学際研オープンキャンパス 2024
ようこそ学際研(がくさいけん)へ!
Welcome to FRIS (Frontier Research Institute for Interdisciplinary Sciences) !
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学際科学フロンティア研究所(学際研)は、異分野融合学際研究により新たな知と価値を創出し、より豊かな人類社会の発展に貢献することを目的としたユニークな研究拠点です。あらゆる学術領域を対象として学際融合研究を推進する若手研究者を、東北大学における全学的な協力のもとに育成しています。異分野から集まった教員による先端学際研究では、新奇機能性材料の研究開発、特徴的な性質を持つ材料のデバイス応用などが進んでおり、研究成果を基にした企業との共同研究も活発です。生命科学、宇宙物理学においても、際立った成果が挙げられています。学際研はこれからも若手研究者が世界トップレベルで研究を推進する志を支え、異分野研究者交流やネットワークづくり、研究成果の発信のサポートにも注力します。みなさんも学際研で新しい研究にチャレンジしませんか?
現地イベント情報
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学際研では現地にて研究所紹介とFRIS URO学生交流会を行います。
東北大学オープンキャンパスにお越しになる際は、是非、お立ち寄りください。
【開催日時】
・2024年 7月 30日(火)10:30~14:30
・2024年 7月 31日(水)10:30~14:30【内容】
・学際研の研究所紹介(VRによる研究施設見学など)
・FRIS URO学生交流会(FRIS URO学生・教員による研究ポスター発表など)FRIS UROは学際研が主導する学部学生研究ワーク体験です。
学生交流会ではFRIS URO学生が学際研教員とともにどんな研究を行なっているのかをご紹介いたします。
興味を引いた研究ポスターの前に足を止めて、自由な議論をお楽しみください。【問合せ先】
学際科学フロンティア研究所 事務室
Email: somu[at]fris.tohoku.ac.jp( [at] を@に置き換えてください )
研究ハイライト
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タンパク質の品質管理を担う酵素を高活性化する低分子を開発 アルツハイマー病、II型糖尿病などに対峙する新しい創薬戦略PDIファミリー酵素は生体内でタンパク質の品質管理を担う酵素のグループです。本酵素の機能が失われることと、構造異常タンパク質が引き起こすパーキンソン病やアルツハイマー病、II型糖尿病などのミスフォールディング病との関わりは深く、本酵素の活性亢進剤は新たな治療戦略に貢献することが期待されていました。東北大学大学院生命科学研究科の倉持円来氏(学際高等研究教育院生、博士後期課程学生)、学際科学フロンティア研究所の奥村正樹准教授、金村進吾助教、東京農工大学大学院工学府の山下有希乃氏(博士前期課程学生)、東京農工大学大学院工学研究院の村岡貴博教授、東海大学理学部の荒井堅太准教授の研究グループは、新しいアプローチによる薬剤開発によって、PDIファミリーの酵素活性を亢進する化合物を示しました。本分子によってPDIファミリー酵素は、最大4倍の触媒速度を達成しインスリンなど幅広い基質の生産収率向上に成功しました。この成果は、PDIファミリー酵素の機能低下によって引き起こされるミスフォールディング病の治療において、全く新しいアプローチとなる可能性が期待されます。
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世界初の宇宙実証を目指す、小型衛星を地球に帰還させるための"ハイブリッドスラスタ"、実機に近い試験モデルによる長時間燃焼と、真空環境下で軌道離脱相当の推力計測に成功国立大学法人東北大学学際科学フロンティア研究所と株式会社ElevationSpaceが取り組む、高い安全性と低コストを両立するハイブリッドスラスタ実現に向けた共同研究について、2023年10月~2024年2月にかけて、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構の協力のもと実施した、実機に近い試験モデルによる燃焼試験に成功したことをお知らせします。
軌道離脱を実現するような高い推力と、小型衛星に搭載可能な大きさ、経済性、安全性を兼ね備えるハイブリッドスラスタは、世界でも宇宙実証に至っている例がなく(※1)、ElevationSpaceが2025年に打ち上げを予定している無人小型衛星で世界に先駆けた実用化を目指します。
本ハイブリッドスラスタは、打ち上げ数の急増する小型衛星市場で高い需要が見込まれるほか、月以遠への高頻度な宇宙探査実現にも寄与すると考えられ、我が国の宇宙産業市場の拡大や宇宙開発領域における国際競争力向上のため、研究開発を加速していきます。東北大学学際科学フロンティア研究所において本研究をリードしている齋藤勇士助教は次のようにコメントしています。
