丹羽准教授からのメッセージ
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私たちの研究の出発点でありゴールは「神経細胞の形」です。その解析のためには3つの柱があります。
分子モータータンパク質、線虫の分子遺伝学、哺乳類やヒトの細胞を使った神経細胞生物学です。
まだ小さいグループですが、「良い研究をして良い論文を書く」のが私たちの目標であり使命です。
所属方法と教育方針
従来、学部教育は東北大学理学部生物学科発生ダイナミクス分野と共同で行ってきました。2025年度からは独立分野となっており、理学部生物学科の学部生は希望すれば卒研から一緒に研究することが可能です。
大学院は生命科学研究科の大学院入学試験を受ける必要があります。
はじめに
「神経細胞のきれいな写真を自分で撮ってみたい」「せっかくやるからには何か意味のあるものを残したい」と考える学生さんはぜひ一度話を聞きに来て下さい。
研究室からでているほとんどの論文が卒研生や大学院生がファーストオーサーで出版したものです。
逆に「ただ単位を取って卒業したいだけ」「待っていればやることを指示してもらえると思っている」という方にはオススメしません。コアタイムはありませんし自主性にまかせる方針なので、 何もしないで学生生活を終えることになりかねません。
また、アメリカの大学院への進学を考えている学生さんの相談も受けてます。
詳しくは丹羽(shinsuke.niwa.c8あっとまーくtohoku.ac.jp)まで問い合わせして下さい。(あっとまーくを@に置換して下さい)
<東北大学理学部生物学科の学生の場合>
卒研から来ることができます。博士課程に進学志望の場合は修士1年の間に論文をまとめて学術振興会DC1を目指してもらいます。査読付き論文を出版した上で申請できるよう全力でサポートします。
学部卒、修士卒、博士卒で民間企業への就職志望の場合には、志望先の業種にアピールできそうなテーマを考えます。
また将来のことは後述の「修士卒で十分か、博士号をとるか」を読んで考えてみてください。
ここに書き切れていないこともあるので、直接相談に来てくれてもいいと思います。
<他学部、他大学を卒業して大学院に来る場合>
博士号を取得することを強く勧めます。修士課程で就活をすると入学直後には就活が始まってしまうので、ほぼ何もしないまま就活に突入します。 また、企業への就職を志望する場合でも後述のように博士号取得までやるメリットが格段に大きいからです。理学部生物学科以外出身で修士課程から移ってくる学生もいますし、活躍しています。
可能な研究
(1)遺伝学スクリーニングを用いた神経細胞の形態形成に関与する分子の探索研究してみたいオルガネラや細胞構造、面白いスクリーニングのアイデアがあったら相談して下さい。
可能そうなら、試してもらうことができます。
(2)微小管、モータータンパク質、微小管結合タンパク質の生物学、生化学、生物物理学
微小管やモーターは世界の細胞生物学分野の主流の一つです。
丹羽が得意とする分野でもあり、1分子から個体までを統合的に扱うユニークな研究を行うことができます。最近ではコンピュータサイエンス、タンパク質デザイン、生物工学も 取り入れた研究もはじめています。微小管、モーター、微小管結合タンパク質の異常が引き起こす神経疾患、ガンなどの分子メカニズムの解析も行っています。
線虫やcell lineを用いた疾患モデルを使うこともできますし、神経内科と共同でiPS由来神経の解析も立ち上げました。
(3)「ヘンな生物(原生動物、寄生性原虫・・・など)」を使ったヘンなモータータンパク質の探索、軸索輸送や微小管の進化的起源の探索
何が出てくるかわからない完全に新しいチャレンジです。細胞の形は微小管と分子モーターで規定されています。
微小管の走行は分子モーターの活性と微小管結合タンパク質で規定されます。自然界では様々な生物で動植物では見られない複雑な微小管構造や運動が観察されています(「本当はヒトの体内にもある」のに気づかれてないだけかもしれません)。
それらはどうやって規定されるのでしょう?
また、これはまだ未発表の研究ですが、単細胞生物において軸索輸送の進化的起源の「アタリ」がついてきています。
<修士卒で十分か、博士号をとるか>
10年ほど大学院生を指導してきて、自分の中で考えがまとまってきたので、それをここに記します。大学や海外で活躍したい場合
言うまでもなく、大学で研究職を目指す場合、博士号の取得は必須です。
また、東北大学の博士号は、欧米において「自国の大学の博士号と同等」と評価されており、学術ビザや就労ビザの取得の助けになります。海外の大学や企業で働くことを希望する場合も、博士号をとることを強く勧めます。
日本企業で活躍したい場合
理学部生物学科卒の場合は、「修士卒は中途半端。学部卒か、博士卒か、2択で考えた方が良い」と考えています。したがって、大学院に進学するのであれば博士号を取得することを強く勧めます。
もともと私自身、理系で企業に就職するなら修士卒で十分だと考えていました。しかし、これまでの卒業生たちの就職活動の様子を見て考えが変わり、 現在では、特に理学部生物学科のような基礎研究に近い分野で学んだ場合は、「修士で就活するよりは、博士課程まで進学して身につけたことを論文などの形にしてから就活した方が、君たちの高い能力を生かせるような企業からあっさり内定がもらえる」と自信を持って言えます。(現実にそうだったため)
また、現在の東北大学は卓越大学院などのプログラムが充実しており、博士課程の学生は、真剣に学業に取り組んでいる限りは、100%経済的支援が受けられています。
学生の企業への就活を見てきた率直な感想
修士課程の就職活動は、入学直後に始まってしまい、その時点で身についている力は学部卒と大差ありません。
学部卒で就職活動をする場合、大学で学んだ内容よりは、人柄、人物像などに依存したポテンシャル採用になるため、どこの学部でも大きな差がつかないように見えます。 ただし、東北大学理学部の場合は、ほぼ全員が修士課程に進むため「周りに流されないで就活の準備をする強い意志」が必要です。
修士課程在学中に就活する場合、学部卒よりは「具体的に何ができるのか」を評価される傾向が強まります。農学部や工学部のように「企業と共同研究をしている」「何かを作れる、設計できる」「Pythonのコードが書ける」といった実学に近い分野であれば、 「それはうちの会社の仕事に使えそうだね」と評価される具体的なスキルがある上でのポテンシャル採用になります。
一方で、基礎研究志向の理学部生物学科卒の場合は企業が評価するための「手がかり」が少なく、修士での就職活動は「学生たちが優秀な割に思ったよりも苦戦している」ように見えます。
しかし博士課程まで進み、研究を通じて一仕事成し遂げて論文などの形にすれば身についている専門知識とスキルが可視化されるので、企業も「自社が計画中の業務に活かせそうだ」と評価しやすくなっているようです。 さらに、プロジェクトを論文としてまとめた実績や、国際共同研究を通じて外国人とやり取りした経験など、評価される手がかりは格段に増えます。