研究内容
神経細胞の形態形成機構の解析
「なぜ、神経細胞はこんなに変わった形をしているのか?」という問いが私たちの研究の出発点です。
細胞というのは顕微鏡を使わないと見えないとても小さいものだというイメージがあると思います。
ところが神経細胞は1mにもなる突起(軸索と呼ばれる)を身体の隅々まで張り巡らせています。
皮膚や血液の細胞がせいぜい20マイクロメートル程度なので、神経細胞は普通の細胞の50000倍もの大きさになるとても変わった細胞であるということができます。私たちがものを見て、匂いを嗅ぎ、考え、身体を動かすことができるのは神経細胞が変わった形をしているからです。
神経細胞が「変わった形」を維持するのに特別なメカニズムとエネルギーが必要なためにそのメカニズムに異常が起こると神経疾患になってしまいます。
微小管の研究
筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする運動神経疾患の研究
ゲノム解析が容易になったことから様々な先天性神経疾患の原因変異が明らかになり、私がこれまで研究してきた分子モーターや微小管の遺伝子に変異が次々に見つかっています。 最近では神経疾患だけではなくガン細胞の全ゲノム解析においても分子モーターの変異が見つかっています。これまでは線虫のようなモデル生物を使った遺伝学スクリーニングを行って重要な因子や研究対象とする分子内の重要部位の探索が行われてきましたがある意味でヒトを使った大規模な遺伝学スクリーニングが行われているとも言えます。微小管やその関連因子の疾患変異を解析することは正常な機能の理解にもつながります。

ミトコンドリアは細胞内でもエネルギーをたくさん消費する場所に集積する性質があります。そのような場所ではミトコンドリアの数は増加します。
ミトコンドリアの局在の異常は様々な神経疾患の原因となります。私たちはミトコンドリアの局在を制御するメカニズムを線虫遺伝学で探索しています。これまでにミトコンドリアをGFPで標識して、その局在が変化するような変異体を作製し、原因遺伝子を決定してきました。
例として左図のようにミトコンドリアが樹状突起から減少する変異体などが得られています。このような変異体の原因遺伝子を決定したところ、神経疾患原因遺伝子の線虫ホモログの変異体や、未知の分子の変異体などが得られています。