「本試験実施にあたりご尽力いただきました皆様に感謝申し上げます。この試験により、共同研究先である株式会社ElevationSpaceと共に日夜研究開発を進めてきたハイブリッドスラスタの性能を実際に確認することができ、実用化に向けて大きく前進できたことを大変嬉しく思います。
ハイブリッドスラスタは、他の化学スラスタと比較して魅力的な性能を持つことが研究レベルで明らかになっている一方で、実用レベルには未だ達していませんでした。これは、ハイブリッドスラスタの技術成熟度レベル(TRL)が低いことが原因だと考えられます。また、TRLが向上しない限りは他の宇宙ミッションでの採用が見込めず、革新的な宇宙ミッション実現のためにはハイブリッドスラスタのTRLの向上が求められていました。そのような状況の中、株式会社ElevationSpaceと共に、世界初のハイブリッドスラスタの宇宙実証を目指す共同研究が始まり、この試験において実機レベルでの性能確認が行われました。
TRLの向上は実用化に近づけるだけでなく、私自身にとっても新しい発見が多くあります。本共同研究ではすでに、複数の査読付き論文(出版1本、準備中2本)、国際学会発表(1件発表済、1件査読中)、特許(出願済み2件、準備中多数)など、多くの研究成果を生み出しています。これからも、この共同研究を通じて、研究と実用化の両軸を回しながら宇宙開発に貢献していきます。」
※1 2024年2月 株式会社ElevationSpace調べ -
堅固で低温でも充放電可能な岩塩型構造の正極材料の提案 資源豊富なマグネシウムを使用する蓄電池の実現に貢献資源として豊富なマグネシウム(Mg)を用いるマグネシウム蓄電池(Rechargeable Magnesium Battery: RMB)は、安価で安全・高容量な次々世代蓄電池として期待されています。RMBの実現には、Mgを円滑に挿入・脱離できる正極材料が必要ですが、Mgは固体中を移動しにくいことが高性能な正極材料の開発を阻んでいました。例えば、これまでに提案されてきたスピネル型構造の正極材料では、Mgの移動を促進するために150℃まで加熱する必要がありました。またMgを挿入することで、スピネル型構造からMgの移動がより困難な岩塩型構造に変化し、実質的に利用可能な容量が目減りした結果、電極が劣化することが問題でした。
東北大学金属材料研究所の河口智也助教と市坪哲教授、学際科学フロンティア研究所の下川航平助教らは、Mg以外に6種類の金属元素を混合することで、Mgの移動を促す空間を安定かつ大量に含む岩塩型構造の新たな正極材料を開発しました。岩塩型構造はMgの挿入・脱離が困難とされていましたが、90℃とこれまでよりも低い温度で挿入・脱離が実現できることを実証しました。広範囲にわたり容易に入手可能なMgを用いた蓄電池が実現すれば、資源を巡る国際的競争の緩和など、持続可能な社会の実現への貢献が期待されます。 -
スピン波を用いた物理リザバー計算機の高性能化の条件を理論的に解明 -省エネルギーなAIハードウェア開発に新しい視点-近年社会におけるAI技術を用いた情報処理の需要は急速に増加しています。現在は、ニューラルネットワークによる情報処理の計算を、電子計算機上で膨大な数のCPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理装置)を用いることによって行っているため、高い消費電力が問題となっています。一方、人間は低消費電力で情報処理を行っていることから、リザバー計算や量子計算技術など、従来とは異なる概念に基づいた科学技術による情報処理の研究が世界各国で進んでいます。
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)兼産業技術総合研究所 産総研・東北大 数理先端材料モデリングオープンイノベーションラボラトリ 副ラボ長の義永那津人准教授は、同大学学際科学フロンティア研究所の飯浜賢志助教、WPI-AIMR兼同大学先端スピントロニクス研究開発センターの水上成美教授、同大学大学院工学研究科の小池雄也大学院生(研究当時)とともに、強磁性体薄膜中のスピン波を用いて従来のリザバー計算機よりも低消費電力で高い学習性能が期待される物理リザバー計算を実行できる装置を実現するための機構を解明しました。
スピン波を情報の担体とするAIハードウェアの研究が世界的に進展しており、ナノメートル、ギガヘルツかつ高エネルギー効率で高い学習性能を実現することは重要な課題の一つです。本研究グループでは、金属ナノ薄膜の強磁性体中を伝わるスピン波を研究しました。時系列データに比例した大きさで磁性体の入力ノードの位置を励起することでスピン波を発生させ、伝播したスピン波を出力ノードの位置で読み出すことで、短期記憶と非線形変換能力を持った学習やカオス時系列(注6)の予測が可能であることを示しました。また、数理的な解析によって学習性能を最適にするスピン波の速度と素子のサイズとの関係を明らかにしました。本結果は、磁気ナノテクノロジーを用いた低消費電力な情報処理素子の開発に新しい視点を与えるものです。 -
