱れを捉える -ジェット噴流の起源解明に一歩-」 東北大学広報
- 「初撮影から1年後のM87ブラックホールの姿 ~新望遠鏡の参加~」 共同通信, 読売新聞, 日経新聞
- 「ブラックホールの電波ジェットへのプラズマの供給機構を発見」 東北大学広報
- 「電波・可視光同時偏光観測からガンマ線バーストの隠れたエネルギーを推定」 東北大学広報
- 「ガンマ線バーストの電波偏光を初検出」 東北大学広報 , 台湾中央研究院ASIAA
- 「惑星形成の現場を見れば暗黒物質の正体に迫れる」 東北大学広報 , 京都大学広報 , 日本経済新聞 , Academist Journal
- 「中性子星合体からの光の偏りが起こる新しいメカニズムを提唱」 東北大学広報 , 高エネルギー加速器研究機構
- 「中性子星合体からの光は偏りが小さかった ~宇宙の金の生成現場であることを明るさの観測とは独立に示唆~」 東北大学広報 , 日本経済新聞
- 「宇宙最大の爆発ガンマ線バーストから円偏光を発見:宇宙で起こる衝撃波に新たな謎」 東北大学広報 , サイエンスポータル, 東北大学新聞
- 「宇宙のガンマ線観測からの超ミクロのスケールにおける対称性の破れへの制限」 大阪大学, 東大Kavli IPMU , 金沢大学
研究会企画・開催
- ブラックホールジェット・降着円盤・降着流研究会 2023 東北大学(ハイブリッド開催) 2023年3月1-2日
- Astrophysical Polarimetry in the Time-Domain Era Italy, Lecco, 2022年8月28日-9月1日
- 第34回理論懇シンポジウム 東大宇宙線研+IPMU(オンライン開催) 2021年12月22-24日
- Active Galactic Nucleus Jets in the Event Horizon Telescope Era 東北大学 2020年1月20-23日
- 高エネルギー宇宙物理学研究会 山形蔵王 2019年12月5-7日
- Dawn of a New Era for Black Hole Jets in Active Galaxies 東北大学 2018年1月25-27日
- 2nd Core-U International Conference: Cosmic Polarimetry from Micro to Macro Scales 広島大学 2017年2月17-18日
- 第29回理論懇シンポジウム 東北大学カタールサイエンスキャンパスホール 2016年12月20-22日
- ブラックホールジェット小研究会 東北大学理学研究科天文学専攻 大輪講室 2016年9月29日
- IAU Symposium 324: New Frontiers in Black Hole Astrophysics Slovenia 2016年9月12-16日
- 初代星・初代銀河研究会2015 東北大学片平さくらホール 2015年1月19日-21日
- 宇宙プラズマ理論研究会 東北大学片平さくらホール 2014年8月13日-15日
- 高エネルギー宇宙物理学研究会 大阪大学会館 2011年12月15日-17日
解説記事
- 天文月報記事 「ブラックホール降着円盤とパルサーのX線偏光:IXPE衛星の成果と将来展望」
- イベント・ホライズン・テレスコープ・ジャパン ウェブサイト 「史上初!ブラックホール影の撮影に成功」
- Academist Journal 記事「暗黒物質の研究が惑星形成の研究と出会った時 -学際的交流で新しいアクシオン探査法を発見!」
- 日本物理学会誌 解説記事 「ブラックホールが駆動する相対論的ジェットの物理」
- 天文月報記事 「高エネルギー天体物理学とその広がり」
- 高宇連シンポでの講演 「X線・γ線偏光のサイエンス」
- 天文月報記事 「フェルミ衛星が明らかにしたガンマ線バーストの姿」
- 天文月報記事 「ガンマ線バーストの偏光」
一般講演等
- ブラックホールとはなんだろう? 2024年5月16日 仙台市市民活動サポートセンター 第5回星のおはなし会
- ブラックホールとは何か?~最新研究で迫るその正体~ 2022年2月23日 郡山ふれあい科学館 第38回星の講演会
- 宇宙の謎への挑戦-ブラックホール研究最前線- 2020年11月2日 第12回東北大学総長特命教授合同講義(オンライン 一部対面)
- ブラックホールとは何か? 2020年8月25日 東北地区国立大学法人等技術職員研修 特別講演(オンライン+オンサイト形式の試行)
- ブラックホールとは何か? 2020年2月21日 せんだいメディアテーク
- これがブラックホールだ!~第一線の研究者が語る真実~ 2019年6月29日 東北大学知の館
- 見えない天体をついに見た! -ブラックホールの直接撮像に挑んだ研究者たち- 2019年5月26日 仙台市天文台