複数のらせん状流路を持つポリマー製ファイバーの開発に成功 ─ 微量の細胞や粒子の混合や分離に使う微小遠心機への応用を目指す ─マイクロ流体技術はマイクロリットルスケールの流体を操作し応用する手法で、生命科学や化学、材料工学など多岐に渡る分野で利用されています。その中でも慣性力を利用して細胞や粒子のサイズによって分離したり混合したりするらせん型のマイクロ流路は、低コストで運用が容易なため、研究や実用現場で広く応用されています。
従来のマイクロ流体デバイスの多くは平面基板上に半導体製造技術のリソグラフィによって作製されています。しかし流路形状を細かく制御できる反面、材料の選択制限や製造工程の複雑さ、平面構造に限定されるといった課題が存在します。
東北大学学際科学フロンティア研究所の郭媛元准教授と工学部学部生の加藤駿典氏(学際研ジュニアリサーチャー)、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のエイミー・シェン教授とダニエル・カールソン博士(当時研究員)で構成された学際的な研究チームは、これらの課題を解決するために、光通信ファイバーの製造技術である熱延伸法を改良し、卓上型回転熱延伸法(mini-rTDP)を開発しました。そしてこの新たな手法を利用して、三次元らせん型微小流路を持つポリマーファイバーを開発することに成功しました。
本研究成果は、学術誌Microsystems and Nanoengineeringに2024年1月22日付で掲載されました。本研究は主に沖縄科学技術大学院大学(OIST)SHINKAプログラム、東北大学のSHINKAのマッチングファンドの支援を受けて実施されました。 -
初撮影から1年後のM87ブラックホールの姿 ―新望遠鏡の参加―東北大学学際科学フロンティア研究所(兼務 大学院理学研究科)の當真賢二教授が参加する国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・コラボレーション」は、史上初の撮影に成功した楕円銀河M87の巨大ブラックホールについて新たな観測画像を公開しました。今回公開された画像は、初撮影が行われた2017年4月の観測から約1年後の2018年4月に観測されたものです。2018年の観測では新たにグリーンランド望遠鏡がネットワークに参加し、またデータ記録速度が向上したことでM87ブラックホールの新たな姿が明らかとなりました。1年後の画像では、2017年に観測されたものと同じ大きさのリング構造が確認されました。この明るいリングに縁取られた中央の暗い部分が、まさに一般相対性理論から予言されている「ブラックホールシャドウ」の存在を裏付けています。一方で、リングの最も明るい場所は角度にして約30度異なっており、ブラックホール周辺の物質が乱流状に振る舞っていることを示唆しています。
動画で見る学際研
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学際科学フロンティア研究所「先端的学際研究の推進」
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学際科学フロンティア研究所「学内学際研究の発掘」
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学際科学フロンティア研究所「若手研究者の育成」
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学際科学フロンティア研究所「3つの柱 FRIS Triangle」
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研究者インタビュー
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ボーダーを越えて学際研は「学際的研究の開拓・推進によって新たな価値を創出し、人類社会に貢献すること」を目的としています。そのコンセプトを所属研究者によって語り、考える企画が連載インタビュー『ボーダーを越えて』です。それぞれの研究人生に触れながら、「自分が体験した学際的な活動」を語ります。学際研の理念と実態を浮き彫りにすると同時に、学際研のメンバーが対話を通じてこれからの組織のあり方を考えます。
パンフレット
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日本語版 / Japanese 2023年度 / 2023 [2023.09 update]
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英語版 / English 2023年度 / 2023 [2024.1 update]
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